俺と委員長

羽月

―1―


誰かを嫌いってはっきり言えるの、別に悪くないと思う。むしろ、そういうことははっきり言えるようになるべきだ。だから俺、正直に言った。


「てめぇ……奏を侮辱するつもりか」


でも、さすがに首を絞められるのは予想外だった。本当に手加減なしで……殺されるかと思ったさ。



そういうわけで、今俺の首にはくっきりと手形が残ってる。それを見て顔を青くした友人達と担任を適当にいなして、昨日何があったかなんて語らない。語るはずがないだろう? 俺は、あの風紀委員長に喧嘩を売ったんだ。……あの、風紀委員長だぞ?間垣弥生――可愛い名前しておきながら凶暴性じゃ他の追随を許さない。いわゆるかっこいい系の、金髪不良。風紀委員が率先して風紀を乱すなよ、と見るたびに思うけど、あいつの恐怖政治は何だかんだで成功してるんだ。それに、噂じゃどこかの族の総長だとか。沸点が低いというのは聞いてたけど、本当、カタギの奴に何するんだよって感じ。でもそれを本人に言ったら、今度は首を絞められるくらいじゃすまないだろうな。


この学園に二年から転入してきた相馬奏は、黒モジャのカツラに瓶底眼鏡の根暗っぽいオタク。その外見に反して口が悪く喧嘩っ早い奴は、よく生徒会や風紀委員の世話になって、親衛隊にも目を付けられたけど見事返り討ちして、何て言うか、溶け込んだ?というか、好かれた? んだよ。崇拝対象である彼らに。で、奴らは相馬を守るために、過剰な態度に出た。……親衛隊を逆制裁したんだ。


ひどいと思わないか? 相馬奏を制裁したのって、親衛隊の中でも一部で、過激な奴らがやったんだ。なのに、生徒会副会長の親衛隊下っ端をしていた俺の友人が、一発とはいえ殴られたんだ。この友人は大人しくて臆病で、絶対制裁なんて暴力を振るうことはできないタイプなのに。翌日痛そうに腫れた頬を見て、俺、キレたんだよな。

だから、風紀委員室に乗り込んだ。友人の頬を殴ったのが風紀委員長の間垣弥生だっていうから、ひどいんじゃないかって言いに行った。それでまあ、売り言葉に買い言葉でつい相馬奏の悪口を言ってしまい、この様なわけだ。……今から思うと、本当に心の底からキレてたんだ。よくそんなことできたなって自分でも思うよ、俺。


――だから、授業中に生徒会室へ呼び出された時。俺の暴言が会長に、多分あの場にいた風紀副委員長辺りから伝わってしまったのだと思い、ちょっと病院送りになる覚悟をしたさ。これも噂なんだけど、我が学園の生徒会長は、これまたどこかの族の総長とかやってるらしい。何で上にいる奴が率先して悪いことしてんのかね、意味わからねえよ。




***




呼び出されて生徒会室へ出向けば、そこには生徒会役員四人と補佐二人、風紀委員五人、相馬奏とその取り巻きの二人、生徒会副会長の親衛隊隊長というカオスなメンバーがいた。


「来たか、川崎保」

「お呼びですか。用は何です?」


もう俺、内心ブルブル。でも喧嘩腰。逃げられないけど怖いんだから、しょうがないだろ。俺は喧嘩なんて強くないし、強気なふりをするしかない。


部屋に入って早々会長と向き合う俺の隣に慌てて駆け寄る親衛隊隊長と風紀副委員長。何だと首をひねっていると、彼は何も悪くないと二人揃って擁護の言葉を発してくれる。


「彼は、私の部下の園山の友人で、園山がいわれのない怪我をしたから、間垣委員長に抗議をしてくださったんです。罪のない部下を守ることのできなかった私が悪いのです」

「それに弥生は、彼と彼の友人に必要以上の暴言を吐いた。だから彼はつい、奏くんの悪口を言ってしまった……。それも帳消しになるほどのことをされているんだ!」


やや強引に肩を引き寄せられ、ぐいと顎を上に上げられる。何するんだと顔を顰めれば、この首を見てくれと全員に告げる。はっと息を呑む音が複数。そりゃあ、驚きもするな。俺だって引いたよ、鏡で見た時。


