第2話 鈴の舞い

辰之進

もう一度会える方法はないだろうか

いい策はないか


調べて参ります

殿、調べましたところ

この日に町の祭りがあるそうです

そこに行けば会えるかと思います

ただ、衣装を着替えていかないといけないでしょう


そうだな


髪型もそうです

町民が被っているような帽子が必要かと思います


わかった

そろそろ、祭りの時間か平民を装うか


辰之進、準備はできたぞ

これでよいか


それでよろしいかと思います


それでは行くとしよう

町の祭りか、小さいが賑わいがあっていいな

戦と違って心が温まる


そうですね

殿


いろいろな出し物があるのだな

芝居などもあるではないか

面白い

鈴の出番はまだか


もうそろそろかと思います



お~い

鈴の舞いが始まるぞ


おお

そうか


相変わらず美しいな


なんたる美しさ

鈴ではないか

小鳥さえも、さえずりをやめておる

私の方を見てくれないか


お殿様



二人はひかれ合う



今年も鈴の舞いも終わったか

あいかわらず美しかったな


そうだな

みんな鈴の舞いを楽しみに来ていたからな


そうだな

あの終わった余韻も素晴らしいな


ああ


鈴、どこにおる

あそこか

違うぞ

どこだ

これだけ人数が多いから見失ったではないか

こっちか


お殿様、どちらにいらっしゃいますか

さきほど、目を見つめることができました

もう一度、せめて背中でもかまいません

触れることは許されないのでしょうか


鈴、鈴

なぜ、いない

戦で大将を見つけるより困難ではないか

大将が立っている場所より遠いのか

こちらか

そちらか

なんと目の前にいるではないか


お殿様が後ろにいらっしゃるようです

愛しき方の暖かさを感じます

少しでも暖かさを消さないためには

胸元に飛び込んでいくことです

でも、私に出来るでしょうか

私は恥ずかしくて後ろを見ることができません

せめて後ろを向くだけでいいのです

神様、私に勇気を下さい


敵国の猛者や大将などを恐れたことは無い

しかし、今や恐れているのは鈴への想いが伝わらないことだ

いや、伝えられない自分の弱さだ

なんたることだ

敵国の大将を討つのは容易だが

鈴の手に触れるのは困難だ

だが、困難を乗り越えなければいけない

柔らかい鈴の手に触れよう



お殿様




どうして私の名前を知っているのでしょうか


鈴という名に引き寄せられたのじゃ

しばらくはこの手を放す事はできない

今日から城で過ごそう


私は家に帰らなくてはなりません


どうしてだ


病気の母がおります

面等を見なくてはいけないのです


心配ない

お母様を呼ぶのだ

いえ、ご迷惑をおかけします


大丈夫だ

名医もいる

なにより、鈴と毎日会える


よろしいのでしょうか


ああ

私が何より望む

辰之進、頼むぞ


わかりました

殿

すぐに支度いたします


頼むぞ



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