リスペクトを胸に今日もひたむきに駆ける

自転車ロードレースの最高峰「ツール・ド・フランス」を舞台に、ある日本人選手の10年間の軌跡を描いた物語です。

リスペクトする選手のアシストをしたい──。その強い思いから17歳でプロになったソラ。経験を重ね、大きな谷を乗り越えるごとに、ひと回りもふた回りも大きくなってゆく姿がまっすぐに、たくましく描かれています。苦境にある時も自転車への情熱を失わない姿には、思わず応援を送りたくなるでしょう。

とはいえ、重たいスポーツ根性ものではなく、不思議な軽やかさとユーモアがあるのがこの作品の魅力です。その根底に流れているのは「自分を一番輝かせるもの」に対する情熱と、繋がっている人たちへの「リスペクト」。

自転車レースという過酷な世界で、チームの一員としていかに走るか、エースを活かすにはどう走らねばならないか、登場人物をとおして今まで知らなかったロードレースの世界を見せてもらいました。臨場感のあるスリリングなレースシーンも読み応えがあり、こちらまで観戦しているような気持ちになります。

ツールのファンは勿論、そうでなくても、読み始めたらきっとソラの青春を追いかけたくなるでしょう。目標に向かってひたむきに駆ける姿が爽快な読後感を与えてくれる作品です。ぜひこの世界を体験してみて下さい。