「こ、れは……」

「昨日、弥生が首を絞めた痕だ。……すまない、俺が止めるのが遅れたから」

「別に、あなたのせいでもないでしょう」

「それ、俺のせいか……?」

「それは違う! 奏」


取り巻きAの言葉に俺はこくりと頷いた。でも、相馬奏はそうは思えないらしい。


「でも弥生は、俺のこと言われてかっときて、それ……」


罪悪感に駆られたのだろう、ごめん、と青い顔を俺に向けた。でも俺にしてみれば、


「あんたのせいじゃないだろう? これは、俺と風紀委員長の問題だ。でも俺は何も間違ったことなんて言ってないから、謝罪しないし、されたくもない」


俺が相馬奏の悪口を言ったことを否定せず、それが正しいと肯定すれば、俺の隣の二人と相馬奏当人以外の奴らが顔を歪ませた。それを見てまた昨日のようにふつふつと怒りが沸く。……こうやって、一人を過保護に守らんがために、いらない犠牲が生まれたんだ。


「相馬奏。お前謝るならさ、園山とかに謝れよ。とばっちりでお前の保護者達に殴られた奴らにさ」


言い切るか言い切らないかで、ぐっと体に圧がかかり、衝撃が走った。ドゴッとかいう鈍い音がする。弥生っ! と叫ぶ声とともに、昨日感じたのと同じような息苦しさ。瞬時に頭が白くなっていくような感覚。


「止めろ弥生!」

「おい、間垣っ!」

「……ちっ」


再度鈍い音がし、ふっと息ができるようになる。噎せ返りながら生理的に出てくる涙を拭っていれば、大丈夫か! 川崎くん! とそればかりを繰り返される。丸まった背を撫でる手は誰のものだろうと考えながら顔を上げる。……また首を絞められたんだ。苦しい。痛い。


暴れる風紀委員長を押さえつけるのは、会長と副委員長と取り巻きB。三人がかりでないと押さえられない狂犬野郎なのかよ、こいつは。多分、俺に圧し掛かって首を絞めて、蹴り落とされたんだろう。腹を庇うような仕草をしている。目が合った。俺は……笑ってやった。


「はっ、この、気違い、やろ……いい気味、だな」


暴力に訴えるしか能がない風紀委員長に屈するわけにはいかない。でなければ、二度も首を絞められた意味がない。



あの後問答無用で保健室に担ぎこまれ、保健医に、これは酷いねえと淡々と言われた。


「息、し辛くないかい」

「……ちょっとだけ」


だろうねと首に湿布を貼られる。冷たさで少しだけ、喉が通った気がする。


「佐藤先生、彼、頭も打ってるんです。診てください」


ここまで連れてきてくれそのまま俺の後ろに陣取っている副会長親衛隊隊長と生徒会書記。どちらかが、ここだと示すように俺の頭に触れる。そっと触れられたのにびりびりと痺れるような痛みが走り息を詰めれば、ごめん、と手はさっと引いた。


「うん、ここか。……こぶになってるね。気持ち悪いとか、目眩がするとか、そういうことはない?」


ないと頭を振れば、良かったねと微笑みを向けられる。


「今のところ大丈夫そうだ。でも、頭を打ってるってことはしばらく様子見しないと。きみ、同室の子と仲良い?」


それなりにと答えれば、理由を話して今日一日寮に一緒にいてもらいなさい、と命じられた。保健室にいちゃ駄目なんですかと問えば、この後病院に行く用事があるのだという。喧嘩で病院に運ばれた生徒がいるらしく、様子見に、だという。


