第42話 そして『ゼロ』から始める逆転劇! いざ摩天楼へ!

『話はまとまりましたね。では、三年の間に私たちを説得してみてください。八番、子供たち』


 ふっと一番様が消える。


『ふ……せいぜいいるがいい。自らの選択をな!』


 三番様が消え。


『後からくるくるみんなのKadaiカダイ! こなさなきゃいつかダイ! WinウィンWinウィンWinウィンチャンのセイで、みんなノ~WinウィンWinウィン!』


 ぐ、いちいちカンにさわるけど。


 あとから、それぞれの【星獣】様からの試練がくるってことみたい。


『会える日を楽しみにしてるYo! 死にたくなきゃ見つけ出せYo! Yeahイェー!』


 七番のイクトミ様が消えると。


 次々と動く絵が消えていった。


 残ったのは――。


「さて、やっかいな者に目をつけられてしまいましたね」


「はい……」


 けど一番やっかいなのは三番のドラゴンだろうね。


 あの方を説得するのは簡単じゃないぞ。


「対策はのちほど考えるといたしましょう」


 〈プテ・サン・ウィン〉様は深いため息をついた。


 ご心労のほどお察しします。


「ところで、九番。あなたはもどらないのですか?」


『いや、その少年がもっているワシの星霊銃ピースメーカーが気になってな』


「ワシのって、まさかあなたが星霊銃ピースメーカーを?」


『いかにも、ワシは〈フォールンスター〉と呼ばれている』


 こんなところで星霊銃ピースメーカーのガンスミス様に出会えるなんて光栄だ。


『ふむ、よく手入れされている。すばらしい、いい腕しておる』


「あ、ありがとうございます」


『どうじゃろう? 今後のこともある一度ワシの下に来んか?』


「え? ですが……」


「そうですね。その方がいいでしょう。私はその間に策を練っておきます」


「そ、そんな! 〈プテ・サン・ウィン〉様だけに負担をかけるなんて」


 ウィンの言うことも最もだ。


「いいのですよ。しかし……」


「しかし?」


「おそらく今後、あなた達を看守ジェイラーたちがジャマ立てしてくるでしょう」


看守ジェイラー?」


「はい、かの者はさきほど話した五人の魔族のうちの四人――そして四つの大陸の監視者です」


 四つの大陸?


 あぁ、そっかさっき三番が言っていたのはそういうことだったんだ。


 でも四つ?


「〈プテ・サン・ウィン〉様。霧の向こうには大陸が四つあるのですか?」


「そうですよ。知らないのは無理ありません。意図的にふせられていたのですから」


 なんてことだ。


 大陸が、このナエスタ大陸だけじゃないなんて。


「じゃあ、この世界にはもっとたくさんの人が?」


「ええ、およそ一億二千万います」


「ひぇぇぇぇ! そんな数聞いたことないよ!?」


 ウィンもおどろくのも無理ない。


 正直自分もびっくりしてるんだから。


「リリー、こちらへ」


「え!? は、はい」


 なぜか、話の真っただ中でリリー姉さんが〈プテ・サン・ウィン〉様によばれた。


「あなたに我がしもべ、雷鳥【ワキンヤン】の結びを授けます。これで彼はあなたのきっと呼びかけに答えてくれるでしょう」


「ほ、ほんとうですか! ありがとうございます」


「安心してください。彼はあなたのことをそんなにきらってはいません。ただ急に話しかけられてびっくりしただけみたいですから、ふふ」


 なんのことだかさっぱりだけど。


 とりあえずよかったってことかな。


「あの~〈プテ・サン・ウィン〉様よぉ~、さっきの【魔族】のジャマが入るってどういうこった?」


「ああ、そうでしたね。それを話さなきゃいけませんね」


 〈プテ・サン・ウィン〉様はゴホンとせきばらいを一つ。


「正直、私もあの者らの動向、意図ははかりかねます。ただ一つ言えるのは、あの者らは変化を好まない」


「はぁ……」


「なので、罪からのがれようとするものを必ずさまたげるべく動くのです。なので気を付けてください、あの者らの強さは〈古き偉大なる獣〉より何倍も上です」


「〈グランド・モンスター〉よりも」


「上……」


 なんてことだ。


 やっとの思いでたおした〈グランドモンスター〉よりも強い存在なんて。


「そして人間より知識があり、ずるがしこい。十分留意するように」


 とは言われても。


 そんなのどうやって立ち向かえばいいんだ。


 気をつけようがないんじゃ……。


『あとはワシからじゃな』


 今度は〈フォールンスター〉様が、僕らの前に、そしたら――。


「なんだ! いきなりオレの銃剣がかがやきはじめたぞ!?」


「ア、アタシのも!」


「僕のもだ!」


 三つの星霊銃ピースメーカーが虹色の光をはなったんだ!


『力を解放してやったぞ、各々の特性に合わせた仕様になっておるから、能力はそれぞれ異なっているがな』


 なんと【追加効果】が読み取れるようになった!


『さて、ワシは摩天楼まてんろう【サードニクスヘヴン】にいる。会える日を楽しみ待っておるぞ、子供たちよ』



 そう言い残して、〈フォールンスター〉様は消えた。


 うん、たしかにこの力なら〈グランドモンスター〉を簡単にたおせるかもしれない。


 そして【魔族】にも……。


「それにしても【サードニクスヘヴン】か……」


「たしか【サードニクスヘヴン】ってこの大陸の経済の中心地だったわよね。フィルくん」


「そうです。大都会です」


「へぇ~……どうやって行くの?」


「うん、この大陸を横断するすべての列車は、一度【サードニクスヘヴン】に帰るから」


 ナエスタ大陸横断鉄道の運行表には【サードニクスヘブン】が必ずあるんだ。


 なんで知っているかって?


 そりゃ田舎から出てくるとき乗ったことがあったからだよ。


「そうか! 列車で行けばいいのか!」


「そういうこと」


 にしても【サードニクスヘブン】か……。


「さて、最後にいつでも私と連絡がとれるようにいたしましょう」


「え? どうやって?」


「簡単です。キキ? こちらへいらっしゃい」


「クーン! クーン!」


 トコトコと〈プテ・サン・ウィン〉様の下へと近寄っていたキキ。


 すると首がいきなり光りだしたんだ。


「はい、この首輪でこの子の目を通して、私はあなたたちの動向を知ることができます」


 いつのまにかキキの首には白い宝石のついた首輪が。


『「そしてこのように話すこともできます」』


「わっ! 宝石が光って、中から〈プテ・サン・ウィン〉様の声が!?」


「す、すげぇ……」


「こ、これが【古のわざ】……」


 もうすごすぎて何にがなんだか……。


 あとでもう一度状況を整理しなくちゃいけないなぁ、こりゃ。


「さぁ! お行きなさい! 〈フォールンスター〉の待つ【サードニクスヘヴン】へ」





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


次回! 「魔族が選んだあの男がついに本格『始動』! この恨み! 全部、ヤツにぶつけてやる!」

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