サクヤ編第2話 ライヴォルトVSサンダー

 戦いの合図が出されたと同時、サンダーは電撃を拳に集中させた。その様子を、ライヴォルト先輩は動じることなく棒立ちで見ていた。

 誰がどう見ても攻撃するチャンスだ。ライヴォルト先輩にはそれほどの自信があるというのだろうか。


「先輩、後悔しますよ」


「後悔ね。無駄話をしてないでとっとと撃ってみたらどう?一応本気は出さないであげるけど」


「なら後悔してください」


 サンダーは一瞬でライヴォルト先輩の背後に移動した。


「あの魔法は、雷属性原始魔法参参〈雷動ヴォルテジア〉か。まだ新入生であの魔法を使えるとは、口だけではないようだな」


 ヴァーミリオン先輩はサンダーを見て称賛する。

 ライヴォルト先輩の背後に移動したサンダーは、拳に溜めた電気を一気に放った。


「〈雷電砲カオスサンダー〉」


 膨大な量の電気が雷の如くライヴォルトへ降る。


「これは……」


 ライヴォルト先輩へ膨大な量の電撃が直撃する。先輩は動かないままだ。

 動けないのか、と思ったが、少しは動けるようだ。だがあの量の電撃をくらったせいか、相当痺れているようだった。


「先輩、生きていましたか」


「新入生、お前、今のはかなりきたぜ……」


 なんとか口を開いてそう言ったが、動けないようだ。


「では先輩、もう一撃いきますか」


「もう一撃?もう一撃も当てられない。こっからの俺は、本気ハイボルテージがかかったからな」


 ライヴォルト先輩は笑みを浮かべ、電撃を纏った体で周囲を移動し始めた。先ほどまでサンダーの一撃を受けて動けなかったはずなのに。


「おっと……速いですね」


 余裕を見せてはいたものの、サンダーは動揺を隠せていない。気づかれぬ間にサンダーの背後に立ったライヴォルトは、激しいまでの電撃が溜まっている拳をサンダーへ向けた。


「お返しだ。〈雷電砲カオスサンダー〉」


 サンダーが放ったのよりも膨大な量の電撃が放たれた。その電撃にのまれ、サンダーは吹き飛んだ。


「な、なんで……」


「俺は受けた電撃を魔法で纏い、身体速度を上昇させた。背後に移動した俺は、拳に纏っていた電撃を集中させ、放っただけだ」


「じゃあ、最所から受けるつもりだったのは……」


「ああ、そういうことだ。だが想像以上に威力が大きくてヒヤッとしたよ。まあだが経験になっただろ。雷魔法は撃つだけではなく、纏って操ることも大切だ。ただ纏うだけでは魔力の無駄遣いだからな」


 ライヴォルトは拳に残っている電撃を周囲へ飛散させた。


「いい勝負だったよ。後輩くん」


 ヴァーミリオンは倒れるサンダーへ手を伸ばす。サンダーは痺れている腕をなんとか伸ばし、ヴァーミリオンに立たせられた。


「じゃ、ということでサンダー、今日から私たちの魔法職に入ってもらうよ」


「何のことですか?」


「そういえば言ってなかったっけ。君が負けたら私たちの魔法職ーー魔法剣士になってもらおうと思ったんだけど」


「聞いてないですよ」


「まあまあそんなこと言わずに、こういう時は聞いていたふりをした方が良いんだよ。じゃあ行くよ。新入生歓迎式はこれで終了にしたから」


「ええええええええええ」


 身勝手すぎるヴァーミリオン先輩を見た後では、あのサンダーですらまともに見える。というかサンダーはヴァーミリオン先輩の手の上で踊らされている。


「じゃあ新入生の皆、今日はこれで解散ね。明日からは通常授業だから、気を引き締めてね」


 ヴァーミリオンはサンダーの腕をとり、ライヴォルトとともに会場を後にした。


 全く、いろいろありすぎるよ。初日なのに、初日なのに……。

 どうしてか私は疲れていた。初日なのに。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る