2話 生きるのと引き換えに迷宮に挑むことになった(強制)

グリフ 年齢19 男

生命力 121


才能 生存適性(小)


所持技能

歴史知識 7レベル

クレム語解読 10レベル

クレム語筆記 8レベル

悪食

飢餓きが耐性 12レベル

悪意看破 5レベル


知力 12

体力 9

腕力 15

魔力 8

敏捷 16


特筆事項 迷宮神信徒見習い


 常人以下ばかりのはっきり言ってひどい能力だ。腕力と敏捷が他より少し高いのは単に重労働とそれをのろのろこなすと怒鳴られるので悲鳴を上げながら熟した結果上がらずにはいられなかっただけ。体力がその割に低いのは食事が量が足りなかったせいで体ができなかったせいだろう。 魔力も食事で魔力の含んだものを取れなかったせいだろう。


この中で役に立つのは悪食と飢餓耐性くらいじゃないだろうか。今から俺がしないといけないことで必要なのは。






人との暮らしより迷宮での活動の方がいい、と心の底から思ったものに加護を与える。とさっき死にかけていた俺を救ってくれた神は言った。


迷宮神イドナント。それなりに数のいる神の中で最上位とまではいかないがそれより少し落ちるくらいの割と高位の神である。


生命に試練と引き換えに力をあたえる神とも呼ばれ、迷宮を踏破するものに力や褒賞を与える、という単純明快な神だ。何気に人族の神よりも高位だ。というより種族ごとにいる神は意外とそこまで神としての位は高くないらしい、と歴史で学んだのを覚えている。種族の滅亡も神の時間感覚で言えばそこまで珍しいものではないからかもしれない。種族関係なく世界に関係する神のほうが位が高いらしい。イドナントは迷宮を踏破する全ての生命に等しく恩恵を与える、という意味で世界に関係する扱いらしい。


信徒数は非常に少なく、見かけても迷宮にいつも潜ってるなという感じらしい。基本的に戦闘能力が高く、単独で行動をするものが多いというのも特徴だ。地下に潜る土ネズミなんて揶揄する者もいる。高位の信徒はやたら強いので深淵竜なんて呼ばれることもあるそうだが。


人に交わることをあきらめ迷宮に価値を見出したはぐれもの。それが迷宮神の信徒の人々の基本的な評価だった。


特徴としてはその名の通り迷宮で強い。迷宮で能力が高くなり、地上で加護が大きく薄まる。高位の信徒は普通に地上でも化け物じみた強さを誇るらしいが基本的に迷宮で真価を発揮する。成長も地上と迷宮で圧倒的に迷宮の方でよく育ち日の光が当たらない場所で育つ苔のような奴らだ、なんていう評価もある。


入信条件は人との暮らしより迷宮の方に大きく魅力を見出したもの。宝物目当てとしてより迷宮で活動すること自体に魅力を感じるという点の方が加入を認めやすいとイドナントは語ってくれた。


まああの時面倒な人同士のごたごたより迷宮で静かに活動した方がいいと思ったのは事実だ。だからそれは良いし命を助けてくれたのも感謝している。


ただ、無条件で助けたわけではない。


神託をこなす義務が同時に発生していた。



現在の神託

迷宮デペルの踏破。 迷宮踏破前に脱出時加護を失う。加護で再生したため加護喪失時高確率で死亡する。


ようはこの迷宮の最深部に到達。そして迷宮主の撃破である。

涙が出るほどありがたいことに初めての迷宮、かつまともな準備もできていない状態での挑戦のため死亡直前に何回でも蘇生してくれる上に食事をしなくても餓死しないという手厚い援護までつけてくれた。カラベルムより温情を感じる措置である。あれは武器も防具も食料も何もかもまともなものはくれなかった。まあ殺すために連れてきたようなものだから必要ないといえばなかったんだろうが。


もちろん武器防具は落下時に大破。身に着けているものはいつも着て馴染んだ粗悪品の服ぐらいのものだ。肉体と同時に服だけ再生してくれたらしい。武器だけでも一緒に再生してくれればよかったのに。戦う手段は無いのですが、と言ったら素手で戦えと言われた。15歳まで習ったが結局身につかず剣もまともに使えないが素手はもっと使えない。これで戦えというのか……



<挑むことをやめなければいつかは成せるだろう。そして今回の条件は一人での踏破だ。そのため一時的にこの階層へのほかの冒険者を侵入を禁止する>


……迷宮に潜っている冒険者について行って攻略してもらう、というのはなしだぞと言いたいのはよくわかった。




迷宮の底、幸いにもと言ったらあれだがどこかにつながる通路を見つけたのはそう時間はかからなかった。もしなくて底からはどこにも行けないとなったら落ちてきた壁をよじ登るというとんでもない苦行をして戻らないといけないところだった。いったいいつ戻れるのかわからない。絶対数十年下手したら百年以上かかっていた可能性がある。というより帰れないという可能性のほうがずっと高い。





