文字通り命懸けの食卓

 あらぬ疑いをかけられ、拷問にまでかけられたヤクザの男が、生還をかけてちょっとしたゲームに挑むお話。
 料理と毒を題材にした、謎解き的なお話です。序盤で出題され、終盤で答え合わせ、という形式になっており、いわゆるミステリ的な魅力があります。強制された問題に対して、知恵や工夫で正解まで辿り着く、その過程が楽しい物語。
 キャラクターの個性が好きです。ゴリゴリの武闘派だけど決してそれだけじゃない、知恵や知識もある主人公。そして彼に相対する拷問官の、どこかマッドサイエンティスト然とした怪しげな魅力。特に後者は重要というか、このあからさまに異様なシチュエーションに妙な説得力があるのは、彼の美学やこだわりがあればこそだと感じます。あと料理が美味しそう。なんというか、溢れ出る「この人の作る料理なら絶対美味しそう」感がすごい。
 肝腎要の謎解きの答えも、非常に綺麗にまとまっていて、すっと理解できる気持ちよさがありました。いや実は、読んでいる間はまったく想像もつかなかったのですけれど。でも豆知識的な魅力というか、普通に勉強になるお話でした。最後が好きです。ちゃんと有言実行する主人公。良い。