第17話 最後の試合

最後の試合

PKまでもつれ込んで

両チームともヘロヘロだった

あとは

運と気力だけだった

そして負けた

彼は一人

誰もいなくなった客席へ

私はその背中を追った

夢から覚めたような顔でフィールドを見つめている

声をかけた

「愁・・・大丈夫?」

ありきたりな言葉で

声をかける


【続く】


私は彼の横に座る

「帰らなかったのか?」

”君のサッカーへの情熱は私が一番知っている

それを失ってしまった君を

一人残して帰れるわけない”

「PKは運だよ

じゃんけんと一緒」

そういった私に

彼は感情的に怒鳴った

それは

私にではなく

まるで

自分自身を責めるような言葉で

声が震えていた


【続く】


ふと

彼の顔を見ると

ボロボロと大きな涙がこぼれ落ち

まるで子供の様に泣き始めた

私は彼の前に立ち

抱きしめた

ヒクヒクと声を出して泣く彼の涙が

私のシャツの胸元にしみる

”悔しかったね”

”頑張ったね”

どんな慰めの言葉も効かないことは

私がよく分かっている


【続く】


だって

私たちは幼馴染

小さなころから

一緒にボールを追いかけた仲間

昔から一番近くで貴方を見ていたんだから

同じ思いなんだ

だから今日は

今日だけは

許してください

彼の一番近くに寄り添えることを・・・

彼には大切な彼女がいることを知っていながら

私は友情という言い訳で

彼を抱きしめる


【完】


【narusegoto】

『君と僕』

12話の唯香のきもちです


※たまにあるのですが

140字でおさまらないで

何話かに分けて一つの話にすることがあります

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る