第2話 ナイトが三人になったよ。

「オレは、つるぎ凪斗なぎと。今日からオマエを、ボディーガードする! ミコのナイトだ! よろしく!」


 ナイト? 凪斗くんはナイト?? どういうこと???

 わたしの頭がぐるぐるしていると、


「ミコ!」


って、おっきな声で名前をよばれた。


 お父さんだ! お父さんにみつかっちゃった。怒られる!

 お父さんは顔色をかえて、わたしにむかって走ってくる。これ、絶対に怒られる!


 でもね。


 わたしのこと、「ぎゅー!」ってつよくだきしめてくれた。


「よかった! よーかったー!」


 え? どういうこと??


 お父さんは、顔をグジャグジャにして泣いていた。


「だいじょうぶです。問題ありません。まだいぬこくです。いまの時刻に来るのは弱い妖怪ようかいだけです」


 こたえたのは、狩衣かりぎぬ(神社の神主かんぬしさんの服だよ)を着た、しらない男の子だった。メガネをしたイケメンくんだった。

 けっこう背が高い。六年生かな?


 男の子は、話をつづけた。


凪斗なぎとなら、あんな妖怪ようかいなんて敵じゃないですよ。な」


 凪斗なぎとくんは、とくいげにこたえた。


「もちろんさ相生そうじょう! 〝そん〟で浮かせて〝〟でまっぷたつさ!!」


 相生そうじょうってよばれた男の子は顔色をかえた。でもってツカツカと凪斗なぎとくんにつめよって、大声でどなった。


「バカ! あんなザコにサイコロ二回も転がしたのか!? このあとどうするんだよ!」


 バカって、言われている。わたしのことバカって言った凪斗なぎとくんが、バカっていわれた。

 凪斗なぎとくんはきまずそうにいった。


「いや、はじめての実戦で、まいアガっちゃったっていうか?」


 そんなふたりに、ニコニコしながら女の子がわってはいった。巫女装束みこしょうぞくの女の子だった。


「まあまあ、ケンカしないの♪」


 すっごくカワイイ女の子だった。金色でサラサラのながい髪をツインテールにして、すらっとスタイルもバツグン。中学生かな?


 そして巫女装束みこしょうぞくが本当にすっごくカワイかった。

 ハカマじゃなくて、フリルのついたフワッフワの朱色しゅいろのスカートで、上半身の白衣しろぎぬはノースリーブ、でもって、にのうででとめてある、最高にカワイイ、フリッフリのそでがついていた。


 ついでに、首からあおみどり色のちょっと古めかしい、おっきな鏡みたいなペンダントをかけていた。

 いいなあコスプレみたい。わたしの神社もあの服がいいな。


「ボクたち三人さんにんがチカラをあわせれば、ゼッタイにミコちゃんをおまもりできるよ!」


 え? ボク? このおねえさん、ボクっ? カワイイ♪


「あ、自己紹介がまだだよね。さっき凪斗なぎとと言いあらそっていたのが、勾玉まがたま相生そうじょう小五しょうご。ボクたちのリーダー」


 相生そうじょうくんは、むねに手をあてて、


「はじめまして。ミコ様。勾玉まがたま相生そうじょうともうします。おみしりおきを」


と、とっても礼儀れいぎただしくあいさつをした。


「そしてボクは、かがみNニコラ風水ふうすい。フランスと日本にほんのハーフだよ。小五の男子。よろしくね」


 え? 小五しょうご? てっきりおねえさんかと……って、あれ?


「ええええ! 男の子なの!?」


 わたしがおもわず声をだすと、風水ふうすいちゃん……じゃない風水ふうすいくんはニコニコとわらってこたえた。


「そう、男。ウチの流派りゅうははこれが装束しょうぞく。カワイイでしょう?」


 わたしが「コクン」とうなずくと、


「えへ♪ ありがとう。ボクと相生しょうじょうも、凪斗なぎととおなじだよ。ミコちゃんのナイト。これからよろしくね♪」


と、まるでアイドルみたいにシャキンとキメポーズをしていった。カワイイ。すっごくカワイイ。


 ぐるぐるしてる。頭がグルグルしている。めっちゃカワイイのに、男の子? でもってナイト??


