竜の秘書

殻部

一、「アポイントメントはお取りでしょうか?」

 この世界、地上は二つの領域に分かれている。

 一つは「人界」と呼ばれる、人間が版図を広げる土地。

 もう一つは、魔力満ち、人ならざる者が跋扈する「魔領」。

 今、その魔領に踏み入る人間があった。

 名はヴォルケイン・バン・クリフォード。名高き騎士である。

 国よりとある竜の討伐を命じられ、精鋭二十名を率いた彼は、古い記録に頼りに魔領の東端にあたる魔の森から侵入し、目的地を目指した。だが、早々に密生する毒樹と凶悪な魔獣に阻まれて隊は遭難、気がつけば隊長の彼一人だけになっていた。それでもなお、使命を果たさんと唯一人で魔の森を突き進み、十と三日。ついに森を抜けた彼の眼前に、それはあった。

 暗い天を突く、巨大な岩山である。その前面は不自然なほどに垂直に切り立っていて、ところどころに異様な彫刻が刻まれているのが見て取れる。伝説によれば、彼の竜がその爪と牙で削り落としたとされている。その壁面の中央に、まるで山が大口を開けているかに見える大穴があった。その、二体の巨人が肩車をしてもなおくぐれる程の口からは、優に百人は横に並んで歩けるだろう幅の石段が、長い舌のように地面にまで伸びていた。

「とうとう辿り着いた!」

 討伐隊隊長・ヴォルケインは、杖がわりにしていた歪な木の枝を放り捨てた。過酷な旅を続けて疲労は極致に達している。だが、体の奥底から力がふつふつと漲るのを彼は感じた。

「ここが彼の地――魔領の覇者の一角、古龍王グレン=メギドローザの棲む、不倒のダンジョン“古龍城”!」

 今一度腰の剣を確かめてから、ためらいもせずに大階段を上っていく。

 果たして、王城の塔をもしのぐ高さの階段を上りきると、巨大な口の中に広間と言うには広大すぎる空間が広がっていた。

 床は磨かれた石が敷かれていて、天井は果ても知らない。両脇には太い柱が奥まで並んでいるが、それ以外ほとんど何もない。ただ不思議と清潔に保たれていた。

「!」

 その広間に入ってすぐの場所に人影を認め、ヴォルケインは瞬時に身構えた。

 よく見れば、腰までの高さの横長の簡素な台があり、人影はその後ろに立っている。

 ヴォルケインはその人影の意外な正体を確認して、逆に警戒した。

 それは見た所人間の女に見えた。それも若い。楕円の眼鏡をかけていて、黒く長い髪を後ろにまとめている。

 女の服装は、ヴォルケインの国では見慣れないスタイルだった。皺ひとつない濃紺のジャケット、同色のパンツ。ジャケットの襟元から白シャツと青いネクタイが見える。

 その女は、彼にに気づくや微かに微笑み、両手を前に揃え、口を開いた。

「いらっしゃいませ! 本日は弊ダンジョンにどういったご用件でしょうか?」

 ヴォルケインは一瞬聞き間違えかと思った。が、聞き間違えてはいなかった。

(え? 受付――??)

 頭によぎったことを、彼は即座に打ち消す。ここはダンジョンだ。

 だが、うろたえて動いた視線の先の台――カウンターの上には堂々と「受付」と書かれた立札が、あったのだった。

 受付だった。

「え? え?」

 返事を待っている様子の女は、どこをどう見ても普通の人間のようだ。人間の受付嬢だ。

(どういうこと?)

