【照会】 - デッドラインは?

どんな提出物でも、大抵のものには【提出期限】というものが存在する。

なぜ【提出期限】が存在するのか。

それは多くの場合、後続作業をその後続作業の【期限】までに終える必要があるからだろう。


社会人になってから、『後工程はお客様』という素敵な言葉を、当時の上司から教えていただいた。

多くの場合、仕事というものは自分一人で完結できるものではない。

自分の作業の次に、誰かの作業が待っている。

その誰かをお客様だと思って、お客様が気持ちよく仕事ができるように、自分の仕事を終えて次の担当へ引き渡す。

素敵な心遣いだ。

教えてくださった上司も、素敵な上司だった。

私もああなりたい、と思うくらいに。

社会人は、皆このような姿勢で仕事に取り組んでいるものなのだと、だから私もそうならねばと。


ところが。


実際は違うんだなぁ。残念なことに。

ということを思い知らせてくれたのが、何を隠そう、J会社の社員の方々だ。

(J会社の名誉の為に付け加えるなら、もちろん、全社員が残念な社員だ、という訳ではない。おそらく、ごく一部の社員なのであろう。もっとも、J会社の名誉など、私には何の関係もないが、【一応】お客様なので、ね。)


『●●の申請書って、今日必着って書いてあったんだけど、忘れちゃってたんだよね。これから書類書くんだけど、【デッドライン】はいつ?』


こんな照会の電話を受けた。

まぁ、度々ある。

今でこそ即座に応答できるが、最初に受けた時はうっかり

「は?」

と口から声を発してしまっていた。

お客様相手になんと失礼な!

なんて、思っていません。はい。

「ご照会の件ですが、ご認識いただいているとおり、そちらの申請書は本日必着とさせていただいております。」

『それは分かってるんだけど。あるでしょ?【デッドライン】。いつまでなら大丈夫?』

確かに、各締め切り日は、書類によっては数日~2週間程度の余裕を持たせてあることが多い。

では、何故余裕を持たせてあるか。

それはつまり。

我々の後続作業のための期間。

記入漏れ、記入誤り、確認作業等を行った後に、別部署への発送に間に合わせるための、作業期間だ。

故に、締め切りまでに提出されない書類は、原則受け付けをお断りしている。

特に私は個人的に、締め切りを平気で破る人に対して厳しいため、ほぼ全員受け付けをお断りしている。

「申し訳ございませんが、締め切りは本日です。明日以降の受領分はお受け致しかねます。」

なんとかの一つ覚えのように【デッドライン】を繰り返すお客様をバッサリ切って、照会応答を終えた。


≪ほぼ≫全員受け付けをお断りする私だが、これでも一応人間だ。

感情というものを持っている。

『今日が必着だったんですよね。全部記入済みで、発送だけを失念していたことに気付いてご連絡した次第なのですが・・・・今から発送してもそちらに届くのが明日になるようなんです。・・・・ダメですよね?』

本当に、ガッカリして肩を落としている姿が目に浮かぶくらいの落胆した声で、こんな照会を受けてしまうと。

業務的に余裕がある時には稀に

「確実に今日発送していただけるのであれば、今回だけはお受けいたします。以降はお受けいたしませんので、ご注意ください。」

と、受け付ける事もある。

私のように優しくない人間でさえこうなのだから、他の人はもっと柔軟に対応してくれるかもしれない。

要は、相手に対する気遣いがあるかどうか。

たとえ気遣いが無いとしても、≪期限を過ぎて申し訳ない≫という気持ちを持っている事が伝わってくるか。

期限を過ぎた提出物を受け付けて貰いたい時には、その点を気を付けると、受付率は多少なりとも上がると思う。


ただし、ブラックリスト対象外の社員に限る。


・・・・たまに居るのだ。どの業務においても、必ず手を煩わせる社員が。

そのような社員は、我々の間の【ブラックリスト】で共有されている。


私はJ会社ではない他社の社員ではあるが、ここ、給与厚生課の業務の多くは我ら他社の社員で回している。

我らの【ブラックリスト】に載ってしまうと、人事考課に影響はないものの、色々損をすることになるのにねぇ・・・・フフフフフ・・・・

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