的当教授の提供

僕は的当まとあて教授を飲み、とてつもなく心地よい気分になっていた。もう何も考えなくて良いくらい、今とても幸福だ。


ブー!ブー!


幸福とは唐突に終わりを迎える物だ。僕はうるさく鳴っているスマホの電源をつけた。


通知欄


もっちゃん

:真島ーー!

もっちゃん

:生きてるよな!なあ、生きてるよな…

もっちゃん

:返事してくれー!


まずい。本山もとやまに教授の安否を確認するよう頼まれていたんだった。僕は急いで本山に電話をかけた。


「おはようございます。真島です。」


「真島〜〜良かった、生きてて!」

その大声は、電話越しでも彼の喜びが伝わる程だった。


「連絡が遅れてすみません。的当まとあて教授は…」


「ニュースで見たぞ。残念な知らせだったよな。」

本山も教授の死を悔やんでいるようだ。


「知っていたんですね。僕、その事があまりにもショックで…」


「そりゃそうだろ!大切な人を失った訳だからな。真島、今はゆっくり休んだ方が良い。安心しろ!講義のノートは全部取っといてやるから。」


「心遣いありがとうございます。明日にはもう出れると思うのでそんなに心配しないでください。」


「そう固くなるなって!いつでも待ってるからさ。無理だけはするなよ」


ピッ…

良かった。本山がいい人で本当によかった。

さてと、タイムリミットまで後5時間。成すべき事を成さないと…

僕は瓶を鞄に入れ、家を飛び出した。


電車を乗り継ぎ、近所にある大手飲料メーカーのオフィスが入るビルにやってきた。

ここに来た目的はただ一つ『教授』の素晴らしさを広めるためだ。


「すみません。ここは一般の方は立ち入り禁止でして、どのような用件でここにきたのですか?」

早速受付の女性に止められてしまった。


パシャ…


僕は瓶の蓋を開けて、中の『教授』を受付に浴びせた。


「このメーカーの社長に会わして頂けませんか?」


「…はい喜んで!その『教授』の事を伝えたいのですよね!きっと社長も気に入ってくれると思いますよ!」 


『教授』の素晴らしさを理解してくれたのか、すんなりと社長室まで通してくれた。


「何だね君…」


パシャ!


「これは失礼しました。こんなにも素晴らしい『教授』、すぐに広める必要がある!今すぐに生産拠点を作ります!何卒なにとぞよろしくお願いします!」


社長も『教授』を受け入れてくれた。


これで、『教授』が日本、いや世界に広まるのは時間の問題だろう。

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