「激しい運動は禁止。くれぐれも安静に。何か少しでも異常があったらすぐ救急車を呼ぶように。わかったね?」


そこまで大げさにしなくてもと渋っていれば、背後の二人が代わりにわかりましたと頷いた。


「……あの」

「川崎くん。君、あの間垣弥生にやられたんですよ?」

「今日は休みなさい。寮まで送ってくれますか、宮越さん。私は同室者の方を。……ああ、同室者の子の名前は?」


しょうがないと思い、教えた。俺の勝手で授業を休まされることになるのは、申し訳ないなと思うけど。




***




寮に半ば抱えるようにして俺を送り届けると、宮越というらしい親衛隊隊長は生徒会室へと足早に戻っていった。気分が悪くなったらすぐに救急車! と念押しをして。


色々疲れた、とソファにうつ伏せで寝ころんでいれば、ばたばたと足音が近付いてきて、扉が激しく音を立てて開いた。


「川崎っ!」


息を切らせて呼ばれ、手をついて体を起こす。痛いからゆっくりと。


「川崎、お前、間垣委員長にこてんぱんにやられたって……!」


大丈夫なのか?! と問う同室者に苦笑を返す。こてんぱんとは、まあ誤解を招くような言葉を使ってくれたことだ。


「平気だ。……ちょっと首を絞められて、頭を床に打っただけ」

「それ、ちょっとじゃねえよ!」


だな。俺も言っててそう思った。


目線を合わせるようにしゃがみこむ西条は、ぺたぺたと湿布を貼られた俺の首を痛々しそうに見て、俺の右手にある保健医に手渡されていた氷の入ったビニール袋を取り上げる。


「頭打ってんだっけ。平気か?」


こぶになってるだけと言えば、ほっとしたように頬を緩めた。


「じゃあまあ……寝てろよ。これ、持っててやるから」


そこまで世話を焼かれるのは何だが、後頭部の氷を自分で支えているのは辛いので、素直に頷いてうつ伏せになった。寝るつもりはなかったのだが……さすがに精神的に疲れていたらしく、しばらくして意識が落ちた。



何かざわざわしてる。重い瞼を上げ身じろぎすれば、あ、起きた、とすぐそばで声がした。


「おはよ、保。平気?」


体を起こせば、右手にビニール袋を持った同級生1の長谷が俺の横の床にぺったりと座り込んでいる。袋の中の氷がまだあまり溶けていないから、中身を代えてくれたのだと思う。


「あー……悪い、ありがと」

「いいよ、別に。起きれる?」


返事の代わりに立ち上がる。頭と首の痛みは大分引いて、一眠りしたためかテンションもやや上がり傾向。平気みたいと笑えば、よかったと微笑みが返った。


「長谷、川崎起こし……ああ、起きたか。大丈夫か?」

「平気」

「あ、起きたんだ。いやあ、お前災難だったな」


西条と一緒にキッチンにいた同級生2である堂内は、エプロンを外しつつ近寄って来る。


「お前さあ……男前すぎ。園山がさ、泣いてたぞ? 後で話聞いてやれよ」


思わず渋面を浮かべれば、友達思いはいいことだけど、と溜息をつかれた。


「あの間垣弥生相手に啖呵切る馬鹿は、お前くらいだろうさ。……まあ、過ぎたことで説教しても仕方ないし、とりあえず飯、食うか」


堂内は口煩いから時々嫌いだ。でも料理は上手いから好き。


「保、全然反省する気ないだろ……」


呆れたような長谷に、俺は小首を傾げてみせる。


「何で反省? だって俺、悪いことしてないし」


それに、もし俺を殺したりしたら間垣は殺人者、そうなったら俺の勝ちだろう。なんて続ければ、縁起が悪すぎると三人から叱られた。冗談だったのに。




***




懐かれたらしい。どうしようか。


「保、醤油取ってくれるか?」

「……」


無言で渡せば、それを気にした様子もなくサンキュと言う。よくわからないよな、相馬奏。取り巻きA・B連れて俺のところまで何しに来ちゃってんの? 一回ちゃんと口にしないとわからないのかな。……俺はお前が嫌いなんだって。


