第22話 古代遺跡

 古代遺跡は目の当たりにすると、かなりの大きさだった。

 宮殿の形状をしていて、石材には苔が生えており、歴史の流れを感じさせる。


『ほう。ここか』


 ファフニールは懐かしそうに呟いた。


『見覚えがあるの?』

『うむ。昔、我が暇つぶしに壊そうとしてビクともしなかった覚えがある』

『……何してるの?』

『う、うるさいわい! なんとなく壊してみたくなったのだ!』

『壊れなくて本当に良かった……』


 しかし、ファフニールが壊そうと思ってもビクともしないとは中々の強度だ。

 それだけ古代の人々の知恵と技術は凄まじかったのだろう。

 ユンは俺達が会話出来ることを理解してくれているため、特にツッコむこともなく、楽しそうに先へ進んでいく。


「入り口はこっちね」


 長い階段を登った先には、建物の入り口があった。

 苔石の扉。

 既に壊れていて、扉の役割をなしていない。


「中は暗いから松明が必要ね」

「以前出会った場所は壁に青い炎が灯されていたけど、ここには無いんだね」

「ええ。場所によって、明るい場所と暗い場所があるのよ。不思議よね」


 ユンはバックパックから長い竿を取り出した。

 先端に布を巻き付け、松脂(まつやに)で浸す。


「光源となるような魔導具ってないの?」

「ふふっ、痛いところ突かれてしまったわね。それは前回の探索で故障してしまったわ!」

「な、なるほど」


 それを修復してから探索すれば良かったのでは? と思ったが、口には出さなかった。

 俺としても早く古代遺跡を探索したい気持ちは強かったから。


 ユンが松明に火をつけている間、古代遺跡内の壁を調べてみた。

 以前の場所のように《炬火》の古代文字(ルーン)が記されているのではないかと思ったのだ。


「お、これかな?」


 俺は壁に《炬火》の古代魔術らしき跡を発見した。

 文字が途中で消えていて、力を発揮出来ていないようだった。


「《刻印》」


 俺は正しく文字を書き直して、《炬火》の古代魔術を完成させた。

 すると、ぼわっと壁に青い炎が灯された。


「えっ? ええっ!? 何が起こったの!?」


 ユンは丁度、松明に火をつけたところだった。

 ……申し訳ないことをしたな。


「古代魔術がしっかりと機能してなかったから修正してみたんだよね。そしたらこうなっちゃった」

「お手柄じゃない! 流石ノアね! ノアにこの依頼をして正解だったわ!」

「悪いね。松明に火をつける前に一言残しておけばよかったな」

「何を言ってるのよ! 謝る必要なんて何もないじゃない!」

「そうかな? まぁ、とりあえずその松明は俺が持つよ」

「いいのいいの。この探索のキーパーソンはノアなんだから。これぐらいは私が持つわよ。期待してるからね!」

「……ああ、分かったよ」


 そして俺達は古代遺跡の奥へと進んでいく。


「遺跡の内部に魔物とかは出現するんですか?」

「特に見たことないわね~。いるのかしら?」

「なるほど、では比較的安全な場所ってことですね」

「そうね。でも以前のように新しい道を発見したり、なんてこともあるから一概には言えないけどね」


 そう言ってるそばから、道は行き止まりに。

 壁を見てみると、古代文字で『壁に道が隠されている』と記されていた。


「ここはね、この壁にある……えーっと、確かこれだったかな。このタイルを押すと──」


 ガガガガッ……!


 石の壁が横にスライドして、奥への道が開かれた。

 かなりシンプルな仕掛けだが、目的は何のためにあるのだろう。

 古代文字(ルーン)が読めるなら誰だって見つけられそうだ。

 ただ、古代文字が読めないならじっくり周囲を調べなければ難しい。

 どういった用途で使っているのか。


「ね? こういう仕掛けがこの遺跡には沢山あるのよ」

「ユン、実はね。この仕掛け、さっきの壁にヒントが記されていたんだ」

「え? そうなの? 確かにあの壁には古代文字が何か記されているわね。……ふっふっふ! じゃあつまり、ノアがいればこの遺跡の最深部にも辿り着けるということね! 頼りにしてるわ! ノア!」

「うん。出来るだけ頑張るよ」


 上機嫌になったユンと共にまた奥へと進んでいく。

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