第14話(2)
「「いただきます」」
トマトと厚焼き玉子のサンドウィッチと、レタスと干し肉を挟んだサンドウィッチ。エビとズッキーニを高温の油で揚げて、少量のマスタードを混ぜたマヨネーズで和えたもの。そしてマティアス君が過ごしていた隣国の名物、3種のチーズのピザ。
今日のメニューは、私達が好きなものと思い出深いもの。やや偏ってしまいましたが、たまには大丈夫。という事で、ギュッと詰め込んでみました。
「どれも、美味しいね。2人で作った料理だから、どれももっと美味しく感じるよ」
「うん、私もそう思う。マティアス君が作ってくれたこのサンドも、とっても美味しい」
「「「「「チチチッ。チチチチチッ」」」」」
「鳥さん達も、興味津々だね。ね、マティアス君。食べ物をあげても、この子達に害はないかな?」
「味付けが濃いものでなければ、悪影響はないはず。サンドウィッチのパンの部分なら、あげても平気だよ」
そういった知識も豊富なマティアス君に教えてもらって、2人で揃っておすそ分け。ちぎって手の平に載せると「「「「「チチチチチッ!」」」」」と集まってきてくれて、一斉にツンツン。可愛らしく突っついて、あっという間になくなってしまいました。
「「「「「チチチチチッ。チチチチチッ」」」」」
「ふふっ、みんな可愛い。……………………」
「? イリス? どうしたの?」
鳥さん達を見ていると、ある事をしたくなってしまいました。
…………周りに人は、誰もいませんし…………。お願い、してみましょう。
「あ、あのっ。マティアス君っ」
「はい。なにかな?」
「お、お互いにね、『あーん』をしたいの。駄目、かな?」
こういうのって、定番、ですよね? 手のひらでご飯をあげていたら『あーん』を連想して、どうしても行いたくなってしまいました。
「嫌だったら、正直に言ってね? どう、かな?」
「断る理由が、どこにもないよ。じゃあまずは、俺からさせてもらおうかな。何をあーんすればいい?」
「あのね、これがいいの。これでお願いしますっ」
急いで隣にあったバスケットを開けて、その中にある#フライドポテト__ポム・フリット__#を見せました。
マティアス君が暮らしていた国を調べていたら、その地域では恋人たちの愛の象徴になっていて、デート中にこれを買って食べるのがマストだという記事を見つめました。あいにく森の中にはお店はありませんので、冷めてしまいますが、内緒で作っていたのです。
「確かに、隠し玉に相応しいメニューだね。その気持ち、とても嬉しいよ」
「喜んでもらえて、よかった。で、では、こちらで、お願いします」
「うん、了解です。どうぞ、イリス」
「は、はい。い、いただきます」
ちょっと緊張しつつ、ポム・フリットをパクリと食べました。
お芋を削っている為1本が長めで、あーんをしてもらうとハムスターさんのような食べ方になってしまいます。そのため好きな人の真ん前でするのは恥ずかしいですが、流石は恋人達の定番の行為です。ただでさえ美味しかったお料理が更に輝き、身体の中が幸せで満たされました。
「次は、私だね。どうぞ、マティアス君」
「ありがとう。いただきます」
私もポム・フリットを差し出して、マティアス君はパクリ。間近で見る咀嚼姿は品があって、カッコよくって……っ。
あーんはされる時もする時も幸せなのだと、理解しました……っ。強く、理解しました……っ!
「マティアス君っ! もう一度、いえっ。なくなるまでしましょうっ」
「ふふっ。うん、そうだね。なくなるまで交互に――…………。はぁ。最悪のタイミングで、御登場か」
マティアス君が息を吐くと同時。鳥さんが一斉に騒ぎ始めて空へと逃げ出し、みんなと入れ替わる形で――え?
「オルジー、様……?」
気品のある、長身の美男。この国の宰相であるアドリク・オルジー様が、ゆらりと現れました。
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