「お客様?」

 受付嬢は固まったままのヴォルケインに小首を傾げた。

「アポイントメントはお取りでしょうか?」

「あ…あぽい?」

 意味の分からない言葉にますます混乱した騎士の様子に訝しんだ受付嬢は、手元の石板のようなものに触れた。すると石板から、幾つもの四角い光の枠が浮かび上がった。そこには文字のようなものが書かれている。

「村はともかく、正門からも訪問者の通知がない……」

 受付嬢は小さくそう呟くと、「んー」としばらく思案してから、再びヴォルケインに顔を向けた。

「お客様。失礼ですが、どちらから来られましたか?」

「え? あ、あっちから……」

 混乱中のヴォルケインは反射的に来た方角を指した。

 受付嬢はその方角を見て「ははあ、なるほど」と眼鏡の位置を直しながら一人合点した。

「しかし東から……というと魔の森を通ってですか? 並みの人間では、生きて抜けることなんてできませんよ。お強いんですね!」

 感心する受付嬢に、反射的に照れてヴォルケインは頭をかいた。

「あ、いや、それほどでも……」

「でもですね」

 受付嬢はおもむろにカウンターの下からパネルを取り出して、ヴォルケインに見せた。それは簡略化した地図だった。

 地図は大きく二色に分かれている。紫のエリアは魔領、黄色いエリアは人界のようだ。中央にある口を開いた三角の悪魔のような記号は現在地だろう。その右側、濃い紫で塗られた一帯には「魔の森」と書かれている。地図には入っていないがその先にヴォルケインの国があるはずだ。一方、南へはまっすぐ伸びる線があった。それは魔領抜け人界に至り、途中「エトラ村」という場所を経由して、東西を走る街道に繋がっていた。街道の東端には行先として国の名が記されている。つまり。

「南の街道からなら、人界の村を中継地にして正門を通って安全に来られたのですが」

 受付嬢はやや申し訳なさそうに言った。

「は?」

 ヴォルケインはつきつけられた地図を呆然と見つめながら、内容をゆっくり咀嚼する。

(ダンジョンへの安全な道がある?)

 そう言っているようにしか受け取れない。だが「ダンジョン」と「安全な道」は本来組み合わさるはずのない言葉だ。飲み込むことができない。

「……うーん、人界への広報はまだ弱いかあ」

 地図の向こうで受付嬢が独り言ちている。

(どどどどういうことだこれは? ここは古龍城ではないのか?)

 地図から目を離し、改めて受付嬢を見る。

(そもそも魔領でありながら、人間の娘がいるだと?)

 ヴォルケインの視線に気づいた受付嬢は「あ」と何かを思い出して姿勢を正し、

「申し遅れました。私、弊ダンジョン“古龍城”の受付、兼、古龍王グレン=メギドローザの秘書、シエラ・ニィスと申します」

 と言って、四十五度の角度で頭を下げた。何処に出しても申し分なく奇麗なお辞儀だった。ただしダンジョン以外でだ。

「ひしょ……?」

 さらに情報を追加されて、ヴォルケインはポカンとなりかけたが、その受付兼秘書の言葉の中に、思い出すべき名もあったことで我に返った。

「グレン……! やはりここは古龍城であったか!」

 素早く剣を抜き、光が届かぬ程高い天井へかざして、高らかに名乗りを上げた。

「我はバスクテリア皇国古龍王討伐隊隊長、ヴォルケイン・バン・クリフォード! 隊の仲間とはぐれ一人になりとても、魔領の邪龍グレン=メギドーザを打ち倒す者なり!」

 古龍城受付兼秘書のシエラは、眼鏡の奥で丸々と目を見開いて、その剣先を見つめた。そして。

「まあ竜討伐! ボス指名ですか!」

 胸前で手を合わせて、感激の声をあげたのだった。

「え?」

 予想外の反応に固まるヴォルケイン。

 その時。

「さわがしいぞ」

 広間中に響き渡らんかという程の声がしたかと思うと、奥から地響きのような足音が聞こえてきた。

 やって来たのは、全身に鎧をまとう巨躯の男である。いや、単純に「男」と言っていいものか。鎧の隙間から見える肌は短い毛に覆われている。頭には、大胆にねじれて前へ突き出た大きな角が二本。その顔はいかつい偶蹄類のようだった。明らかに人間ではない。魔領特有の存在――魔物だ。

