第12話 ギルドへ戻ってついにキッドとの対決。犯人はお前だ!

 冒険者ギルドへ戻るとギルド内からなにか叫んでいる声が聞こえてくる。


「ラッキー悪いけどまたここで待っててくれ」


『あいよ』




 ラッキーは前回と同じようにギルド前で横になりシッポをパタパタとやっている。




 ギルドへカラを抱きかかえてはいる。まだ眠っているが、きっと一人で戦ってダンジョン疲れがでたのだろう。仕方がないな。




 ギルド内ではキッドとアイザックが騒いでいた。




「俺は関係ないだろ。こいつらのパーティーの問題だ! いいかげん帰らせろ」


「俺たちだって仲間を失って悲しんでいる時になぜこんな対応をされなければいけないんだ!」




「だから、ロックさんが戻ってくるまでギルドでお待ちくださいって言っているだけじゃないですか。なにかそんなやましいことでもあるんですか?」




 そこで指揮をとっていたのは受付のリッカさんだ。


 キッドとアイザックたちの周りには屈強な冒険者が取り囲んでいた。


 あれがリッカさんの隠れファンクラブのメンバーだろうか。




 アイザックやキッドなら本気をだせば逃げ出せそうだが、きっとギルドと揉めるのは本望ではないのだろう。




「リッカさん悪いな遅くなって」


 リッカさんに声をかけると少し安堵したような表情になる。




「良かったです。キッドさんとアイザックさんがロックさんのおっしゃっていたことを全否定されていたのでもう一度お話をお聞かせ頂けますか?」




「いったい何を否定してたんだ?」




 リッカさんが説明しようとしたところキッドが俺に説明してくる。


「あぁ良かったよロッカくん。なぜかギルドの方から僕たち疑われてしまっていてね。ロッカくんならちゃんと説明してくれるだろ?」




 勇者が気持ち悪い笑顔で俺の方へ寄ってくる。ずっと俺のこと使用人って呼んでたから名前すら覚えてもらっていないようだ。誰がロッカだ。




「いったいどれだ? 滅火のダンジョン4階層でS級パーティーなのにブルーアントに苦戦していたことか? それともカラを5階層で背中から切り付けて置いてきたことか? あっもしかしてフェンリルを前にして自分で剣を叩き折って逃げる際に俺のことを刺して10階層に置いて来たことか」




 何について説明して欲しいのかわからなかったので、とりあえず思いつくことを全部言ってみたがどれかあたるだろう。キッドの顔がひきつっているようにも見えるがきっと気のせいだ。




「てめぇ適当なことを言うな」


 なぜかアイザックが怒りだす。全部正論なはずだけど……あっアイザックが怒るということはあれか?




「あぁわかった。俺をS級パーティーからクビにしたことだな。安心していい俺も新しい仲間ができたからな。これからはもう別行動だ。それぞれの道を進む時期がきたと思ってお互い頑張ろう」




「ちが……わないけど、それじゃねぇよ! お前がなにそんな勝手なことを言ってやがんだよ。全部言いがかりだろ。クビにしたのはお前が使えないからだ。てめぇに上から目線で頑張ろうとか言われる筋合いがないんだよ。」


 興奮するアイザックの肩を押さえキッドが説明をかわる。




「アイザック冷静になれ。ロック悪いけど君が今言い出したことにはすべて証拠がない。君がS級パーティーからクビになったからといって妙な言いがかりや嘘をつくのは大人としてどうかと思うぞ?」




 なんでこいつはこんなに堂々と嘘を言えるのだろうか。


 気の弱い奴なら無理にでも説得されそうだ。




 それに証拠か……。




「おいキッドお前まだ王様からもらった剣持ってるよな?」


「当たり前だ。あの剣は……」


「俺の胸当てに残っている痕とお前の剣の形をあわせてみろ」




 キッドが一瞬驚いた顔で俺の方を見るが目線を避ける。他の冒険者がキッドから折れた剣を奪い取ると俺の胸当てについていた傷と重ねる。




 キッドの剣と俺の胸当ての傷の大きさはぴったり一致する。




「キッドさん残念でしたね。これで証拠は揃いました。他の2人も本当のことを言わないと罪はどんどん重くなりますよ」




「ふざけるな。あれは俺に罪をなすりつけるために自分からつっこんでいったんだよ。そうだよな? アイザック!」




 同意を求められたアイザックは俯いたまま何も言わない。




「カラのことはいったいどう説明するつもりなんだ? こんなにぐっすり眠ってしまっているのに」




「カラ……ごめんなさい。ずっと親友だったのに。私が守らなきゃいけなかったのに。私があの時手を伸ばさなかったから……」




 エミーがカラを見てカラの名前を叫び泣き崩れた。


 そんなに後悔するくらいなら助けてやればいいのに。


 人は判断を間違えば簡単に死んでしまう。




 俺の腕の中にはカラが赤黒いローブを着たまま眠っている。何度か途中起きたけどな。




「バカ! その女は自分で戦う力がないから勝手に死んだんだ。俺たちは関係ない」




「勝手に死んだ? キッドが背中から切り付けたんだろ?」




「だからどこに証拠があるんだよ? 全部お前の妄言だろ。ダンジョン内で起こったことは証拠がなければわからないんだよ。俺たち3人はやっていないって言ってるんだよ。全部お前の妄想! はい解決」




 キッドは勝ち誇ったかのように俺たちに言い切る。


「はぁ。おい! そろそろカラ起きろ。お前を切り殺そうとした奴が寝ぼけたことを言ってるぞ」




「えっ?」


「はっ?」


「うわーん! カラが生きてるの!? カラーごめんなさいー」




「ムニャムニャ……ロックごめんよ」




 そんな寝言いいからさっさと起きろ。


 俺がカラの頬っぺたを叩く。




 ビシッ! ビシッ! なかなか起きないな。




 よしちょっと強めに叩いてみるか。


 ビシッ! バシッ! 今度は両頬をちょっと強めに叩いてみる


「おっおびてる! おびてるってロッキュ」




 発音がまだ寝ぼけているみたいだな。


 今とっても大事な場面なのに。




 仕方がないな。


 もうちょっとちゃんと起こして見た方がいいか?


 仕方がないグーで……。




「起きてる! 起きてるってロック。その拳を握るのはやめて。大丈夫だから」


「やっと起きたか。お前を殺そうとした奴がいるだろ? どいつだ?」




「せっかく生き延びたのに今ロックの拳で……いやなんでもない。私の背中を切りつけたのはアイツよ!」




 キッドが俺たちの方を睨みつけてくるが、それにひるむこともなくカラはゆっくりとキッドの方へ指差した。




「アイツが後ろから切り付けてきてオレンジアントの群れに置いていきました」


 ギルド内では信じられないといった感じで騒めきが起こる。




 いよいよ反撃をする時がきた。


―――――――――――――――――――――――――

ラッキー「一人でギルド前で待ってるの飽きたな」

ロック「もうすぐ? 終わるから。後で遊んでやるから我慢してくれ」

ラッキー「大人はすぐに後でとか今度って言うよね」

ロック「悪かったよ。すぐだよ。すぐ」

ラッキー「じゃあ後回しにしないで今すぐ評価ポイントいれて」

ロック「おいっ」


応援ありがとうございます。

あなたに面白いって思ってもらえるように頑張ります。

今後ともよろしくお願いします。

―――――――――――――――――――――――――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る