A2:洗脳密令

@HasumiChouji

序章

希望之國

「なあ、私のような者達は昔から居て……単に、つい最近、その存在が明らかになっただけだとしたら……?」

 ようやく追い詰めた、その男は、教師が出来の悪い生徒に説明するように……そう……自分の方が立場が上だと言わんばかりの態度で、我々を嘲るような口調と表情で、そう切り出した。

 だが……この状況で、ヤツに優位性など無い。

 ヤツを取り囲んでいる我々は……全員、ヤツの能力への抵抗力を持っている。

「私達の能力が無力化された時、その後に続くのは、今日と同じ世界、同じ日本だと言い切れるのか?」

 中肉中背。

 三〇前後。

 地味な色のラフな服。

 整えた髪に、剃りたてとは言えないが目立つほどの長さでも無い髭。

 最近の流行りの言葉で云うなら「イケメン」でも無いが、その逆とも言えない顔立ち。

 ……「特徴が無いのが特徴」とでも言いたくなる男だ。

 佐藤誠……その平凡な名前も、本名かは不明。

「何が言いたい?」

「もし……君達が存在しているのが当り前だと思っているモノが……私のような能力を持つ者達無しには存在し得ないとしたら……どうする?」

「だから……何が……」

 その時、成行きから協力者となった高木猛弘の眉が……ほんの少し動いた。

 そして……。

「おい、デカブツ……お前……一体、何に……気付いたんだ?」

 相棒の関口晃一も……また……。

「簡単な話だ……。まずは……こいつをブチのめす……。後の事は……それから考え……待て……しまった」

 次の瞬間、部屋の中にあるモノが投げ込まれた。

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