転生したらレベル1の魔王でした。〜世界を破滅に導く相棒のドラゴンと一緒に異世界征服〜

ふかひれ

1話 金曜日の悪夢

熱い。身体が熱い。焼かれるような感覚に俺は悲鳴を上げながら走った。

道もない、光もない。ただただ暗闇の中で俺はもがいている。まるで炎をまといながら、水に飲まれて溺れているかのようだ。

息が苦しい。


くそっ、出口はどこなんだ……!誰か助けて……




_________


「ねぇ、兄さん。僕達、またいつか会えるかな?」


「きっとな。」


「約束だよ?」


「……あぁ、必ず」




何者かがそう言った瞬間、光が差し込んできた。視界に入ってきたのは見慣れた天井。我が家の、天井だ。


ぼんやりと広がる視界に、風で揺れるカーテンがゆらゆらと影をつくる。


あぁ、夢だ____

そう認識するのに時間はほとんどかからなかった。


俺は金曜日に必ず、悪夢を見る。


また、この夢か。

冷や汗が首元を流れていく。俺が金曜日に悪夢を見るようになってから約2ヶ月。

同じ悪夢を見ることもあれば、全く種類の違う悪夢を見ることもある。

共通点は、どれも火に焼かれているかのような熱さと痛みが伴うこと。

そして、誰かの声が聞こえることだ。


俺は自分を落ち着かせるために肺いっぱいに空気を吸い込んだ。


俺、まだ生きてる。

身体を支える柔らかな布団の感触に安心して肩の力を抜いた。一体、なぜ悪夢を見るようになったんだろうか。ふぁぁ、と大きなあくびをして、俺はまた布団に潜り込もうとした。


……いや、待て。


安堵したのも束の間、布団に潜る前に俺は外が明るいということに気がつく。

差し込んでくる太陽の光がやけに眩しい。


……嘘だろ。


頭から血の気がサーッと引いていった。


「やべ、遅刻だ…」


慌てて上半身を起こし、目覚まし時計を覗き込む。針は8時を指していて、カチカチと一定のリズムで時を刻んでいく。


……どうやらアラームをかけ忘れていたようだ。


俺は乾いた苦笑いを浮かべるほか無かった。

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