第11話 今から

「今から行っていい?」

 というメッセージが届いた。

 隣には、スヤスヤ寝ているちーちゃんがいる。

「いいよ」と返事を打った。


 今から。とはいえ、40分ほどかかるはずだ。基本的にお願い事をされたら「いいよ」と答えることにしている。


「ちーちゃん、起きて!」

「んん?」

「今から来るって」

「誰?」

「息子」

「・・・わかった。急いで帰るね」

「えっ、帰るの?」

「えっ、逆に居てもいいの?」

「いいよ」

「いやいや、ひーちゃん、親子の時間大切にしようよ。それに私の事、なんて紹介するの?」

「普通に彼女でいいんじゃない?」

「いや、それ嬉しいけどさ、もう一度よく考えて」

「ん?うん、わかった」

 バタバタと帰り支度をするちーちゃんを見つめていた。


 ピンポーン♪

「あっ」

「こんにちは」

「こんにちは、大きいんだねぇ」


 ちーちゃんが帰ろうとしていた所に息子がやってきた。

「高校生だからね、背はとっくに抜かされてるよ。あ、こちらお母さんの彼女ね」

「ひ、ひーちゃん?」

 驚いたちーちゃんに向かってペコリと頭を下げ「母がお世話になってます」と言う息子。

 いつの間にか、成長してるんだなぁ。




「ちーちゃん、この前はごめんね。せっかくの休みだったのに」

 ひーちゃんの子供が急にやってきた時の事を謝っているようだ。

「うん、大丈夫だよ。それよりそっちは大丈夫だったの?」

 その時に私を彼女だと紹介したひーちゃんに、その後を聞いた。

「うん、すんなり受け入れてたね」

「最近の子は、そんなもんなの?」

 世の中が変わってきたのか、それとも、ひーちゃんの子だから?ひーちゃんもちょっと変わってるしな。

「ん?何か言った?」

「いや、別に。それより、ひーちゃん! 私あの時、よく考えてって言ったよね!」

「うん。よく考えて、息子にもちーちゃんにも嘘はつきたくないって思ったから」

 そんな風に言われたら、もう何も言えなくなるじゃないか。良くも悪くもマイペース過ぎて。でも、ひーちゃんのそういうところが堪らなく好き。調子に乗るから言わないけど。


「そういえば、ひーちゃん!」

「なに?」

「この埋め合わせは必ず。とか言ってたよね?」

「うん、言った.......かな」

「じゃあさぁ、今夜泊まっていい?」

「もちろん、いいよ」

「やった! 一緒にお風呂入ってもいいよね?」

「えっ」


 はい。と右手を出せば、オズオズと左手を差し出すから、しっかり捕まえて浴室へ向かったのだった。

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