竜騎伝

流川清丸

第1話 種火

その夜、森が静かに燃えた。


一頭の若い狼が、紅蓮の炎から飛び出す。

狼はちらりと後を振り返り、一目散にどこかへ走り去った。


どこからか、寂しげな遠吠えが聞こえてくる。


夜が明けた。

焼け焦げた木々がまとめて朝日に照らされた。

森は、草原と隣接している。


鳥の鳴き声が聞こえる。


森と草原の境目にある岩の洞窟から、一頭の熊がゆっくりと出てきた。


「何やらきな臭いなあ」

熊は、立ち止まって空気のにおいを嗅いだ。

若い熊のようだ。


熊はゆったりと森を一瞥し、どこかへと歩き始めた。


これはヒトがヒトならざるモノと共存し、後に冒険者と呼ばれ、命がけで未開の地を探索していた頃の物語である。

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