(5)

 メールで指定された場所は……どこにでも有るコインパーキング。

 最初に来たメールで「指定の場所に来たら返信を入れろ」との指示が有ったので、とりあえずは指示に従う。

 その時、近くで携帯電話の着信音。

「遅かったな……」

 中年の男の声。

 声のする方向を向こうとすると……。

「振り向くな……。下手な真似をすれば……女の方の家族がどうなるか判っているだろうな」

「要求は何?」

「用が有るのは手品師の方だ」

「えっと……手品師って俺?」

「そうだ……手品師。お前の同類が、ここで『手品』をした痕跡は有るか?」

 私と相棒は顔を見合せた。

 どうやら……ここで何者かが「魔法」を使った可能性が有るので、「残留魔力」など痕跡は有るか、と聞きたいらしい。

 しかし……何故、ここまで回りくどい真似をしたかは……不明。

「どうなの?」

「十年前とか百年前とかだと判りませんが……ここ数日間と云うのであれば……形跡は無いですね」

 その時、私のポケベルに着信。表示されてる数字は……。

 私は、声のした方に駆け出す。

 相手は、身長一八〇㎝ぐらい。一瞬、単なるデブに見えたが……。

 って、マズいかも……。動けるヤツだ……。逃げ出してはいるが、結構な足の速さ。

 上着の内側から特殊警棒を取り出す。

 次の瞬間、男は振り向き……。

 特殊警棒を男の左肩に叩き込むが……相手は平気。

 男は右半身を引き、拳を握り……マズい……。

「ぐへっ⁉」

 悲鳴を上げたのは謎の男だった。

「あんたがやったの?」

 私は相棒にそう聞いた。

「まぁ、早い話が金縛りですけどね」

 謎の男は白目を剥いて崩れ落ちていた。

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