背徳のパラドクス ~ AIをとりもどせ!! ~

武論斗

プロローグ

 はしがない物書き。

 ライターでもなければ、翻訳家でも脚本家でもない。抑々そもそも、文系ですらない。趣味で駄文をしたためる程度。小学四年生、凡そ9歳か10歳の時から作文を書く程度。初めて賞を貰ったのがそのくらいの時だから、これはおおむね間違いない。


 始めっから、そう、物書きを趣味と自認した当初から、わたしの書くは全て虚構フィクション

 当然だ。

 小学生の内から実話ノンフィクションを書き記す作風なんて有り得ないだろ?

 いや、この説明はちょっと違うな。

 も、わたしが普通であるかのような、通常であるかのように繕ってしまった嫌いがある。仮説形成アブダクション

 先に白状しておこう。

 そう、わたしは“嘘吐うそつき”なのだ。


 ありもしない、経験した事もない絵日記を書き連ねた。読んでもいない読書感想文を認めた。思ってもいない、考えてもいない、検証さえした事のない小論文を書いた。アンケートにさえ、虚構を記した。

 学校に、先生に、講師に、あらゆる人々に、わたしは虚構を認め、提出、読ませた。

 わたしは、作家、なのだ!

 そう、職業作家ではない、生まれ持っての作家――レイスとしての作家なのだ。

 職業として、生業なりわいとしての物書き風情と一緒にして貰っては困る。

 わたしは金の為に書いている訳ではない。

 わたしとう作家は生まれながらのさがであり、わたしの作家人生はあらがう事の出来ない叙事詩サーガである。

 わたしは物語を紡ぐ“創造主”なのだ!


 ――狂っている?

 嗚呼、分かっているさ。

 どうしようもないくらい分かっている、普通じゃない。尋常じゃない。

 しかし、仕方ない。仕様しょうがない。しょうもない。

 何故かって?


 君は“奇蹟きせき”を目の当たりにした事があるかい?


 わたしは、――

 ある!!!


 無神論者のわたしが呆気あっけに取られる程、常識をくつがえる程、せ返る程の奇蹟、超現実。

 手品、魔術、奇術、詐術さじゅつ。そんなレベルでは到底説明できない圧倒的な出来事。

 果たして、わたしは始めから夢想家ロマンサーだったのだろうか?

 それとも、この奇蹟が切っ掛けで法螺吹きロマンサーになったのだろうか?

 今となっては鶏卵にわとりたまご。どちらが先かなんて憶えてないし、分からない。抑々、興味すらない。

 いや、興味がないってのは、君がだよ。わたしが嘘吐きだったのか、嘘吐きになったのかなんて、どうでもいい話だろ?


 ――さて


 もし良ければ、少しだけ君の時間をわたしに分けてはれまいか?

 そんなに手間は掛けさせない。

 ほんの少しだけ、わずかのときだけ本書に目を通して貰えれば、わたしが経験した奇蹟を君に伝える事ができる。


 おっと、その前に。

 気をつけてくれたまえよ、君。

 わたしは嘘吐きなんだ。

 どれが嘘かまことか、よく見定めてくれ。

 な~に、すぐに分かる。

 本当であれば君の視覚サイト心象イメージが浮かぶ。戯言シットであれば君は何も感じやしない。真実であれば君はわたしに嫉妬し、虚偽であれば適合フィットし得ない。

 それだけ。ただのそれだけ。

 じつに、実にシンプルな暗示ヒント

 勿論、批判カントは受け付ける。

 ただ、今は読み進めてみるのが良いかと。

 だまされたと思って。

 そうさ、存外悪くないもんだ、あざかれるというものは。


 踊ってみないか、わたしの戯曲レーゼドラマで。

 翻弄されてみないか、わたしのように。

 冷め切ったあの時のような、乾いた口吻ベーゼを君もまた

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