第3話 ついに桃大志望者内2位へ…。

さて。ここでもう一度、文系科目を3つに分類してみよう。


① 苦手だとどうにもならない教科

・英語 時間と完成度が比例。今からじゃ追いつけないよ。

・古漢 古漢ネイティブなどいないので帰国生はいない分、英語よりかはマシ。


② 慣れと工夫次第で逆転爆発する教科

・数学 直感も含めた思考回路を、いかに論理的に整理できるか。慣れれば武器。

・現代文 傍線部の前後を回答欄にうまく丸写しして、点数を稼ごう。

・地理 思考力:大、暗記量:少。 何度も演習して感覚を磨くのが重要。

・物理基礎 思考力:大、暗記量:微。数学とのシナジー効果大。

・化学基礎 思考力:中、暗記量:少。地学とシナジー効果。


③ 直前に詰め込む教科

・日本史 思考力:中、暗記量:大。日本史とシナジー効果。

・世界史 思考力:少、暗記量:膨大。日本史・地理とシナジー効果。

・生物基礎 思考力:少、暗記量:中。

・地学基礎 思考力:中、暗記量:少。地理とのシナジー効果大。


(英数国現古漢は必須。理科2科目、社会2科目を選択)


①で差が付けられている受験生どもには刮目してほしいが、まず、①でこれ以上の差が付けられないようにすること。そして、①の失点を、②で埋め合わせること。最後に、③を直前に仕上げること。


これが作者タイプの人に贈る、受験の基本戦略である。


さて。作者がこの中から選んだ武器は――。


必須科目: 英語・数学・現代文・古漢

選択科目: 地理・世界史・地学基礎・化学基礎


である。①タイプは2つ。②タイプは4つ。③タイプは2つ。

②タイプに比重を置いていることが分かるだろう。②の爆発力にすべてを賭けたのだ。


また、選択4科目の構成にも意味がある。範囲が大部分で重複する地理と地学の莫大なシナジー効果に始まり、世界史と地理のシナジー、化学と地学もシナジー。


自由の効く選択科目には、様々なシナジー効果がある。自分との相性と相談しつつ、どの組み合わせが一番、点数が伸びそうなのか。

死ぬ気で考えた。その結論が、世界史-地理-地学-化学の4連シナジーだった。


もちろんこれは作者との相性が最も良い組み合わせだ。思考力に不安のある各人は、暗記の比重を増やさねばならないだろう。しかしこれは②の爆発力を犠牲にするため、結果的に①でつけられた差の挽回に手が回らなくなる可能性がある。受験生諸氏は慎重に考えて頂きたい。


さて、作者は夏の段階において早くも、②タイプの数学と現代文において、英語の失点分をある程度補えるようになっていた。

しかし、やはり重いのは英語の偏差値42である。

数学や現代文は、コツを掴めば偏差値など、20くらいは跳ね上がる。

だが、英語にコツはない。語学にコツなどないのだ。今までどれほど喋ってきたか。それだけなのである。


すなわち――手を抜いたら死ぬと言うこと。


そう。①タイプは苦手なら最後まで苦手だが、だからといってやらなければ、更に差を付けられてしまう。

ただでさえ帰国生や6年間の不断努力勢に対して、勝ち目のない競争をしているのに、走ることをやめてしまえば引き離されるだけだ。


②を用いて挽回が効く範囲を超えて、①の差が開いてしまえば……ゲームオーバー。



毎日死ぬ気で食らいつく。


勉強時間の7割を英語に割いた。



語学はどれほどその言語を用いたかである。

特に英語は表音言語である。毎日英文を音読した。帰国生は毎日英語を喋っていたのだから英語脳になったのだ。我々も、日本語を解するときに主語だの動詞だの考えずに喋れるだろう?


