永遠の彼女

空草 うつを

妹の帰還

 滅多に実家に帰ってこない三歳下の妹が、突然、帰省してきた。


 理由は、勤めていた大手広告代理店が倒産し失業したから。


「まさか倒産して職を失うなんてね。この世に永遠なんてないんだって思い知ったよ」

「それは大変だったな。本当に、ご愁傷様」

「ちっとも感情こもってない! かわいい妹がショックでぼろぼろなのに」


 どこがショックでぼろぼろだ?

 さっきから冷蔵庫にあったアイスを味わいもせずに大口で食べているじゃないか。しかも、俺が昨日買ってきたご褒美用のお高いものを。


 子どもの頃、お兄が好き、と後ろをついてまわるかわいい妹だったのに。今やその影もない、と郷愁に浸る。

 妹は、両手を目のところにもってきて泣き真似を見せた。


「ナナちゃん、かわいそぉ」


 どこからか、俺の娘の麻理が近寄ってきて泣き真似をする妹の頭を小さな手で撫でた。


「あー天使! ありがとう、今ので元気になった。トンビがタカを生むってこのことだね」

「誰がトンビだ?」

「ナナちゃん、それなぁに?」

「ことわざだよ。平凡な親から超すごい子どもが生まれること」

「麻理ちゃんすごい?」

「すっごい天使」


 娘は妹に褒められて上機嫌で小躍りした。そこへ、妻がやって来るとさっさと着替えさせられて幼稚園へ連れて行かれた。

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