今日から私は悪役令嬢~お金のためなら何なりと!~
@mkwarbimochi
第1話 「ある人からの依頼」
「その依頼引き受けさしていただきます」
「本当か?!」
広いオフィスで美しい髪を耳にかけながら少女は優雅に微笑む。
「ええ、本当ですとも。しかし、しっかりお代金はいただきますがよろしいですよね?」
「ああ、もちろんだ!」
そう男は言うと喜びに満ちた表情と軽い足取りでオフィスを去っていった。
「お嬢様、本当に引き受けてよろしかったのですか?」
少女の傍らにいたメイドは不安そうにつぶやく。
少女もまた、さっきの男と同じような喜びに満ちた表情をしながら紅茶を優雅に飲む。
「ええ、良かったのよ。こんなにおいしい話があるのに引き受けないバカがどこにいるの?」
「ですがお嬢様・・・・」
メイドが言いづらそうに口をもごもごさせながら小さな声でささやく。
「・・・・・本当に悪役令嬢になるおつもりですか?」
少女は当たり前だという表情をしてまた、紅茶を優雅に飲む。
「ええ、依頼されたからにはきちんとなって差し上げましょう」
紅茶を机にトン、とおき、メイドに微笑む。
「悪役令嬢に」
-今から約30分前の話-
「お嬢様!桜お嬢様!」
ぱたぱたと長い廊下を走る音がする。
すると扉から先ほどの美しい髪をもった少女-桜がうるさそうに現れる。
「何よ。騒々しいわね」
「も、申し訳ありません!」
先ほどお嬢様!と叫んでいたメイドが慌てて謝る。
「どうかしたの?」
「そ、それが・・・」
「早くいいなさい」
桜の言葉にはっと我に返りメイド-菊が言葉を放つ。
「早見財閥が運営している会社の副社長の東条様がいらっしゃい、桜お嬢様をお呼びで・・・」
「あら」
桜は手を頬にあて考える。
-なぜうちに来たのかしら?-と。それもそうだ。
桜の父親が当主をしている鈴倉財閥は国内では3大財閥に数えられるほどの大きな財閥。
また、早見財閥も3大財閥に数えられるほどの大きな財閥であり、いわば両財閥はライバル。
早見財閥のところの副社長が偵察をしに父を呼び出したのなら納得はいく。しかし、東条が呼び出したのは桜なのだ。
怪しい・・・その1言につきる。うーんと頭を悩ませていると・・・
「-お嬢様!、桜お嬢様!」
菊の声にはっとなる。
「お父上の了承は得ているのでいきましょう!」
「えっ!父の了承は得ているの?」
「はい!」
そういうと菊はトコトコと歩き出したので桜もそれについて行く。
-父が会ってもよいと言った。なら、財閥の運営がどうのこうのみたいな話ではなさそうね。-
桜は足を止め、この扉の先にいるであろう東条のとの会話を考えてみるが全くわからない。桜は少し緊張しながら扉を叩く。
「失礼します」
桜が扉をあけるとそこにはダンディーなおじさんが足を組みソファーに座っていた。
「すまぬな。急に呼び出して・・・」
桜は90度に腰を曲げ頭を下げる。
「とんでもございません。私を呼び出した理由を伺っても?」
「そう堅くならないでくれ。そうだ。扉の外で待機しているメイドも入れてかまわんよ」
緩そうな人だ。そんな印象を桜に与えた。
桜は菊を招き入れ、自分も東条の正面のソファーに腰を下ろす。
「私は時間がないから手短に話す」
「了承しました」
「ズバリ、我が財閥の当主の息子、早見優様と姫川早苗様を結ばせるために悪役令嬢になってほしい」
「・・・・というと?」
当たり前の反応だ。事実、隣に立っている菊の頭の上にはハテナマークがある。
「すまぬな。単刀直入に言い過ぎた」
「つまりな・・・」
東条が話した内容はこうだ。
・早苗様と優様はかつて恋に落ちた
・家の実力が違うため、優様は早苗様を想い、別れた
・優様は後悔した
・優様と私が通っている学園に早苗様が転入してくることになってた
・ここでまた、再度恋に落とし、優様の傷を癒やしたい
・恋応援団を作り応援しよう!
そのために私が必要らしい。2人の恋敵として・・・
悪役令嬢になり、2人を影から応援する役として。
その話を聞き、桜はとくに心は動かなかった。何で自ら悪役にならなければいけないのだ。お断りしよう。そう思っていた。ある言葉を聞くまでは・・・
「もちろんただでとは言わん。
報酬額は・・・5千万だ。」
5千万。この額が桜の心を大きく動かした。桜の家はお金持ちでも桜自身はお金はたいして持っていないのだ。お小遣いも他の人とはたいして変わらず、1000円。そんな桜に突然降ってきた5千万。絶対に欲しい。桜は一呼吸しその依頼にこう答えた。
「その依頼引き受けさせていただきます」
-そうして今に至るー
「そうですか・・・お嬢様がそうおっしゃるのなら、この菊!できるだけお手伝いさせていただきます!」
「ありがとう」
桜は大きく背伸びをし、今から始まること(お金を受け取る瞬間)を考え、わくわくしていたのだった。
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