DAY 46

 お菓子を食べる為、足早に庭を後にする小さい私は、今の私に気付かずそのまま走って行ってしまった。

 正直、元気な娘を見守るママの姿を見てしまっては、過去の自分に興味がいかない。

 ママは本当に綺麗な人で、太陽みたいな人で、そして、天使だ。

 純白な翼を背中に携えているのが何よりの証明。

 彼女が空を飛び立つ時には必ず、金色の髪を靡かせながら、白く輝く羽が舞う。

 自慢の母親だった、と思う。

「ベレス、あんまり走っちゃダメよ⋯⋯あら?」

 不味い、ジッと立ち尽くしていたら気付かれてしまった。

 

「あなたは⋯⋯? 今魔族は皆戦地に赴いているはずだけど⋯⋯」

 心臓が口から飛び出そうになるほどに跳ねてしまった。取り敢えずなんとか言い訳しなければ!

「あ、ああ〜、えっとえっと、あの⋯⋯休憩、休憩してましたっ」

 

 ば、馬鹿だ〜ッッ!! 何を言ってるんだ私は⋯⋯!!

「あ、あら、そうなのですか⋯⋯? では、是非私たちと一緒にお茶でも致しましょう。今からベレスの為にお菓子を作る所ですので、良かったらあなたも⋯⋯」


「いえ、私は⋯⋯忙しいので⋯⋯」

「え? さっき、休憩中と仰っていたのでは? 急用ができましたか?」

「あ、ああ〜ごめんなさい⋯⋯んーっと⋯⋯やっぱり、お供します⋯⋯」

 ママは両手を叩いて喜び、庭を後にした。

 はあ、緊張し過ぎて身体が震えるし、顔が暑くて仕方がないし、口も思うように動いてくれなかった。

 思えば数百年ぶりの再会なんだ、強張るのも無理はないか。

 

 それにしても──

「私が二人⋯⋯いて良いのか?」

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