第7話

「今日は孤児院の慰問に行きますよ!」


 リコウリッタが朝一から元気にそう言った。


「それはいいが、なんで俺はこの間と同じドカジャンにニッカポッカで、お前はドレスなんだよ!?」


 するとリコウリッタはチッチッチと指を振った後、


「陛下、分かってませんねぇ。男の子の相手をするのは大変なんですよ~! チャンバラに鬼ごっこ、かくれんぼに縄跳び、体力勝負なんですよ~! だから汚れてもいい格好をするんです! 対して女の子はおままごとやお人形遊び、刺繍に花冠作りなど、おしとやかな遊びをするからこれでいいんです!」


「ハァッ...分かったよ...さっさと行こう...」


 バッカーノはもう色々諦めた。



◇◇◇



 孤児院に着くなり、子供達がわらわらと集まって来た。


「みんな~! 元気にしてたかな~!」


「元気ぃ!」


「今日はね~! このお兄ちゃんが一緒に遊んでくれるからね~! 男の子はお兄ちゃんの所に行ってね~! はい、これを一人一本ずつ持ってね~!」


「これなに~?」


「これはね~! ハリセンって言ってチャンバラする時に使う物なんだよ~!」


「わ~い!」


 それを聞いたバッカーノの顔色が条件反射で青くなる。


「女の子はお姉ちゃんと一緒に遊ぼうね~!」


「は~い!」


 その後、リコウリッタは女の子達と楽しく遊び、バッカーノは...


「痛っ! 痛っ! こ、こら待てお前ら! 股間を集中砲火するのは止めろ!」


 子供のタッパ的に、ちょうど殴り易い位置にあるバッカーノの股間がビンチだったとさ。



◇◇◇



 遊び疲れた子供達が昼寝の時間になったので帰ろうとすると、


「よぉ! 王妃様じゃねぇか!」


「あら、ゲンさん。お久し振り」


 やたらゴツい体格の男が話し掛て来た。リコウリッタにゲンさんと呼ばれた男の姿を見てバッカーノは絶句した。


 男の左腕が無かった。


「聞いたわよゲンさん、男の子達に剣術を教えてるんですって?」


「あぁ、と言ってもまだまだお遊びレベルだがな。騎士になりてぇとか冒険者になりてぇって言うヤツにはちょこっと教えてやってる」


「未来の騎士や冒険者を育ててくれているのね。ありがとう。期待してるわね」


「そんなんじゃねぇけど、まぁボチボチやってるよ。そんじゃ仕事があるから」


 バッカーノが呆然としているとリコウリッタが、


「あの人はゲンさん。元は冒険者だった人です。王都に魔物が侵入しようとした時、王都を守ろうとして片腕を失くしました。それ以来この孤児院で働いています。ここにはその時の戦いで親を亡くした子供達も居ます。陛下、あなたはその時どこに居たんですか?」

  

 バッカーノは答えることが出来なかった。

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