普段なら相馬奏のそばに近付いた奴をことごとく威嚇しているABが、今は何故か黙ってる。いつもみたいに俺を遠ざければいいのに。逆制裁のせいで、相馬奏に対する親衛隊のいじめはもう起こることはないだろうけど、個々人で目の敵にするって可能性はあるだろ。俺なんて、一番危ないタイプじゃないか。忠犬の癖して危険人物を近付かせるなんて駄目だろう。そばに侍ってる意味がないだろうが。


悶々と考えていれば、ABの片方がぽつりと口をきいた。


「……昨日は、大変だった、な」


確か、俺を絞め殺そうとした風紀委員長を取り押さえた方だ。ということは、Bか。


「ああ、もう少しで殺されるところでした。止めてくれてありがとうございます」


礼でも言えばいいのだろうと心を込めずに言えば、三人共にぴくりと反応する。ちらりと視線を交わし、ええと、と言葉を探す相馬奏。


「その、保」


ほぼ初対面で、名前を名乗り合ってもいないのに。いきなり人をファーストネームで呼ぶこいつは馴れ馴れしい。やっぱり、不興覚悟で一度しっかり言わないと駄目か。


「俺のせいで、ご」

「名前で呼ばないでもらいたい」


言葉を遮り言う。ぽかんと開いた口から興味なく目を逸らして、


「馴れ合うつもりはないんで。それに、昨日も言いました。謝罪をする気も、受ける気もない。……逆制裁で関係ない者が殴られた罪悪感をどうにかしたいなら、その辺歩いてる生徒を捕まえて片っ端から謝ってみればいいと思いますけど」


本当、馬鹿らしい。何で俺がこんな奴と、ほんの少しの間でも会話をしたりしなければならないのか。


このままここにいれば、じきに生徒会や風紀も姿を現すことだろう。明日から購買に行こうと嘆息しながら席を立って食器を返し、教室へと戻る。帰り際に一回だけ三人を振り返れば、相馬奏だけでなく取り巻きA・Bも硬直していた。本当、役立たない忠犬だよな。



一応念のために保健室に行き、もう大丈夫だと太鼓判を押してもらった。首の湿布は包帯に代わった。湿布も目立ったけど、包帯とか何事! って感じだよ。でもまあ、公開するのもアレだし、仕方ない。


帰りが遅いと心配したのだろう、園山から電話がかかってきた。食堂を出てそのまま保健室に寄ってたんだと理由を言えば、ほっと息をついていた。気を付けて早く帰ってきてね、大丈夫わかってる、と会話をして電話を切る。それを見計らったように背後から、


「川崎くん!」


名前を呼ばれ振り返る。ぱたぱたとこちらに走り寄る、生徒会書記の姿。


「保健室から出てくるのが見えましたから……大丈夫ですか?」


包帯を巻かれた俺の首を痛ましげに見て、心配げに問うてくる。頷いて歩き出せば、当然のように隣に並ぶ。


「よかった。もう、間垣委員長はあなたには近付けさせませんから。安心なさってくださいね」


私達が守ります、と言われてもね。俺は誰に守られるつもりもない。


「その私達が誰のことだか知りませんが、俺は俺なりの主張をして、間垣委員長は間垣委員長なりの主張をした。その結果がこれで、まあ正直おつりがくるかななんて思いますけど」


主張と主張のぶつかり合いの結果なら、本人達以外の誰も、それを判断することはできないでしょう。そう言えば、呆けられた。うん、わかりにくかったな。


「はっきり言えば、俺には守られる必要なんてないということです。平気ですよ、今度は首を絞められないように注意しますから」


足を止めてしまった親衛隊隊長を置いて、俺はクラスへと戻った。昨日の今日だ、心配して構ってくれるクラスメイト達も、もう数日経てば落ち着きを取り戻すだろう。




***




 あれから三日間、生徒会も風紀委員も相馬奏も親衛隊も全く俺に寄ってこなかった。よかったよかったと安心していたのに、何でかな。いたずらな風にプリントを飛ばされて追いかけた先に偶然、よりによって間垣弥生がいるとか。え?死亡フラグ立った?


