130話

ベルトラン王はアスランの目を見て一つ一つゆっくりと話だした。


「まずはこの星の話をしよう。


この星には全部で5つの大陸がある。もちろんこの大陸以外のことを知っている者は長寿に生きる種族か国の王など極一部の者しか知らないだろう」


「始めて知りました。この星はこの大陸しかないものと…」


「そう言う風に情報操作をしているからな。だからこそ星の名前はあってもこの大陸にも名前はない。如いて言えば東の大陸だな。今でも5つの大陸が東西南北と中央の大陸として存在する。


昔は各大陸を行き来し活気があったが、今では往来できなくなったからだ。


まあ正確には中央大陸には行けるが、その他の大陸に行くことが出来なくなったと言っておこう」


アスランは口を挟むことなく真剣に聞いている。


「そして一番勢力があり、都市の中心部を担う中央大陸は凄い賑わっていたのだが、その中心部に次元の塔がいつしか現れるとその塔を中心に魔物が溢れ出るようになった。穢れが広がっていくように中央大陸を蝕んでいき、今では中央大陸の東西南北の港町に防壁を建て凌いでいる状態だ。


中央大陸の人達は各東西南北の港町まで非難したため、それぞれの港町は大規模な街となっているがな。今では中央大陸通しでの移動も出来ない程穢れが広がっているため、各港町はそれぞれ孤立している状態だ。ここまではいいか?」


「信じがたい話ですが大丈夫です」


「ここからがアスランに関わる話だ。


穢れが広がり続ける中5つの大陸は盟約を交わした。一騎当千の力を持つSランク冒険者が誕生した場合、必ず中央大陸に一ヶ月以内に準備を整え向かわせることと」


「あの、あまり関係ないことだと思うのですが?」


「焦らずに最後まで聞くように」


「はい、スミマセン」


「この盟約により一般の基準とは別に一般人からでもSランクに昇格出来る、いや違うな、Sランクに強制的になる事項が追加された。その中の一つとして称号にドラゴンスレイヤーの称号を持つ者はSランク冒険者とすると」


アスランはこの話を聞いた瞬間納得した。


「何点か質問してもいいですか?」


「良い」


「これは強制ですよね?冒険者に強制って出来るのですか?」


「強制ではあるが、あくまで中央大陸に行くことがだ。その後のことはもちろん自由だ。すぐに戻ってこようがな」


「なるほど~、納得しました」


「ただ、良く考えろよ。この東の大陸にSランク冒険者がいかに少ないかを…」


「中央大陸も返したくないからこそ、相応の対応をしてくると?」


「そうであるが、そうではない。盟約として無理強いはしないとなっている。だからこそ中央大陸は人が欲しがる餌で釣って留めさせると聞いている。まあお前が欲しがる物があるかは知らんがな」


そう言いながらベルトラン王はカッカッカと笑っている。


「ここからは俺が話そう。Sランク冒険者の先輩として包み隠さず話すことを誓う」


ジョニーは罪滅ぼしをするかの様に話だした。


「まず最初に中央大陸に行ける者は最大パーティ6人までだ。1人で行くも6人で行くも好きに決めてよい。ただし、Sランク冒険者以外の者にこの話をする場合契約魔法で話せないように契約することを義務付けられている。」


「…、ジョニーさんの話を聞いてもいいですか?」


「ああ。俺は6人パーティーで中央大陸に行き、俺以外は全滅してのこのこと帰ってきた落ちだ」


その話を聞いたアスランは驚愕している。


「それ程までに中央大陸は過酷なのですか?」


「人も魔物も全てがな。向こうはこちらを都合よく扱いたいのだ。Sランク冒険者には盟約により酷いことはできないが、パーティメンバーには薬やスキル色仕掛けなど様々だ。もちろん強い意思をもって断れば問題ない。しかし、人は欲に負ける生き物だ。女に溺れ、酒に溺れ、薬を与えられていい様に使われた。そして中央大陸には多くの強者がおり好き勝手やっている者もいる」


「一つ聞きたいのですが、強者の者が沢山いても穢れと言う魔物を倒せないのですか?」


「穢れは俺らを試すように広がっていく。大勢で討伐に行けば倍以上の魔物が向かってくる。もちろん魔物の強さもこちらの大陸と比べものにならない程だ。ただ、6人までなら同じ人数で迎え討ってくる。それを繰り返すことで今は穢れの進行を何とか止めている」


「だから6人までのパーティなのですね」


ジョニーは深く頷いた。

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