「賊(クレーマー)か!」

 ヴォルケインの倍ほどの高さから、その魔物は咆えた。

「ぬうっ」

 魔物の登場で自分を取り戻したヴォルケインはその威容に気圧されることなく、すかさず剣を構え直した。(くれーまー?)と謎の言葉に引っかかりながら。

「警備部長!」

 そう叫んだのはシエラだった。

「失礼ですよ、お客様です!」

 小柄な身で、どやしつけんばかりに巨躯の魔物に喰ってかかる。一方の魔物はのけぞって「これはすまぬ」と、頭を掻いて謝ったのだった。奇妙な光景だった。

 次いで魔物はヴォルケインに向き直り「失礼した」と頭を下げた。

「本当にすいません!」

 シエラもペコペコと何度も頭を下げる。

「ちなみにこちら、警備部長のアギラさんです」

「あ、いや、どうも」

 謝られては戦意を向けられないが、構えた剣も下ろせぬまま、ヴォルケインはただただ困惑し続けた。

「うむ。客人は人間か」

 アギラと呼ばれた魔物は、改めてヴォルケインを見定めるように眺めた。

「しかもそのいで立ち。盗賊や冒険者の類ではないな」

「はい、バクステリアの騎士様だそうですよ」

「すると」

 アギラの目が光る。

「ダンジョン攻略ではなく、腕試し……いや、討伐任務か」

「はい!」

 シエラの声が一段上がった。

「しかも、ボス――グレン様の単独指名です!」

「ほほう」

 アギラは感心した。ヴォルケインはまた反射的に照れてニヤついてしまう。褒められ慣れていないのだ。

「人間によるボス討伐は、およそ二十年ぶりか」

「あ、それなんですけど……」

 何かを思い出したシエラの声のトーンが落ちる。

「レア案件なので、人間によるボス討伐って、手順が未着手なんですよ。ここ百年の前例は参考にならないし。どなたか古参の経験者の方に話を聞かないと」

「なら本人に聞けばよかろう」

「本人? ああ、ボスですか。でも、今日のボスは先程まで長時間にわたる五大古龍王同士のリモート会議を行われててお疲れでは……」

 話しながら石板――タブレットを操作していたシエラは何かに気づいて「え?」と声をあげた。

「まだ会議続いているじゃないですか!」

 シエラの眉間にしわが寄った。

「もう2時間も超過してる。もー、ボスは残業代出ないのに!」

 ぷりぷり怒るシエラの眼前に、新たなウインドウが浮かび上がった。そこには一つ目の球体状の魔物が映っている。

『いや、会議は終わっているよ』

「ニシュラグニス様!」

 ニシュラグニスは千年近く古龍王の側につき身の回りの世話をしている世話係である。

『今やっているのは「思い出話」さ』

 ニシュラグニスの言葉に、シエラの眉間のしわが緩む。

「打ち上げみたいなものってことですか? じゃあ業務外ってことでいいか」

「数千年来の知古だ。積もる話もあろう」

 ウインドウを覗き込みながらアギラがしみじみ言う。

「最後に直接お会いしたのは?」

『四百年前の魔領大戦終結時の調印式だね』

「そんな昔……。いつかリモートじゃなく直接合わせてあげたいなあ」

『いきなり古龍王同士が集まったら、魔領どころか人界も揺るがしかねない騒ぎになるね。下手すりゃまた争乱だ』

「考えただけでも根回しや手配が大変そう……」

 現実不可能な途方もない手間を想像し、シエラは肩をすくめた。

「ところでいいのか」

「何がです?」

「あれ」

 と、巨躯の魔物はぽつんと放置されたままの騎士を指さした。

「あ」

「あ」

 シエラはハッとし、同時に放心していたヴォルケインも我に返った。

「ヴォルケイン様、お待たせしてしまって申し訳ございません。とはいえ、お聞きの通り諸々の確認をしなくてはならないので、本件は明日以降ということに――」

