第10話 鉱山の町はグランドモンスターを討伐できる人を『求』めてます!

 ジェードロッジを発って早3日。


 僕らは精霊の導き通り、トパゾタウンへ訪れた。


「ようやく着いたぁ! ここまで長かったぜぇ、これでウィンのマズイ飯としばらくおさらばだな」


「マズくて悪かったね!」


「そうかな。全部すごくおいしかったと思うけど?」


「……ここ三日でよくわかったぜ、フィル、お前の舌、バカになってるぞ?」


「ひどい言われようだね。それをいうならアニキの方が肥えすぎなんだよ」


「いやいや、あんな酸っぱくもねぇ、苦くもねぇ、痛てぇ料理を、うまそうに食うやつ初めて見たぞ?」


「う~ん、そうかなぁ? そんなことないと思うけど?」


「クィーン! クィーン!」


「ほら、キキもそうだって」


 レヴィンのアニキが言っていること、何一つわからないんだけど?


 どういうことなんだろう?


「ウィン、フィルのこと手放しちゃだめよ」


「わかってる」


 なんだ。さ、寒気かな?


 なんだか急に背中がぞわっと。


「と、とにかくさ、酒場に行ってみようよ!」


 うん! こ、ここはさっさと話題を変えておこう!


「例の〈古き偉大なる獣〉、多分あれって〈グランドモンスター〉のことを言うんだと思うんだ。なにか情報があるかもしれないよ?」


 グランドモンスターっていうのはいわば、遺跡なんかにいる〈主〉を超える強力なモンスターで、いつ現れるかもわからない。


 いままで何人もの賞金稼ぎバウンティ―ハンターを返り討ちにしてきた。


 そりゃぁもう、バカ高い賞金がかけられているさ。


 討伐すればとんでもない名声を手に入る。


「ねぇフィル、この町なんなんだろう? カンカンうるさいし、なんかそれに変なにおいするし、岩に囲まれているし……」


「自分も来るのははじめてだけど、ここは鉱山の町で『サーマメタル』が採れるんだ。変なにおいは多分精錬せいれんのにおいだと思う」


「へぇ~そうなんだぁ。ほんとフィルっていろんなこと知っているよね」


「いやぁ~まぁ……ね」


 前のチームでいろいろあったからそのせいなんだけど……ね。


「でも前々から不思議に思っていたけど、なんで酒場で依頼クエストの掲示板が貼ってあるんだろうね?」


「それはたしか酒場サルーン組合が、賞金稼ぎバウンティーハンター協会の窓口を引き受けているって話だよ」


「へぇ……」


 よし! 気を取り直して、酒場に入ると鉱夫でいっぱい。


 ただ、みんな下向いて、にぎわっているっていうわけじゃなさそう。


「なんだか空気がなんだかどよんでいるわね。なにかあったのかしら?」


「まさか仕事しねぇで、昼間っから飲んだくれてるなんてな」


 ギロッとみんなの視線が集まってくる。やばい……。


「ちょっと、レヴィン兄!」


 ほんとやめてほしい。


 ひ、ひとまず僕らはカウンターへ。


「おたくら賞金稼ぎバウンティ―ハンターかい?」


「ええ……何かあったんですか?」


「ああ、まぁな。アテが外れたな。ここにはロクな仕事なんてねぇぜ、坑道に〈グランドモンスター〉が出ちまったんだからな。だから出せる金なんか――」


「「「なんだって!」」」


 アテが外れたどころか、的中なんだけど!?


 精霊の導きを信じてきて正解だった。


「おいおい、どうしたんだおたくら」


「実はその〈グランドモンスター〉を討伐しにここまで来たんです」


「……まさか、おたくらが? プッ!」


 HA! HAHAHAHAHHAHAHAHAHAHAHAHAHAHAHA!


 さっきまでみんな下向いていたのにどっと笑い出して。


 なんだろう? なんかちょっとイラっとする。


「なに!? なにがおかしいの!? アンタたち!?」


「ウィン、ちょっと落ち着いて」


「フィル! アンタ! 笑われてくやしくないの!?」


「そりゃぁくやしくないかって言われたら、訳も分からず笑われたら腹立つよ」


「おいおい、おたくら新聞よんでねぇのか? ほらよ! その3ページ目の記事よんでみな」


 投げわたされた新聞を囲んで、僕らはマスターの言うその記事を読んだ。


 そこにはこう大きく見出しが書かれていて――。


『A級賞金稼ぎバウンティーハンターチーム、ウォラック興産! しっぽ巻いて逃げ出す!? 恐怖のグリードウォーム!』


 え――?


「……ウォラックってたしか」


「フィルくんの前いたところよね?」


「マスターいったい何があったんだ? ちっと教えてくれよ。なんか飲んでいくからよぉ」


 Tock――。


 マスターは磨いていたグラスをカウンターに置き、ため息一つ。


「……ったく、しょうがねぇ。すこし長くなるぞ?」


 さかのぼること3日前。


 僕らがちょうどジェードロッジを出たころにそれは起こったらしい。





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


次回! 「想像してみてください。行き『詰』まるかつての仲間の姿を……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る