血液採取の依頼を受けました

「うんうん! こんな酷い能力値は私は今まで見たことないよ! 世界は広いからきっと他にもこんな感じの人はいるんだろうけど私は初めてだね! 良い見本になるよ! こんな珍しい能力値の人間の血液を得られるんだ。もちろんある程度金もはずもう!」

「あ、ありがとうございます」



 自分の血液採取の依頼だった。迷宮踏破や魔物討伐をこなして能力が成長した冒険者限定という話でいろいろな人族から血液を採取して能力と血液の関連性を探るだとかなんだとかそんな感じの目的らしい。冒険者ギルドから金が出ているらしく報酬も問題ない。割と各地の冒険者ギルドで同じようなことをしているらしくここはその一つだという話だった。

 紹介されて会った研究者だというその人は粗末な服一つの俺と大差ない感じで見た目に気を使っている様子は無かった。

 ぼさぼさの白髪に身にまとっている白衣には何かの飲み物が飛んだのか裾や袖に飲み物らしい染みがいくつもついていて間違いなく何日も洗っていないのは間違いなかった。顔も髭が生え放題で俺と同じように依頼で来る人もいるはずなのに髭も剃らないことからまあ人付き合いにはあまり興味がないのだろうと思った。

 とりあえず能力開示した後今までのざっとした冒険の軌跡(一回)を話した後血液を採取することになった。珍しい見本になるので金貨3枚は貰えるらしい。ついでに血液も割と多くの量を抜かれるのでその分この後の食事の量が必要だろうと銀貨5枚もつけてくれることになった。あと服が無いというので洗濯はしたが使う機会がない白衣をもらえることになった。珍しい見本をくれる礼だよ、と三回くらい繰り返された。



 とりあえず血を抜かれて一通り検査が終わった少し話した。


「それにしても死と踊る愚者なんて称号がつく人なんて初めて見たよ。1000回以上も死ぬなんて良く頭が狂わなかったね」


 はっきり言う人だな、と思った。


「いや、元々能力が低くて差別されるような地域にいたので、酷い待遇には少し耐性があったからですかね。いや斬撃耐性とかそういう攻撃を受け続けて得られるようなのはイドナント様からの最初の神託で挑んだ前の迷宮で手に入ったものですけど」

「ああ、能力が低かったのか。確かにそういう扱いされるところが多いって話だよね。でもそれでそんなに耐えられる? まあそういう性質だからイドナントが目を付けたともいえるのか。あとは完全蘇生だっけ。とんでもない加護だよね」

「最初の挑戦一回限定らしいですけど。でも武器まで再生してくれなかったからただの何回でも潰せる玩具みたいなものにしかなりませんでしたけど。死ななかっただけで充分と言えばそうなのかもしれませんね」

「でもその経験が非常に高いレベルの肉体再生能力と痛覚遮断をはじめとした生存系の技能に耐性を手に入れることができた。今の君は不死と相まってそう簡単に殺される心配はないよ……まあ攻撃手段が見当たらないのは気になるけど」

「でしょうね。死ににくいだろうなとは思います」

「魔力が異常に高いのはおそらく肉体再生に魔力を使うからだと思う。あと少し調べた感じ何か君の体、変だよね。魔力で体を構成しているみたいな感じになっているような気がするよ。たぶん死んで再生するごとにより簡単に蘇生しやすいように肉の身体から魔力主体で構成された身体になるように適応したんじゃないかと思う。頭をつぶされても君の今の状態だと君の思考回路は魂の方に保管されている可能性が高いから知性を失って死ぬことはない可能性が高い。まさしく不死、だね」


 冗談で言ったつもりだったのに本当に身体が魔力で出来ている状態になっていたなんて……


「何かこわいことになってますね。大丈夫なんですか?」

「迷宮神イドナント由来でついた不死だから大丈夫じゃない。邪教の儀式とかでついたものだったら徐々に体が崩壊するとかしてもおかしくないけど神由来だからね。人から見たらとんでもない能力でも神にとっては人間の身体なんて大体はどうとでもなるものでしかないよ」

「そうですか」


 まあ神からしたらその程度でしかないんだろうけど複雑な気分だ。


「ただ逆に言えば魔力の枯渇が普通の人間と比べて致命的に……なるかは分からないけど完全再生にとんでもない時間がかかることになる、という事になる可能性はあるからこまめに魔物討伐をして魔力を少しずつため込んでおいた方がいいんじゃないかな。数値としては見えないけど魔物を討伐したときに魔力は少しずつ蓄積しているっていうのは証明されている。生命力は今まで見た中で突出して高いから再生能力がなくても普通の人よりずっと死ににくいんだろうけどね」



 白衣を始め衣類一式を好意でもらえたのでとりあえず見た目の不審な感じは無くなったと思う。あと一つ試験をしたのでその結果がとても役に立ったというので金貨20枚もらえた。まああれだけ血を流させられたり腕を切り落とされたらな。俺にとっても役に立つことではあったから悪いことばかりではない、というのは間違いないが。



「さて、後は必要な道具を揃えていくか」


 思ったよりは手間をかけずに揃えられた。

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