第4話 席替えコントラリー

  搭乗口に横付けされていた飛行機が飛び立ち、電光表示が繰り上がる。

 俺が乗る飛行機の番号が表示された。17時35分発、新千歳空港行き。



 俺が5年生に進学した時、奇跡が起きた。

 ステージの上で話しかけてきた少女が、同じクラスにいたのだ。

 同級生だった。入学時から在学していれば知っていたかもしれない。

 しかし、4年生で転校してきた俺には、残りの学生生活に光明が射した様にしか感じられなかった。


 俺は彼女とすぐに仲良くなった。どう言うきっかけで、どう言う流れで話したのかは全く覚えていない。

 ただ、どういうわけか席替えの度に、彼女の隣か前後の席を獲得出来たのは大きく影響していると思う。



 「先生、私達席替えのたびに席近いのなんとかしてください。」


 休み時間、教卓に座っている先生の前に立ちに彼女が言った。

 40代半ばの男の先生は、いつもの様に眼鏡をおでこにかけて、テストの採点をしていた。

 ねっ、と横に立っている俺に彼女が同意を求める。


 「うん。」


 と一言だけ返事をする。嘘だ。そんな事全く思っていない。毎日彼女と隣の席にいるだけで幸せだった。

 彼女だって、いつも笑いながら話しているのに、なぜそんな事を言うのだろう。

 そもそも、なぜこの時の俺は彼女とこの場に並んでいたのであろう。思い出せない。

 彼女が友達と話している時に、そんな話題になったのであろうか。だとしたら、いい迷惑だ。

 先生は、聞き流していた様だった。

 大人になれば30人以上いる生徒の希望なんて、いちいち聞いてられない事は想像出来る。がしかし、当時の俺からすれば一大事だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る