なお作者の場合、勉強時間の残り3割は全て数学に回した。

地学基礎、化学基礎は量が少ないので、共テ1ヵ月前からで十分間に合うからだ。また、世界史についても要はストーリー形式なので、世界史という物語を流れで抑える(ラノベ読む感覚でやればよい)ということを意識すれば直前2か月で完成する。

地理に関しては趣味でやっていたのでやる必要がなかった。


つまり、③の教科は全て直前2か月に回したのだ。

戦争10ヵ月うち、8か月は英数しかやらなかったのだ。


8か月のうち7割は英語。

そうでもしなければ引き離される一方だ。

それほどまでに、英語偏差値35のスタートラインは厳しかった。


高2末で初めてSVOCを理解してから、『POWER STAGE』を何周もして英文法を叩き込み、英語構造の感覚を導入。学校から配給された、初歩的な長文参考書を2冊ほどやった。単語帳はみんな大好き『鉄壁』だ。

作者個人の感想だが、『シス単』を使うくらいなら『鉄壁』だ。なぜなら語幹で暗記させるため、知らない単語は文脈のみならず、ようになるからだ。また、図がおもしろくゲラゲラ笑ってるうちに覚えてしまう。さらに言えば、『鉄壁』は大学入試英語の頻出を的確に押さえている。その上、『シス単』や『ターゲット』などの単語と和訳が一対一である単語帳とは違って、入試頻出の意味を重点的に載せているのだ。


account 説明、口座、重要性、利益


例えば、上のように、一つの単語に四つの和訳が付いていたりする。これは何よりも大事なことで、英単語と和訳が一対一になるはずがない。これを抑えている『鉄壁』は、他のどの単語帳よりも実力を与えてくれるはずだ。『鉄壁』の内容が完全なら、どの国公立の長文も苦労しないだろう。


それでも、元々英語が得意な人々(努力勢)との格差は著しい。当然だ。この世界は不断の努力が評価されるように出来ている。あと帰国生もか。


数学については、夏が終わるころには『チェックアンドリピート』の二周が終わった。4月から8月まで、5ヵ月に及ぶ基礎固めが終わったのだ。

さて。待ちに待った応用である。高2で学校から配給された『大学への数学:一対一対応の練習』を、数1、数A、数2、数Bの四冊、すべて二周した。

これは、7月からぼちぼち始めていたわけだが、10月までかかった。応用力の完成まで、4ヵ月弱。スケジュールは厳しかったが、二周した。


英語。英語飽きたら数学。

数学飽きたら英語。


一日がこれに始まり、これに終わる。

また、学校授業は地理、世界史、古漢がバランスよく配分されており、真面目に聞くに越したことはない。

英数に関しては授業+自習、それ以外は授業のみ。

特に英数以外の教科は自習しないので、学校授業が唯一の勉強時間だった。



さて。4月から10月までの半年。

作者のこなした参考書は


・『POWER STAGE』

・『鉄壁』

・初級長文問題集×2冊

・『チェックアンドリピート』

・『大学への数学:一対一対応の練習』


たった6種類である。

え? 半年で、たった6種類?