「なっ!? これは信義と伝統と誇りある戦い。何を悠長な……」

 再び覇気を取り戻したヴォルケインを、シエラは手で制した。

「本来共に戦うべき討伐隊の方々とはぐれたとおっしゃってましたよね? 安否の確認も必要なのではありませんか?」

「う」

「それに、魔の森で何日も過ごされては、いくら頑健で精強な騎士様といえどお疲れでしょう。信義と伝統と誇りあるある竜討伐、万全万端で挑むべきだと思われますが?」

「ぐっ」

 痛いところを突かれて二の句が継げなくなるヴォルケイン。

 すかさずシエラは続ける。

「ということで、早速宿を手配しましょう」

「な……え? 宿?」

 人は立ち入るのさえ困難な、魔物が棲むダンジョンに似つかわしくない単語に、ヴォルケインがきょとんとなっている間に、シエラはタブレットを数アクション動かしてすぐに顔を上げた。

「――はい。人間の男性の騎士様一名、手配完了いたしました。場所は……」

 と言いかけて、シエラはちらりと表示されたウインドウを見てから訂正した。

「いえ、少々お待ちください」

 と言うや、先程の手配がスローに感じる程驚くべき速さでタブレットを操作し始め、記録し、通話し、確認して、瞬く間に残務を完了させ、タブレットを閉じた。

 そして軽快に「受付」札を倒し、代わりに「本日の受付は終了しました」の札を立て、流れるようにどこかから取り出したカードを小さな機械に差し込んでガシャンと音を立てた。これは一種のタイムカードのようなものだったが、もちろんヴォルケインには何なのかわからない。

「よっしゃー! 退勤――!」

 両手を上げて伸びをすると、シエラは髪をほどきながら軽快にカウンターから出てきて、先程までよりも軽い調子でヴォルケインに声をかけた。

「ヴォルケインさん、業務外なので、宿までご案内しますよ。それと――」

 タイミングよく、ここ数日ろくに食べていないヴォルケインの腹が鳴った。

「ご飯食べましょう!」

 親指で外を指すシエラ。

「あ、はい」

 信義と伝統と誇りある竜討伐の命を負った騎士は、そう答える他なかった。


「ぷはーっ」

 シエラはジョッキの中身の七割を一息に飲むと、満足そうに息を吐いた。

 ジョッキを置く時勢いあまってテーブルがガンと鳴る。

「やっぱり労働の後の一杯は格別だなー!」

 向かいの席には、いまだ戸惑ったままの古龍王討伐隊隊長・ヴォルケインが座っている。

「ヴォルケインさん、一人でやっちゃってすいません」

 そう言いながらシエラは残りを飲み干した。

「い、いや、それはいいのだが……」

 ヴォルケインは落ち着きのない様子でチラチラと周囲を伺う。

 一見、何の変哲もない食堂である。東の大国バクステリアの城下の店と比べればテーブルも椅子も簡素なものだが、作りはよく、掃除も行き届いている。およそ百人は入るだろう広さで、今は七割程度の客入りだ。賑やかだがガラは悪くない。

 だが。

 すぐ隣の席の二人組は、一方が青い毛に覆われた獣人で、もう一方は鱗と甲羅を備えている。カウンターでは小柄で緑の肌の妖物が注文を頼み、それに応える給仕の額には一本角が生えている。奥の厨房では上顎からも下顎からも牙をはやした料理人が、忙しそうに動き回っている。

 客も店員も――ヴォルケインとシエラを除く全員が――異形の魔物なのだった。

 シエラ引かれるままに案内されたのが、ダンジョンのふもとに佇むこの食堂「古竜の胃袋」だった。隣はシエラがヴォルケインのために手配していた「竜のお宿」という名の宿で、この食堂と繋がっている。周囲には他にも店や施設らしきものがあったが、キャパオーバーのヴォルケインの意識には残っていない。

(私は……魔領にいるんだよな? 古龍王のダンジョンに来たんだよな?)