 ……確実にフラグ立ってた。もう本当、この人首絞めるの好きだよな!




***




目を開ければ、泣きそうな顔した相馬奏がまず目に入った。


「よ、よかった……」


ついで、ほっとしたような副会長と、宮越だっけ……副会長親衛隊隊長の顔。


「……ここどこ?」


訊いた声が掠れている。ああそうだ、首を絞められたんだ。死ななかったのか、俺。


「風紀委員室だ。大丈夫か?」


首に手をやれば湿布の感触。また貼られたよ。酷くなってるんだろうな、痕。こほっと咳をして体を起こせば、生徒会室よりも狭いこの部屋の中に、まあ随分と人が集まっていらっしゃる。生徒会長と会計、書記、風紀委員長と副委員長以外は、まあ前回と同じような顔触れだ。生徒会書記の親衛隊隊長というのが、一人だけ増えているけど。


「弥生が……運んできたんだ。もう、何考えてるんだよ! あいつ!」


そんなこと俺に訊かれましても。首を絞めてブラックアウトさせた相手を自分の根城に運んでくるなんて、本当、何考えてるんだろうか。喉が痛い。


「水、飲んで」


取り巻きAが水をくれる。散漫になった思考をまとめながら、大人しくそれを飲んでいた。誰も喋らない。俺が口をきかないせいか、それとも。


何とはなしに視線を上げると同時、がらりと扉が開いた。


「川崎は」

「起きた」


短い言葉のやりとりとともに、会長がまず入る。続いて会計、書記。そして、風紀委員長と副委員長。知らず、体が後ろに引いた。


「平気だ。俺達がいる」


俺を庇うように横に立ち上がる二人は、あれお前ら、相馬奏の取り巻きだろうが。


「会長。それで、そいつはどうして川崎くんを襲ったんだ」


どうも、別室で委員長の取り調べをしていたらしい。ゆっくりと立ち上がりながら訊く副会長。会長はその視線を受け、疲れたように首を横に振る。


「埒が明かない。こいつが言うには……絞めたくなったから、だと」


絞めたい首って一体どんなだ。


「川崎は今回、何もしていない。それはこいつも言っている。ただ、見た瞬間に首を絞めたくなったんだ、と」


その言葉にぞっとする。それじゃ、何か。目に入っただけで殺したいと思うほど、俺は間垣弥生に敵視されたと?


「ざ、けんなよ……俺、そんな、殺されるほどのこと、あんたにしてなんて……」


さすがに声が震える。勇気を振り絞って睨む俺に、間垣弥生は一歩近付く。室内の全員が、その動きを警戒して構える。


「違う。殺す気などない」


低い低い声。こんな場面でなければ耳に心地良いだろうそれが、今は脅しにしか聞こえない。必死で睨み上げ、近寄るな、動くなよと念じていれば、周囲の警戒もあるのだろう。間垣弥生はそれ以上足を踏み出すことなく、けれど俺から視線を外すこともなく、ゆっくりと言い聞かせるように口を開く。


「……わからない。ただ、絞めたくなった。殺す気だけは、ない。もう怒ってもいない」


頼りなさげに揺れる瞳が、答えを求めるように俺を見る。俺にわかるわけないだろ!


「首は、締めないから……触れてもいいか」


ぶんぶんと激しく首を振る俺以外の奴らが、おかしな状況に顔を見合わせる。


「ええ、と、弥生?」


代表としてだろう、相馬奏が口を開く。


「もしかしてお前……惚れたの?」


それはない! 絶対ありえない!


……でも、内心でこれ以上ないくらい拒否る俺とは反対に、間垣弥生は少し考え込んで、そうかもな? と疑問形に首を傾げた。


気の迷いだって、委員長!




***




それから、俺の受難の日々が始まった。


怖いのに近寄ってくる委員長と、微妙な感じに見守ってくれる奴ら。逃げる俺。


そして結局、間垣弥生は、やっぱり時々俺の首を絞める。いつか殺されるんじゃないだろうか、俺。

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