31.お肉ぅぅ!
お久しぶりです。
少しの間不定期更新になりますが、少しずつ慣らして行こうと思います。
――ドカァァァァァン!!
「はぁはぁ、強すぎ……」
敵を倒して、ようやく休むことが出来ると思ったら、いつの間にか腰は地面についていた。
戦っていたのは僕の4倍ほどあるデカさを持った緑の巨躯の人形の化け物。
その名前は《デミオーク》。
名前のデミは半分という意味で、その名前の通り片親がオークではない個体から生まれたハイブリットのオークだ。
オークは『知識』の中にあったものとだいたい変わらない性質をしていて、少し特徴を上げるとしたらオークが繁殖すると確率でデミオークが生まれること。
そしてこのデミオークが厄介極まりない。
普通のオークとの違いデミオークはオークの能力ともう片方の親の能力、どちらも持って生まれてくる。
馬との間にできたデミオークはきっと《疾走》とかのスキルを持って生まれてくる。
しかもそれに加えてオークが嫌われている理由は、外見まで似ていることだ。
(肌が白くて女っぽいオークを見つけたら教えてくれってそういえばお母さんが言ってたな。)
まぁ、その頃には意味も分かっていたのでその日の夜は布団の中で震えていた。
誰かが連れ去られるかもという理由ではなく、もしも僕が連れ去られた時にされることがわかったからだ。
そう。
―この世界にはオークは雌雄どちらも存在する。
オス同様に脂肪のような筋肉の塊がこちらに迫ってくるんだ……流石にどんなに童貞をこじらせたオタクでもあの外見は無理だと思う。
いたとしたら僕は……関わりたくないな。
どうやらオークたちはあくまで生殖が目的で、生殖機能が無い子供は対象外らしいというのは最近知ったことだ。
閑話休題
話を戻すと、どうやら今回出てきた《デミオーク》はそもそもが巨大なオークよりもさらに大きな種族の血を引いていたみたいだ。
肌の色が茶色くなっているくらいで、もう片方の種族の特定はできない。
けどどうやらかなり強い種族のようで、いつもよりも倒すのに時間がかかった。
かなりの激戦で、僕のモンスターもきつそうだ。
僕以外のスライムもギャングウルフも溶けていたり、ぐったりと荒い息を吐きながら肢体を地面に投げ出していたりする。
少し大げさに表現をすれば死屍累々だな。
一つ除いて、死んでないけど。
さて、その除いた一つもぽんと何かに変わった。
それは――
「お肉だぁあああ!」
僕はいの一番に叫びながらお肉に駆け寄った。
ここ最近、このお肉のために何度も《デミオーク》の戦っていたんだ。(違います)
僕の叫びを聞き、よだれを垂らしながらやってきた《ウルフギャング》たちがお肉に触れないようにしながら、アイテムバッグにお肉を詰めていく。
このアイテムバッグはあの魔女みたいな錬金術みたいに釜を回していたマリーさんに作ってもらった。
このアイテムバッグはゲームとかでよくあるアイテムボックスみたいな、何十種類のものを1種類99個まで入るような不思議なバッグだ。
いつも多かったダンジョンの戦利品が、これから鍛えるようになるともっと増えることが分かっていたので、作って貰った。
そして、スライムリーダーに費やしたお金も合わせれば、今まで稼いできたお金と今までの貯金もすべて持っていかれた。
ま、まぁ。
これだけ便利ならそれくらいの価値はあると思うけどね。
そう、全然損はしていない。
そんな苦労があって手に入れたアイテムボックスは、肩掛けポーチのような見た目をしている。
元は塗装もしていない革の茶色だったのでこの前、緑に染色した。
若草色とかいう《隠遁》に使えそうな色を使った。
所々残してある茶色がいい感じにアクセントになっていてお洒落になった。
ちなみに染色はアリスがやった。
僕の芸術センスは終わっているので、頼んでやってもらった。
僕なら元の茶色を残すだなんて発想はそもそも出なかったと思う。
もしも僕が塗装をしたら、すべて若草色の違和感ありまくりのダッサイポーチが出来上がっていたことだろう。
そうして"ボール"と並ぶほどのチート。
『知識』の中にある物理法則に反する道具、"アイテムバッグ"を手に入れたことでさらに早く探索できるようになった。
その速さを活かしてどんどんとあの森のダンジョンを攻略していくうちにいわゆる中ボス。
《デミオーク》が出てきたわけだ。
多分ちょうど十階層目だったと思うので、僕の『知識』と同じく
"ダンジョンの区切りのいい階層で中ボスが出てくる"
という事実は間違っていないようだ。
このダンジョンは十階層ずつなのでかなり強めの中ボスが長期のスパンで来る感じかな?
