(8)時間稼ぎ
◇◇◇◇◇◇
(ご主人様、決着はつきましたか?)
(ええっ問題なくつきましたよ……)
リエリからの念話である、このイケメンを転移魔法でこの学園都市の上空に連れて来た時点で既にリエリから連絡は入っていたのだ。
何でもエーグルが教室で突然、転移魔法を発動しようとしたので心意看破を使って何が目的かを調べたら中年を強襲しようとしている事が判明、さらにあの腕輪の目的を理解したとの事。
故に中年はエーグルが魔法を使ってわざわざ足場を作ってくれたので、代わりに魔法で幻の世界へ送ってあげた。
私から見ればボ~~っと突っ立っていただけだが、エーグル自身からすれば自分に都合のいい夢を見ているからとてもムカつく笑顔をしていた。
何しろ、腕輪の力をこれ以上発動されると生徒達に悪影響が出る。そこで私は魔法でその腕輪を全て破壊した。
この学園都市にあるヤツ全部な、元々禁制の代物らしく、破壊しても問題ないとリエリにも確認済みである。
後はまぁ……暇なので魔法でエーグルが見てる都合のいい夢を覗いたりした、その幻を映像化して小さな魔法陣にアイパッドみたく映し出したのだ。
これをイオちゃんにも見せてあげた。
エーグルの阿呆な発言の数々にイオちゃんもダホルも多くの生徒達もガチで引いていた、中年を幻の中で殺そうとした罰である。
イオちゃんとか本気で不快そうにしてたな、フフフッこれでライバル的なイケメンは消えたよ。
そもそもイオちゃんを好きって言うよりランクの高い自分にはランクの高い彼女こそが相応しい的な意味不明な思考故にイオちゃんを求めていたエーグルである。
プライドを刺激されれば生徒まで利用して下らない真似をしでかすしな(魅了薬の事ね)、私の事を学園の教師になる資格がない的な事を散々言ってたが、そのセリフ、そのままお前に返すわ。
……お前みたいなヤツが教師なんてするな。
ちなみに何故こんな真似をしてるのかと言うと、単純に時間稼ぎである。
今回の戦いの決着は、少し派手につけようかと思っている私だ。
10分前に時間は遡る。
「ハァッ……本当にどうしよう……」
学園都市の人気のない場所、学園の屋上にベーネちゃんはいた。
溜め息をつきながらうな垂れている。
彼女は中年とイオちゃんの関係にヒビを入れてしまいかねない物を渡してしまった事に動揺している。
素直に謝り行けばいいと分かっているが、もしかすると怒りを買い今のバイトをクビになるかもと考えて二の足を踏んでいるのだろう。
ベーネちゃん、人は良いけど心配症だからな~。
さてっそろそろ話しかけるか。
「こんにちはベーネさん、こんな所で何を?」
「実はアオノさんに危険な魔法薬を………ってええっ!?アオノさん!?」
ベーネちゃんがめちゃくちゃ驚いてる。眼鏡女子メイドの驚きの表情は見ていてホッコリする。
ちなみにここにいるのは中年の本体である。実は中年、少し前に分身を生み出す魔法で2人に増えていたのだ。
イオちゃんと共に行動していたのが分身である。
と言うのも魅了薬入りの上に魔法で仕掛けまでしてある箱、アレを持ってきたベーネちゃんがあのエーグルの裏で繋がってるかもと思っていたのだ。
そこで異空法衣の魔法で本体の姿を消してベーネちゃんを探してみつける、それからはしばらく尾行した。
そしてエーグルが何やら怪しい動きを見せてきたので仕方なく心意看破の魔法を使ってベーネちゃんが白であることを確認した。
まぁそれについては後にして、今はベーネちゃんの心配を取り除いておくか。
私は魔法で例の箱を手元に転移させた。
「ベーネさん、これですよね?」
「あっ……そっそうです、すみませんアオノさん、私は……」
私は箱を燃やした。青い炎に包まれて箱は灰すら残さず消滅した。
「私も魔法使いの端くれですよ?この程度の魔法の仕掛けも見抜けない訳がありません」
私は少しカッコをつけた。
「………その程度の魔法の仕掛けも見抜けなかったんですよね………私」
あっやべ、余計な一言を言ってしまった予感。
話題を変えよう。
「そっそう言えば以前ベーネさんは言ってましたやね?あの空の事を……」
この魔法学園都市は巨大な結界で覆われている、だからなのか空は少しばかり霞がかかっている様になっていて、真っ青な青空って感じじゃないのだ。
以前ベーネちゃんは綺麗な青空を見たいとか何とか言っていたのでその事を話題に出した。
「ハハッ……そうですね、せっかく空を見に来たのに、いまいちな感じの青空ですもんね……」
ベーネちゃん、少し心のダメージがしんどそうだ。
よし……ここは中年が人肌脱ぎますか!。
私が少し派手な魔法を使う事を決意した、そしてそんなタイミングで学園都市の上空に巨大な物体が現れたのである。
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