第15話 二日酔いといえば、やっぱり『プレイリー・オイスター』‼︎

――鉱山の町トパゾタウン アンドラ坑道マイン前――


 あれからエリオットたちがどうなったかっていうと。


平原の災厄娘カラミティー・ジェーン】に情けをかけられ、命まではとられなかったそうな。


 本来なら賞金稼ぎバウンティ―ハンターの資格取り消しもののさわぎだったらしい。


 けど、今までの功績から協会の恩情があったそう。


 なんでもC級までの格下げで終わったんだとか。


 え!? 説明が生々しかったって!?


 そりゃあ、トパゾタウンの酒場のマスターと、ルチルタウンのマスターは旧知の仲だそうで。


 だから聞いてもないのに色々教えてくれたよ。ほんと。


 ただ、気になるのは。


 その【平原の災厄娘カラミティー・ジェーン】っていったいどんな人なんだろう?


 あのエリオットに勝ったぐらいだから、きっと筋肉ムキムキでたくましい女性なのかも。


「さて! 〈グリード・ウォーム〉討伐に向かって! れっつごぉー! って言いたいところだけど……レヴィン兄、ほんとだいじょうぶ?」


「まったく、だからの飲みすぎないでっていつも言ってるのに」


「た、たのむから、話しかけんな。あ、あたま痛ぇ……」


 ああ……今、アンドラ坑道の手前にいるんだけど。


 あの後うかれて連日連夜飲み歩いたアニキはこの通りグロッキーでさ。


 立往生中。


「はい、アニキ。これでいいんだよね? つーかほんとにこれ飲むの?」


 コップに生卵の黄身だけをいれてアニキにわたす。


 あと調味料も。 


「さ、さんきゅ……ああ、プレーリーオイスター、こいつが一番、二日酔いにきくんだよ」


 アニキは、ウィスターソース、トマトケチャップ、この間の〈ポン・ズー〉のビネガー、コショウを人さじずつ入れていく。


 それを鼻をつまんで一気に――。


「……ゲフっ」


「毎回思うけど、ほんとキモチワルイ飲み方」


「レヴィン兄……ほんとキモ、よくそんなの飲めるね」


 うん、自分も飲みたくない。


「ほっとけ、つーか親父もこうしてたじゃねか! よし大分マシになった。んじゃいくか」





――トパゾタウン アンドラ坑道内部――


「くらぁい……」


「うん、ランプの明かりだけがたよりだね。消えないように気をつけなきゃ」


「気ぃぬくなよ。後ろはオレが見ておくから、安心して、前に進め」


「それが一番安心できないわ」


「クーンクーン!」


「いやなにおいがしたら、〈キキ〉がすぐ知らせるって」


「なら、安心ね」


「……ひでぇ」


 どんどん内部へ進んでいく。


 幸運なことに、ほかのモンスターとまったく出くわさない。


「ねぇフィル? まったくモンスターがいないよ? どうしてだろう? なんか変な感じ。〈グリードウォーム〉しかいないのかな?」


「うん、そうだね。フツーほかにも住み着いていそうなものだけど」


「みんな食われてちまったんじゃねぇ?」


「ありえない話じゃないわね」


 みんなの空気がピリピリと張りつめ始める。


 だとしたら、かなり成長しているはずだからね。




 入って約20分――。


「ここが出たっていう例の場所」


「中に進んだすこし開けた場所。うん、多分ここだね」


「リリー、天井がくずれるかもしれねぇから、あんまり強ぇ精霊術つかうなよ」


「わかってるわよ。そもそもここじゃそんなに強いのはつかえないわ」


「地形とかが大きく作用しますもんね」


 精霊術をかじったから、自分もそれくらいのことはわかる。


「うん、そう。精霊術は銃より射程が長く、パワーもある、それに範囲も広く必中、その代わり発動するまで時間がかかるのと、そこに住む精霊からしか力を借りれないもの」


「ようは土とか岩とかの術しか使えねぇってこと?」


「そういうこと」



 それから辺りを警戒すること5分。


 いつまでたっても〈グリードウォーム〉は現れない。


「なかなか出てこないね」


「そうだね。でもそういう時こそあぶないんだよ」


 うん、長年のジンクス。


「つーか、ここら辺のモンスターを全部食っちまって、うえて死んじまったんじゃねぇか?」


「バカ、そんな都合のいい話があるわけないでしょ?」


 同感。


「リリー姉ぇ、やっぱり……アレやっておいたほうがよくない? 出てこないうちに」


「イヤよ。絶対にイヤ」


 ん? 何の話だろう?


 リリーさん、ほんとめずらしくすんごくイヤそうな顔している。


「……ハァ……そういうと思った。でもさ、しておいた方が成功の確率上がるじゃん?」


「う……そ、そうだとしてもイヤよ!」


「なに、ハズカシがってんだよ。別にいいじゃねぇか」


「ハズカシイわよ! ハズカシイからイヤなのよ!」


「……ねぇ、ちょっと待って、みんないったい何の話しているの?」


「えっと、実はリリー姉ぇの【烙印スティグマ】のことなんだけ――」


 DODODODODODODODODODODO――!!


 気がゆるんだところに、ふいうち!


 地面、天井、空気、全部がゆれる!


「ワンワン!」


「来るよ! みんなかまえて! リリーさんは精霊術の準備を!? 三人で出てきたところをやるよ」


「分かったわ!」


「オッケー!」


「まかせろ!」


 リリーさんを囲んで、三方向から備えた。


 話からして〈グリードウォーム〉のフツーの弾じゃ、キズ一つつかないほどカタイ。


 なので石の精霊が宿る〈徹甲弾アーマー・ショット〉を用意しておいた。


 それもかなりの数をね。


 ―――GOOOOOOOH!!


 WOOOOOOOOOOOOOOAAAAAAHH!!


「行くよ!」


「うん!」


「おう!」


「ええ!」


 出てきたのと同時に、撃ちまくった!





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


次回! 「僕が彼女を『救』いたい理由」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る