マインドフルネスで大抵はうまくいく(奪われた農園を取り戻す話)

もるっさん

第1話 追い出されちゃいました

とある異世界。地球に似た温暖な気候が1年中続く世界。

俺はこの農園の地主で 今日は 俺たちが所有している山の畑のリンゴの実がなり始めたから妻とリンゴ狩りをしようと約束していた。


トモちゃん「あら あなた釣り竿なんて持って今日はリンゴ狩りのはずでしょ?」


トモちゃんはリンゴでパイを作ろうとしているのだろう、こねた生地を寝かしつけてバスケットを片手に玄関へ来てみれば 俺が釣り竿を抱えて立っているのだから呆れてしまったかもしれない。

1,000歳は眠っていたはずだが見た目は若い、俺が知っているだけでも18年以上の付き合いになる

妻は活発なショートの髪型に、無邪気さがある表情は彼女が天才だと言うことを感じさせないほど子供っぽい。


ピョンタ「いやいや リンゴ狩りだろ?わかってるよ。俺も君のパイを楽しみにしている。でも リンゴの木の近くに小川があっただろ?小川のせせらぎを楽しみながら 君と大事な話をしたいんだ。」


トモちゃん「話?そうね 小川でお昼ご飯を食べてもいいわよ。でも 釣り竿は必要かしら??」



結局、妻はバスケットを二つ持ってきて、にんまりと笑う。

俺は両手にバスケットを持った。

仕方がないので 釣り竿は隠して腰に刺し、そしてモル小屋へ向かった。


「プイプイプイプイ!!」

モルモットたちの威勢のいい声が聞こえだすと モルの手入れをする使用人がせっせと汗を流していた。

俺はモル小屋につながれているモルモットの中から しとやかな毛並みの三毛のモルモットが目に入った。


「毛つやのいいモルモットだ。この子を出してくれ」

「はい 親方様」


妻は いつも乗っている茶色いモコモコのモルモットにバスケットをうまく括り付けて上に乗った。

妻もこの地に来たばかりの頃は モルモットの乗り方に少々手間取っていたようだが モルモットは乗りなれてしまえば馬よりも乗りやすい。

今では 意思疎通できるほどの腕前に育ったようだ。


俺たちは半日近くかかって リンゴを収穫し、モルモットたちにもリンゴのおすそ分けをしてからお昼にしようと小川へ向かった。だけど 小川につく前に急に水が飲みたくなりそして。


ピョンタ「はぁ 。。 くっ苦しい・・」


心臓をグッとつかんでうずくまってしまった。

体がしびれて力が抜ける・・。


トモちゃん「あなた!! 待っていてすぐにお医者様のところへ行きましょう」


目の前が真っ暗で 真夜中寄り暗いけど

トモちゃんが どこかへ行こうとしたので俺は 腕を振り回しようやくトモちゃんの腕をつかんだ。

どこにも行かないでくれ。。。

ピョンタ「君と 話がしたいって言ってただろ?うっ。。。 大丈夫・・大丈夫・・はぁはぁ・・大事な話なんだ」


本当に 君に話しておかなければいけない事があるんだ。


トモちゃん「話なら後で聞いてあげるから 今は急ぎましょう。 モルモットたち~!こっちへおいで!!」


「プイプイプイ!!!」

モルモットはピョンタに駆け寄りクンクンと顔の匂いを嗅ぎ出した。


ピョンタ「ああ そうか。この三毛のモルモットは俺が最初に飼っていたモルモットそっくりだ。あはは なるほどな。トモちゃん。聞いてほしい。 俺にはもう時間が残っていないようだ。本当はちゃんと伝えたかったけど伝えることが出来なくて残念だよ。。。 

それにしても俺の人生は 幸せだった。それは モルモットたちやそして愛する君がいてくれたからなんだ。

うっ、体が熱い。愛が溢れそうだ。

トモちゃん 今までありがとう・・・・。」


トモちゃん「あなた!」


「プイプイ グルルルル」


ピョンタはコックンと息を吐いてそのまま息を引き取った。

その夕方、私は泣き止んでから やらなければいけない事を思い出した。

旦那の死のことを 旦那の知り合いに知らせなくちゃいけない。

そして旦那の部屋にあった 魔導通信の水晶に魔力を吹き込んだ。

ピョンタが操作をするところを見たことがあったから、ショートメッセージを送るくらいならできるはず。

そっと手をかざすと 彼の好きな青白い光の粒が現れて すぐにその光の粒は放たれていた。


「さてと 近所にも知らせに行かないと」と私は小さな町の付き合いのある人たちに話を伝えた。


「おや なんてこどだ」

「ピョンタがねぇ ワシより先に行ってしまとわ なんと言うことじゃ」

「あんなにいい人が居なくなってしまったなんて・・」


旦那は 特別何かがある人でもない。穏やかな人だと思っていたけど。

意外とファンが多かったみたいで 少しだけやきもちに似た感情を感じてしまった。

でも 次の日になるともっと すごいことになってしまった。

色々なところから 沢山の人たちがピョンタを訪ねて集まってきた。

見たことのない種族の人たちや、姿を変えているけどおそらくドラゴンかそれ以上の存在の人もいるみたい。

私の知っているピョンタは 実は凄い人なのかもしれない。

みんなが彼との思いでを語り明かして夜が更けた。

私の知らないことばかり、私が知っているのは農園で暮らしているピョンタだけだった。

それにしても何なのかしら?

「あなたがあの・・・」といだそうとしては口を閉じてしまう樹木族の人たちは? 私が何だというの?

もしかしてピョンタとの年の差の事を言いたいのかしら?確かに私はお酒が飲めないくらい若いけど、それで一緒になっちゃ駄目って言うのは、人族の間の話でしょ?あなた達なんてどうせ1000年以上生きているだろうし 大目に見なさいよ。


そんな人もいる中 丁寧な口調の紳士が話しかけてきた。

「夜も老けてまいりましたね。お話ししても いいでしょうか。私はフジャラと申します。実はピョンタ様よりあなた様にお伝えしたい事があると生前にお手紙を預かっております。恐らく今後のことについて書かれているのだと思いますがあなた様がこの手紙を今晩読まれて。明日は あなた様がピョンタ様の意思を皆様の前で伝えてほしいのです。」


手紙を受け取ると周りがザワザワとした。けど すぐに何事もなかったように話し始めたので私は部屋へ戻ってきた。

薄暗い部屋に戻ると 疲れがドッと押し寄せてきた。

「私って こんなに疲れていたんだ」 

私はピョンタと違って若いけど、でも 体と心が同時に疲れちゃうのって辛いわ。

私は ピョンタが時々してくれたように 自分の頭を撫でてみた。


「あなた。。いいえ。ピョンタ・・・。」


あなたは 何者だったの?

私は ピョンタの手紙を読むことにした。


・・・・


この手紙を読んでいると言うことは 俺はもうこの世にいないんだね。

どうだろうか? すでに聞いていると思うがあの話の決断は出来ただろうか?

君にとっては とてもつらい決断になるだろうし、俺のことは恨んでもらってもかまわないよ。

強く生きてほしいと願っている。 ただ 君のことを愛している人がいた事は忘れないでほしい。モルモットたちも街のみんなも君のことが好きな人は沢山いるはずさ。

まだ 決心はつかないかな?

長くなるけど、俺の昔話を聴いてくれないか?

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