五階層ずつならもう少し弱めの中ボスが短期のスパンで出てくるけど。
ちなみに中ボスがいないダンジョンもある。
だけど、それはダンジョンの主と言われる最下層にいる、いわゆるラスボスがめちゃんこ強い。
まぁ、そんなことは置いておいて。
「肉だぁー!」
僕は一度ダンジョンから戻り、肉を食べることにした。
そうして今はドーチェさんの手によって最高の調理をされているはずの肉を待っていた。
何故ドーチェさんが調理をするようになったのかというと。
帰ってきたときに、僕から話を聞いたドーチェさんの魔の手により肉が攫われてしまい。
「最高の出来にしますから、ちょっとだけ分けてくださいね」
との言葉で僕は自分で調理することと、少しの肉を諦めた。
僕とそれと同じくよだれを垂らしながらお肉を待っている《デルモル》《ギャングウルフ》たちとは別に、スライムたちはすでに《デミオーク》のお肉以外の素材を体内で溶かしている。
通常一つしかドロップしない普通のモンスターと違い、中ボスラスボスは一台倒しただけでかなりの量の素材を落とすのだ。
そんな光景を眺めていると、奥の方から食欲を刺激する香ばしい香りが漂ってきた。
「グルルル」
《ギャングウルフ》は興奮しているのか威嚇のような声を出し、デルモルはテーブルの上で踊り始めた。
……踊り始めた?
「はーい。もうできましたよー。全部のお肉がデミオークのお肉ですからね、野菜も美味しく食べてくださいね。」
僕はあんたの子どもかッ! と言いたくなるようなセリフを言いながら出てきたドーチェさんのお盆には生姜焼き、チャーシュー、チャーハン、ラーメン……
……
…………
………………
……ハッ!
何だこれは…………香ばしい肉の香りに、何も乗っていないきれいな皿だ。
……一体何が?
なぜだか、とてつもなく幸福な夢を見ていた気がする。
なんだか機嫌が良さそうに見えるドーチェさん筆頭にメイドさんたち、加えてうちのモンスターになんとなく疑問を抱きながらも、僕はダンジョンに向かう。
「〜♪」
なんとなく鼻歌を歌いながら。
そして十階層にやってきた時。
そこにはうさ耳をはやした《デミオーク》がいた。
「狩れぇぇぇえええ!!」
僕の号令とともに、沢山の魔法が飛んだ。
モンスターが飛んで行った。
魔法が《デミオーク》を襲い。
《デルモル》の土魔法で作った錐形の土が《デミオーク》の体に穴を開け。
飛んでいった《アタックスライム》特化型の《スライムレーダー》が大打撃を与え。
止めに動きの鈍った《デミオーク》に《ウルフギャング》のリーダーのヴォルフが跳躍。
最大の武器である爪に自身の毛の色と同じ、闇のような魔力を纏わせて
――――
……。
《デミオーク》の首がころころと転がる中、一瞬の静寂の後にうちのモンスターたちが雄叫びを上げた。
「よっしゃぁぁ!」
僕も雄叫びを上げて、
アイテムボックスを取り出し、
いつの間にかドーチェさんが目の前にいた。
その後、なんとなく苦笑いしている気がするドーチェさんの手によって、とても美味しくなった《デミオーク》のお肉。
どうしてか
とても美味しかった。
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