(3)

「どうします、晩飯?」

 外は、すっかり暗くなっていた。

「えっ? ああ、もうすぐ交代か……」

「じゃあ、近くに、美味い立ち食い蕎麦屋が有るんですけど、そこにしましょう」

「立ち食い蕎麦?」

「五百円出せば、盛り蕎麦でも千円以上の気取った蕎麦屋より美味い蕎麦が食える所です」

「そこって、大盛り有るの?」

「えっと……ああ、でも、千円以下で天丼と蕎麦のセットも有った筈なんで……」

「じゃ、そこに……あれ?」

 その時、携帯の着信音。

「どうしました……えっ?」

 私は……「の画面を相棒に見せる。

「あの……この写真の家……どこです?」

「縁は切れてんだけど……私の実家……」

「でも……この文面って……その……」

「あんたが言ってた立ち食い蕎麦屋の近くに……いや……後で話そう」

「後?」

 私は、手帳とペンを取り出すと、こう書いた。

『盗聴器』

 相棒は「あっ」と言いそうになって思わず口に手を当てる。

 覚えの無いメールアドレスから携帯に送られて来たメールに書かれてたのは……「午後十時に、相棒の『手品師』と共に以下の場所に来い。職場や上司には絶対に報告するな」。

 つまり、相手の意図・目的は不明だが、奴らは「こっちの指示に従わないと、実家に居る家族が只じゃ済まないぞ」と言いたい事だけは確かだ。

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