 頭がぐるぐるしているわたしに、相生そうじょうくんが胸に手をあてて、おない年とはおもえないくらい、とってもていねいな言葉でいった。


「ミコ様。十一歳の誕生日、おめでとうございます。かぞえで十二。元服げんぷくあそばれたミコ様の神通力じんつうりきは、これから、さらに強まります。

 結界でのカモフラージュにも限界がございますゆえ、われら三種の神器じんぎをあやつるナイトがミコ様をおまもりいたします」


 え? どういうこと?


 いろいろビックリで、あたまがおっつかないよ。

 ダメだ。なんだか頭がクラクラする。ついでに足もフラフラする。


 グラグラグラグラグラグラ……グラグラグラ!


 とつぜん、おっきな音がして、地面がおおきくゆれた!


 凪斗なぎとくんが、すぐにわたしのまえに立って、「ジャキン!」とあおみどり色の剣をかまえた。


「きた! きた! いよいよ、おでましになった! 相生そうじょう! 作戦は?」


 相生そうじょうくんは、答えるかわりに、狩衣かりぎぬそでから、おっきな宝石ほうせきを出した。あおみどりいろの、カシューナッツみたいな宝石ほうせきだった。そして、


「Hey! オルカ!」


とさけんだ。

 

 オルカとよばれた宝石は、「ぼうっ」と光った。そして、ふわりとうかぶと、光はみるみるとイルカみたいな形になって、蛍光カラーでががやいた。そしてとても機械的な声でつぶやいた。


『なんですか? 相生そうじょう


「作戦を説明!」


『OK! 鬼は二匹。弱点は土行どぎょう金行きんぎょう

 風水ふうすいはミコ様のみがわりを。

 未神楽みかぐら先生は、風水ふうすいをサポート。


 相生そうじょうは、鬼をつかまえる。

 とどめは風水ふうすい凪斗なぎとで一体ずつ攻撃』


「りょーかい!」

「りょ〜かい♪」

「了解!」

「了解! ミコ! お父さん、ガンバルよ!」


 三人といっしょにお父さんもさけんだ。お父さんだけ、よけいなこといってる。ガンバリすぎてて、ちょっとはずかしい。


「ミコちゃんはアブナイから。鏡にはいって。金箔金きんぱくきん!」


 風水ふうすいくんが、両手をわたしのまえに広げると、あおみどり色の鏡から、まぶしい光がでてきた。

 そして、わたしをらすと、風水ふうすいくんのカラダが光につつまれた。そして、


金行複写きんぎょうふくしゃ! コピって八卦はっけ! ごめんね♪」


なんだか呪文みたいな、必殺技みたいなことをさけんで、アイドルみたいにシャキンとキメポーズをとった。


 え? どういうこと?


 風水ふうすいくんは、わたしにした。

 わたしは、すっごくカワイイ風水ふうすいくんの巫女装束みこしょうぞくをまとっていた。


 え? え? どういうこと?


 そしてわたしは、ふしぎなあおみどりいろの場所にいた。宙にうかんだでっかいモニターが、風水ふうすいくん、相生そうじょうくん、凪斗なぎとくん、あとついでにお父さんをうつしていた。ここが、鏡の中?


「どう?」


 わたし……じゃない、わたしに変身した風水ふうすいくんが、モニターごしにニコニコと手をふった。


「あ、うん! カワイイと思うよ!」

「バカ! オマエの心配だよ! だいじょうぶか? 転移酔てんいよいで、フラフラしてんじゃないのか!?」


 わたし、またバカっていわれた。いったのはもちろん凪斗なぎとくんだ。


「バカはオマエだ! 凪斗なぎと。ミコ様にたいするコトバづかいををつけろ!」


 凪斗なぎとくん、また、バカっていわれた。いったのはもちろん相生そうじょうくんだ。


 グラグラグラグラグラグラ……グラグラグラ!


結界けっかい決壊けっかいまであと二十秒』


 地面のゆれが、ドンドンおおきくなっている。


 三人とお父さんは、シンケンな目で、正門せいもん鳥居とりいをにらんだ。三人ともカッコイイ! ガンバレ! ついでにお父さんもガンバレ!


結界けっかい決壊けっかいまで十秒……九……八……七……六……五……四……三……二……一』


 バギン!


 さえぎるモノなんてなんにもないハズの正門せいもん鳥居とりいにヒビがはいった。


 バリーン!


 ヒビがはいったと思ったら、まるでガラスが割れるみたいにとびちって、大男がとびこんできた。


 頭がイノシシになってる、背のたかさが三メートルくらいの鬼だった。

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