第三章 『星獣』との出会い! たどり着く彼女を『救』うたった一つの方法! そして【新天地】へ! 

第39話 精霊の導きの終着点! 伝説の『星獣』の下へ!

――サンストーンキャニオン アベンチュリントレイル――



 水浴びを終えて、ほぼ黒髪にもどったリリーさんの案内で、僕らは精霊のほこらへ。


「うげ! リリー姉ぇ……ほんとにここ降りていくの?」


「そうよ。だいじょうぶ、ゆるやかなところを選んだから」


「ゆるやかって、ほとんど『ガケ』じゃねぇか」


「ホロロ……」


「はは、曲がりくねってはいるけど、降りられるような道があるからなんとかなるんじゃない?」


 キキもなんだかこわがっている。


 そんなにこわいかなぁ。


「フィル? お前……強くなったなぁ」


「そ、そうかな? それにしてもすごくいい景色だね!」


「うん、たしかに景色いいけど、でもフィル? これから谷底に降りなきゃならないんだよ?」


「そうだね。それも少し楽しみだ」


「やっぱり、強くなったよ。フィル……」


 ウィンにまでそんなこと言われた。


 そうなのかなぁ~。


 とにかく僕らは谷底へと降りていく。


 DAP DAP DAP――。


「レヴィン兄、エハウィー叔母さん、いい人だったね」


「ああ、そうだな。オレたちを実のおい、めいみたいに接してくれていたな」


「あたりまえでしょ? もうはじめっから『おい』、『めい』なんだから。もちろんフィルくんも」


「あ、ありがとう、リリー姉さん。それにしてもよかったですね、髪もどって」


「ありがとう、でもまだちょっと灰色っぽいかな」


 たしかにちょっと灰色がかっている。


 いうならかなり黒に近い灰色?


「うーん、アタシは前の方がよかったなぁ~」


「オレはどんな髪色でも似あっていると思うぜ」


「クンクーン!」


「はいはい、ありがと、そんなことより早くいきましょ。日が暮れちゃうわ」





 こうして降りること30分。


「みんなちょっと止まってくれる?」


 なぜかリリー姉さんはせまい谷の前まで来たところで急に立ち止まったんだ。


「どうしたの? リリー姉ぇ」


「うん、このきれいな砂岩のさけ目の先は、ほんとうに聖地なの」


 と言うことはつまり。


「こんなせまいところを入っていくんですか?」


「そう、だから入る前に儀式をしなきゃいけないからちょっと待っていて」


 人ひとり、やっと通れるぐらいのさけ目だけど、でも――。


「そうなんだぁ。なんかきれいなところだね。フィル!」


「うん、一筋の光だけが照らしていて、なんとも……」


 KLICK! KLICK!


 景色に見とれていたらなんか、後ろからカチカチと音が。


 なにやらリリーさんが火打ち石をたたいている。


「リリー……それ、もしかしてタバコか?」


「ちがうわよ。レヴィン、これはフィジカルハーブっていう薬草を乾燥させたもの、害はない」


「吸うのか?」


「吸わないわよ! 火をいれて、舞いをささげるの!」


 アニキ……なにをそんなに不安がっているんだ?


「よし、できた。ちょっとみんなはなれていてくれる」


 リリー姉さんは火を入れた【聖なるパイプ】を円を描くようにふりまわしておどる。


「なんか不思議な感じだね……神聖っていうか」


「うん、同じこと思った」


 そしてケムリがあたりに立ちこめていったところで。


 今度はひざまずいて、いのりをささげたんだ。


「はい、これでOK。いくわよ」


「もう終わり?」


「意外とあっさりしているんだね」


「失礼ね。ちゃんとした儀式よ。ほらさっさと行く」


 とりあえずリリー姉さんに背中をおされるようにして、岩のさけ目の中へ。


「リリー、タバコだけはやめろよ」


 なんだろう? 急に。


 まだ中ほどっていうところで、アニキが変なこと言い出してる。


「ど、どうしたのよ? レヴィン、いきなり」


「だってよ……お腹の、その、子供によくないんだろ?」


「……は?」


「ク~ン?」


 おいおい。


 いつの間に?


 そんな様子なかったけど。


「う、うそ、まさか! リリー姉ぇっ! 赤ちゃんが!?」


「んなわけないでしょ!! バカレヴィン! あんたねぇ!!」


 顔を真っ赤にしたリリー姉さんが【聖なるパイプ】をふりあげた!


 そのパイプ、そんな風に使っていいのかな……。


「誤解のまねくような言い方すんじゃないわよ!」


「悪りぃ! 悪かったって!」


 まったくアニキは……。


 さっき不安がっていたのはコレか。


「なぁんだ。赤ちゃんできたわけじゃなかったのかぁ~」


「まぁ、さすがに僕は早すぎるとは思ったけど」


「当たり前でしょ! まったくレヴィンは……」


「けどよ~」


「心配しなくてもタバコなんて吸わないわよ。もう……」


 ん?


「ということは、リリー姉さん、アニキと赤ちゃんつくるのはイヤなわけじゃないんですね?」


 …………あれ?


 また変なこといっちゃったかな……?


 それになんだか急に寒気が……。


 リリー姉さんがものすんごい笑顔をふりまいてくるんだけど?


「フィ~ル~く~ん?」


 や、やばい。


 だめだ、逃げ場がない。




 ――GONK!!




 ――イテテ。


 ゲンコツだけで済んだのはよかった。


「でも、ちょっと残念」


「何がよ」


「リリー姉ぇたちに赤ちゃんできら、ものすごくかわいかったろうなぁって」


「ちょ、ちょっとウィン!?」


「ご、ごめん。でもさ、見て見たいなぁって」


「……ウィン、あなた」


 ウィンがまたナーバスになっているって、僕もわかったよ。


 これだけ付き合いが長くなればさすがにね。


「ウィン――」


「ホロロ……」


「そんな心配するなって! そのうち見せてやるからよ!」


「ちょ……ハァ……まぁ、そうね。そのうちね」


「うん、ありがと」


 少し立ち直ったみたい。


 家族のなせるワザか。


 ちょっとやける。


 一筋の光をたよりに進むこと、10分――。


『来ましたね。運命にあらがいし子供たち』


 息をのんだ。


 【星獣】と聞いてはいたけど、こんなにも大きい存在だったんなんて――。


『私の名は〈プテ・サン・ウィン〉。この星で【陪審員ジュアリー】といわれる者の一人です』


 自分ら待っていたのは、巨大な白いバッファローだったんだ。





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


次回! 「語り継がれた伝説の『真実』! 集結する十二の怒れる陪審員たち!」

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