そう思う方もいるかもしれない。


確かに、長文問題集×2は一周だけ。『鉄壁』は半分しかやっていない。

しかし、その他は最低二周した。


英文法と数学に言えることは、たくさんの参考書をやるより、同じ参考書を何度も何度もやりこむことが重要である。

長文問題集は一度やった内容は覚えてしまうので、繰り返しの重要性は幾分薄れてしまうが、英文法はやるだけ出来るようになる。

また、文系数学は解放の暗記、すなわち定石を叩き込むことが重要である。


「まるで将棋だな」


誰かがそういった。

いいやその通り、文系数学は将棋なのである。


どんな難題な構図も、定石の組み合わせ次第で解きほぐせるようになっている。

だから、まずその定石を――パズルのピースを生成しなければならない。

そのために必要なのが周回。言い換えれば、暗記数学である。


暗記数学を叩き込む。パズルを組み立てるために、まずはピースを自分のものにする。


「まるで将棋だな」


そういうわけで、数学の問題集は何度も何度も繰り返さなければならない。

新しい参考書が欲しくなっても、気軽に手を出せば死だ。最高の参考書一冊にひたすら注力して、半年かかって完成させるものなのだから。

そうでなければ②の爆発力も見込めない。①の失点を②で補う戦略は根本から破綻する。そのために、文系お得意の暗記を、数学において必死に敢行するのだ。



文系諸君。君たちの夏は、社会科の暗記のためにあるのではない。


数学の暗記のためにあるのだ。



逆に言えば、夏に暗記数学を完成できれば、秋からの応用数学において一定の余裕が生まれる。冬からの発展数学にも、作者は余裕を持つことができた。

少なくとも夏は、耐え難きを耐え、忍び難きを忍ばねばならない。


さて、その勢いで迎える秋季。

駿台の冠模試でC判定を取った。一年前は専修E判定だった作者が、である。

判定に喜ぶも束の間。偏差値に戦慄した。


英語 42.7

数学 52.1

国語 62.4

地理 65.5


総合偏差値55。

英語が伸びないのは織り込み済みだが、国社が稼ぎ頭になってしまっている。

これは危うい。現代文がすっ転べば、あるいは地理がコケれば、サヨナラだ。


特に、数学が平均程度しか取れていない。やばいやばいとパニックになったが、よく考えれば当然である。

作者はのだから。


パズルのピースは夏に手にした。その組み上げ方を秋に学んだ。

定石を組み上げることはできる。

しかし問題は「出題者の意向に沿って組み上げていない」ことだった。


ジグソーパズルの全体像が見えないまま、ピースを直感で繋ぎ合わせているだけ。たまたまそれで上手くいくこともあるかもしれないが、運次第だ。


「まるで将棋だな」


将棋で言えば大局観を掴めないまま、手癖で定石を組み進めているようなもの。それは勝負に向き合っていると言えるのだろうか。

将棋同様、入試も、出題者とのコミュニケーションである。大局を把握し、相手の意向を見透かし、戦略を組み、制限時間内に決定打を打ち込まねばならない。


応用数学+コミュニケーション+戦略=発展数学


そして大学入試は、全体像の把握や戦略構築にかかる能力を測る。当然、応用数学では太刀打ちできないわけだ。


『文系数学のプラチカ』


10月。作者は一冊の参考書を買った。

思考力養成を謳うこの参考書は「10分考えてなかったら君の負け。答えを見てね」というコンセプトで、作者は何度も負けて、半泣きで二周した。

定石の手癖では解けない良問ばかりで、問題文を読んで、どうやったら解けるかを数分かけて考えるところからスタートだった。作者はコミュニケーションが苦手なので、ここで非常に苦戦した。数学がスランプに陥ったのもこの頃だった。


対して英語は偏差値42のままだったが、作者は安心した。

なぜなら、変動がないということはということだからである。

帰国生や、6年不断で努力してきた人々に、たった1年の努力ながらも、これ以上引き離されることがなかったのだ。


夏から秋にかけて作者は『やっておきたい300』、『やっておきたい500』をクリア。先述したが、長文問題集は繰り返してやる必要性が薄い。英語に関しては数学と真反対で「質より量」なのだろう。我々が日本語を喋れるようになった過程と同じく、量をこなす者が最後に笑うのだから。


秋には赤本の『阪大英語20か年』にお世話になった。阪大は処理能力を求めるので、多少の英語力がついていないと厳しいのだが、作者はなんとか解けるレベルに達していた。

まぁ、もともと英語ができた人は、同じ努力でもっと英語がペラペラになってるんですがね。差は相変わらず埋まりません――開きもさせないけどな。




河合塾/秋季全統模試 偏差値


英語 59.8

数学 65.7

国語 66.3

世史 72.2

地理 75.4


第一志望欄:桃山学院大学 A判定 2位/5人


かの有名な、日本を代表する愛國者を送り出した、桃大とうだいの社会学部。

政治を語るワニ。ノーベル愛国賞授与も間違いないだろうと思われていたあのお方を輩出した桃山学院大学社会学部。その第一志望者の中で、名誉ある2位。

見てるか~FLASH編集部? お前らが馬鹿にしたあの御方の意思を、俺たちは継ぐ――。


ちなみに続く全統共通テスト模試では、桃大社会学部、第一志望者内最下位だった。

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