第27話一緒




一件の着信。



それは周平からだった。




わたしは最寄駅についてかけ直した。








「もしもし?」






3週間ぶりに聴く周平の声だった。



それまで毎日なにかしらの連絡をとってた私にとって、この3週間はとても長く感じた。




不思議と涙がとまらない。




「あのね・・・今日サークルに行ってみたよ。」



「え・・・?」



「楽しかった・・・周平の気持ちちょっとわかった」



「そっか・・・」



沈黙がつづく。



家につきそうだったので、近くの公園のベンチに座った。





「あのさ・・・あした会える?」




「あした?大学5時までだからそれ以降なら」




「じゃあ明日会って話そう」




何を言われるのだろうか。



もう・・・駄目なのかな。





「わかった。じゃあ明日ね」













授業がおわり、周平の最寄駅にむかった。




わたしは、まだ周平のことが大好きだった。




でも、いままで周平から切り出されたことがなかったのに今回はじめて距離をおこうといわれた。




もし周平から別れようと言われたら・・・




想像するだけで電車の中で泣いてしまいそうだ。













「よっ」




周平がこっちに向かって手を挙げた。




「よっ・・・」













細い道をひたすら歩く。



周平の家まで駅から15分だった。




「なんのサークルいったの?」




「えまに誘われてテニスサークル」




「なにそれ、ちゃらいやつじゃん」





わたしは少しイラッとしたが、喧嘩をするためにここに来たわけではない。




少し気持ちを抑えながら言った。



「みんな、真面目にやってたよ。ほんとに」




「ふ〜ん・・・そっか」




「わたし・・・サークルいってみてちょっとだけわかったよ。楽しさに」




自然と拳に力が入る。



力をいれてないと、泣いてしまう。




「周平がサークル楽しそうにしてるのが羨ましかった。わたしとだけいればいいのに。そう思ってた。そうやって周平のことを縛りつけてて・・・ごめんね」




いつからこんなに弱い女になったのだろう。





力を入れてても涙を止めることはできなかった。





「わたし・・・周平と別れたくない。」




惨めだって。みっともなくたって。周平と本気で別れたくなかった。別れたら私は何も無くなってしまう。




「泣くなよこんなとこで」




周平の袖でわたしの涙を拭った。




目があうと、グイッと引き寄せられた。







「ごめん、おれも。距離置いたらけっこうしんどかった」




腕の中で頭を撫でられる。




「でも本当は別れようと思った。ゆいかのことまた傷つけるんじゃないかって。」




「・・・」




「俺と一緒にいたい?」




「一緒に・・・いたい。」




「俺も・・・一緒にいたい。」




やっぱり周平は別れようとしていたんだ。



でも、私といることを選んでくれた。




そんなことが嬉しくって。安心してしまった。



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