ただ僕は、キミの力になりたくて――7

 本当は、ずっと前から練習していた。


 啄詩くんから歌詞を受け取って、音子ちゃんがメロディーを付けてくれたときから、何度も何度も。


 啄詩くんの世界はとてもステキで、幸せで、わたしまでトキめいてしまうようで、唄わずにはいられなかったの。




   キラキラ輝く キミの目が

   青いトンネル 見上げてて

   隣にいると切なくなる

   あたしの心も 覗いてくれたなら――




 ゆっくりと音が減っていく。


 ギター、ピアノ、ベース、ドラム、ストリングス。


 静かに静かに、ハイハットが刻むビートさえも消えていく。




『Blue Blue Wish』はステキな歌だよ?


 だから、啄詩くんが歌詞を変えようって提案してきたとき、正直、ちょっとだけ悲しかったの。


 それは、わたしが伝えたい気持ちにさえフタをされてしまったようで……『彼』は気付いてくれないの? って、寂しかった。


 でも、わたしはどうしても伝えたかったんだよ?


 わたしはちゃんと想っているんだよ?




 ストリングスのふわりと和らいだ旋律とともに、




   わかってるよ?

   まだ キミは気付いてない

   あたしのズルい気持ちには

   キミの手 キミの言葉で 「スキ?」 って聞いてほしい




 エレクトリックピアノが音階を作った。


 高くなっていく音程を、ベースとドラムが力強く支えている。


 昂ぶっていく鼓動を表現するかのようなハーモニー。


 そして、半音高く『転調』。


 わたしはわたしの歌声に、ありったけの想いを乗せた。




   わかってるよ?

   あたし きっと イクジナシ

   キミの恋人になれるかな?

   でも きっと キミに伝えるから

   お願い

   待ってて?




 そうだね。きっと、わたしはズルくてイクジナシだね。


 けれど、あなたが勇気をくれたから。


 だから、わたし、唄うよ?




   いつか きっと 伝えるから

   お願い……

   それまで 待ってて?




 どうかどうか届きますように。


 あなたのもとへ届きますように。

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