幸いじゃなかったのは当たり前のことだが底にいる魔物の方が地上にいる魔物よりずっと強いということだった。


「ん……」

まったく感情を揺らされずに起き上がる。最初の時は泣き叫んでいたのに詳しく数えていないがもう1000回は死んだんじゃないかという今になっては何も感じなくなっていた。というよりもう喚くだけの気力がない。



グリフ 年齢19 男

生命力 523


才能 生存適性(小)

称号 死と踊る凡愚


所持技能

歴史知識 7レベル

クレム語解読 10レベル

クレム語筆記 8レベル

悪食

飢餓耐性 25レベル

悪意看破 5レベル

打撃耐性 78レベル

斬撃耐性 31レベル

火耐性 22レベル

氷耐性 13レベル

酸耐性 81レベル

肉体再生 36レベル

痛覚遮断 33レベル



知力 12

体力 65

腕力 26

魔力 137

敏捷 19


特筆事項 迷宮神信徒見習い 死亡回数1000回到達 死と踊る凡愚


 言いたい。こんなに死ぬのは当たり前だろうと。そもそもまず底で見つかった通路に入って数分もたたないうちに棍棒を持った腕力がいかにも高そうなな一つ目の怪人に会った。泣き喚きながら当たり前に撲殺された俺は神の言った通り死ななかった。そして蘇生したのだ。


 まだ一つ目がそこに残っているときに。


 逃げようにも俺より普通に速かった一つ目に追いつかれバカみたいな回数を撲殺され、飽きたのかまたおもちゃにするためなのか巣なのか溜まり場なのかよくわからないが魔物のたむろしている大部屋に運び込まれ、とんでもない回数の死を経験した。


 能力開示で表示された技能を見ればどういう目にあったかはすぐ分かる。魔力がバカにみたいに上がっているのは死ぬたびに迷宮神の魔力で蘇生したから体の一部がもう迷宮神の魔力が混じったとか体が魔力でできているとかそんな感じになってしまったに違いない。そうに違いない。

 蘇生する、という加護がなければまあこんなに酷い技能は身につかなかっただろう。感謝するべきなのか文句を言うべきなのかわからない。生きているだけましなのかもしれない……ましなのかこれ? いや、死ぬよりはずっとましだ。


「助かったといえるのかこれは」


 あたりに魔物がいないのを確認してとりあえず安心する。本当に酷かった。


 何度も殺されたがその間、何回か逃げようと試みた。

 最後の一回以外は失敗した。すぐに追いつかれて殺されたし、拷問じみた苦しめ方で長く傷つけられたこともあった。痛覚遮断はたぶんその時に上がったのだろう。

 そしてさっき。つまり最後の挑戦では魔物は遊びのつもりなのか本気で追いかけてこなかった。体力が尽きたところをゆっくり近づいて絶望させようとしたのかもしれない。つまりそれだけ長く迷宮内を駆け回ったことになる。はっきり言って体力も早さも少し上がったが確かめられないが間違いなくこっちが低い。つまりどうにもならないと思っていた。

 だが、狭い通路を走り回っているとある時急に視界が開けた。

 湖らしき場所だった。 透き通った緑色の水で少し見た感じ何かがいそうな気配は無い。



水底に行こう。一つ目を含めて明らかに嘲笑している感じで追いかけてきている6,7体の魔物たちの集団を見た感じ水の中で呼吸できる奴がいる感じはしなかった。


蘇生できるのを利用して水の底で溺死するまで引きこもろう。溺死してもすぐに潜って絶対に水面に出ないようにしよう。溺死は苦しそうだが魔物の遊び道具よりはまだましだと思った。だから少し助走をつけて出来るだけ岸から離れた場所に飛び込んだ。




 体が溶けた。

 とんでもなく強い酸の湖だった。

 魔物がいないのではなく酸で何も住めなかっただけだった。

 


 とんでもない湖に魔物が入ってくる様子は無かったが俺は蘇生するたびに酸で体が溶け、だが湖岸の方には魔物がいるので戻れずならせめて魔物が来ないようにとより岸から離れるように溶けるのと蘇生するのを繰り返しながら湖を渡っていった。


 一度魔物側の方を振り返ったが明らかに気持ち悪そうにこちらを見ていたのをよく覚えている。間違いなく俺もその光景を見たら気持ち悪いと思うだろう。

 酸耐性がやたら高いのはたぶんこれだろう。ついでにこの時に肉体再生もだいぶ上がったのかもしれない。やったな! これで弱い酸はたぶん効かないぞ! 


……全然良い話ではないな。うん。

とりあえず俺は何とか魔物たちを振り切ることに成功した。それだけは良い話なのは間違いなかった。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る