 信じ難い光景を前に、ヴォルケインは何周目かの自問自答をした。

(なのに、受付があって、警備員がいて、就業時間が決まっていて、宿があって、食堂がある……なんなんだ? 頭が追い付かん)

 いっそまだ魔の森にいて幻覚を見ているほうがどんなにましかとヴォルケインは思うが、彼の冷静な判断力はこれが現実だと容赦なく教えていた。

「ささ、食べてくださいよ。人間用のメニューは私が監修しているんですよ」

 テーブルに並べられた皿の上で手を広げながら、シエラが勧めてくる。

「あ、でも私、南の方なんで、東のバクステリアとは味付けがちょっと違うかも」

 勤務時間中と比べてやや砕けた様子のシエラを、ヴォルケインはまじまじと見る。

「どうしました?」

「シエラ殿は……人間なのだよな」

「もちろん! 見たまんまです」

 朗らかに答える、ダンジョン受付兼古龍王秘書。

「どうして魔領のダンジョンに……というか、こんなことをしているのだ?」

 シエラは一瞬キョトンとしたあと思案顔になり、ややあって笑顔で答えた。

「私、リブトランの出身なんです」

 その言葉に、ヴォルケインは虚を突かれたように目を見開いた。

「自由都市連合……あの」

 そう呟いて、気まずそうについ目線を逸らした。

(自由都市連合リブトラン……。人界の名だたる賢者・知恵者が集って創設したリブトラン大図書館を基盤として南域に生まれた都市の連合体。その技術は他国の五十年先を行き、思想は百年先を行っていたと言われる先進文化圏――だった)

「先ほどお見せした地図にあった、ダンジョンへの経由地の村――エトラと言うんですけど、父はそこで生まれました。だけど若い父は当時の閉鎖的な村を嫌って家を出て、遥か南方のリブトランにたどり着いて、母と出会い、私が生まれました。そして、私が高等学院に入って間もなく」

 それまで明るい調子で続いていた彼女の声が、一瞬だけ震えた。

「なくなっちゃいました。故郷も家族も何もかも」

 ヴォルケインは返す言葉を持たない。

 三年前、リブトランの属する全ての都市は、その先進性を恐れた守旧的な大国の連合軍によって滅ぼされた。遠方にあるバクステリアさえ無関係ではない。

「それで、行き場のなかった私は、父の縁故を頼りにエトラの村にやってきました。馴染むのは大変でしたけど、子守したり子供に読み書きを教えたりして、それなりに充実してたんですよ」

 シエラはそこまで言うと、いきなり立ち上がった。

「……すいません」

「シエラ殿?」

「トイレ行ってきます。あ、おかみさーん、同じのもう一杯!」

 空のジョッキを掲げて呼びかけてから、いそいそと席を離れた。

「まったく、おかみさんじゃないっての。オーナーと呼べって言ってんのに」

 ぼやく声にヴォルケインが振り向くと、エプロンをかけ頭に布を巻いた大柄な女が盆にジョッキを乗せて立っていた。もちろん人間ではない。肌は薄赤く、頭巾からは二本の角が飛び出ていた。

 その姿をまじまじと見ていたヴォルケインの視線に気づき、魔物の女は言った。

「オーガが珍しいかい? まあそりゃそうか」

 口を利かれてヴォルケインは少し戸惑ったが、ふっきれたような気持ちになって答えた。

「……たしかに魔物も、魔物の食堂も、想像し難い程に珍しいが、正直あの娘がここで働いていることのほうが意味が分からん」

 ヴォルケインの言葉に、オーガの女は自分の方が珍しいものを見るような顔になったあと、ふふっと笑みをこぼした。

「だよねえ」

 オーガの女はシエラの席にジョッキを置いた。

「あの子はさ、エトラの村で生贄にされたんだよ。古龍王様へのね」

 そう言って、彼女はシエラの身に起こったことを話し出した。

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