第1章 第8話

苑香と昨日はファミレスに長く居座って現実逃避してたせいか、今日は佐藤先輩との約束があったのを忘れてた。

朝食を食べてから二度寝していたら、佐藤先輩からの着信で起こされる。


「もしもし……。」


「寝てた?」


「うん……。」


「今日、うち、来れる?」


「うん……。」


「近くのコンビニまで来てくれるか?

お菓子とか飲み物全然無いから、一緒に買おう?」


「うん……。」


「お前、ちゃんと起きてる?」


「うん……。」


「うん以外、何か言って?」


「うん……。」


「マジ寝ぼけてるだろ?」


「うん……。」


完全に寝ぼけている。

そんなの自分じゃ分からないんだけど。


「そんなんじゃ、今日は無理か?

別に無理しなくてもいいんだぞ?」


「……。」


「おーい、寝てんのか?」


「あ……ごめん。

寝落ちした。」


「はぁ……今日は中止にしようか?」


「え?

中止?」


「だって、寝ぼけてるし。」


「え?

そう?

ごめん、寝ぼけてたかな?」


「やっと目覚めた?」


「うん……本当にごめん。」


「いや、別にいいけど。」


佐藤先輩、ちょっと不機嫌みたい。

寝ぼけた私を可愛いって言ってくれてたくせに。


「それで、今日は来るの?

来ないの?」


「え……何でそんな言い方?」


「寝ぼけて聞いてなかったのか?」


「多分そう、ごめん。」


「いや、まぁ……しょうがないか。」


「行くよ……私。

家でいい?」


「いや、だから、コンビニ……。」


「先輩の家の近くの?」


「うん。」


「分かった。」


「一時間後でいい?」


「うん。」


「じゃあ、また。」


「うん。」


寝起きという事をすっかり忘れてた。

顔を洗って、歯磨きして、着替えなくちゃ。


「あぁ……時間なーい!」


ドタバタ準備をする。

家には誰もいないから怒られないけど、いたら『落ち着きなよ』って言われると思う……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る