第5話

それは市内で、一番賑やかな繁華街でのことだった。市電の停留所という、一日に、何百人の人々が利用するかわからないという場所に、居場所を決め込んだ女性のホームレスだった。年の頃は、70は過ぎていようか。一見して、その人は貧しいとは言えない服を着ていた。ホームレスではあっても、それまでの暮らしぶりを思わせる雰囲気があった。薄汚れてはいたが、銭湯には行っている様子が見てとれた。大きな旅行カバンとバッグをそこに置いて、立ったり座ったりしている。一体、この人に何があったのか。自分をたくさんの人の目に晒して。それは多分、女性だからだろうと思った。ここにいればたくさんの人が自分を見る。つまり、見守られるということにもなる。何かあれば助けてもらえる。心細い悲しさが、自分を人目に晒す場所を選んだのだろう。

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