リコール

アキヅキ

第1話自殺願望

「今日午後5時頃、都内のビルで、、」

 食事中にニュースをつけるのはいつものことだった。


ガタ


「全く最近の若者は」

 これもいつものこと。

 父がニュースにケチをつけるのもいつものことだった。

 しかし、ここからが違う。

「次のニュースです」

 男性キャスターから女性キャスターへ話し手が移り話を切り替えた。

 しかし、

「いえ、失礼致しました。続報です。クルスの海教団関連のニュースです。

先程自殺を図った若者達の生命がクルスの海教団に保管されたとの速報がたった今入って参りました」

 慌ただしい様子でキャスターが書類を纏めながら話し出す。

「またなのね」

 それを聞いて母はため息をく。

 

 そうなのだ。

 実は昨今現れた科学者の研究で不要になった魂のリサイクルが可能になった。

 それを教団関係者が保管して今必要な人に割り振っていた。

 病気で苦しんでいる人に免疫力を与え、

 出産で力不足に陥っている人にも力を与えた。

 それだけなら問題はない。

 勿論、俄に出てきた科学者と教団のことを一定数信じられない人もいる。

 だが、その逆も多かった。

 教団と科学者の提唱理論は若者達の琴線にも触れた。

「どうせなら、俺みたいなクズが生きてるより、もっと必要な人に使ってもらった方がいいよな」

 などと「寄付」するような気持ちで自殺を「志願」する者が続出した。

 その結果少「死」高齢化は急速に拡大し、最高齢記録は200〜300歳となっていた。

 恐らくこれはこれからも伸び続けるだろう。

 一時期人生百年と言われていた時代があったが、30代以下の若年層の存在がなくなり40代以上の人間から上の層だけで固められつつあった。

 それも若年層の命を吸い上げるような形で。

 それはまるでジェンガだった。

 仕方のないことなのかもしれないが、仕方ないで済ませてしまっていいのだろうか本当に。

 俺にできることはどうせない。

 ないから諦めろと?やだね。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る