ファーストコンタクトが大事という話

 ロボットモノを小説でやる際に、ハードルが高いと誰もが言う。

 そこで僕はあえて「難しいけど難しいだけで、書けるよ」と反論した。

 次はそれを、反証してゆく作業が始まると思ってます。

 勿論、自分も上手く書けているとは思わないんですけどね。

 ただまあ、両手の指で足りないくらいロボ小説を書いてきたので、いい機会だとも思いました。カクヨムは古来より、ロボ小説の多い珍しいweb小説サイトです。

 さあ、あなたも今こそロボットを書いてみませんか?




 さて、改めて「ロボットモノは小説では難しい」と述べましたが……まず、ロボットモノには大量の「知っておくべき事前情報」が必要で、ロボットがちょっと動くだけでも「ロボット自体が持つ大量の情報」を読者に伝える必要があります。

 例えば、これがアニメだと全て絵と音に凝縮されている訳です。

 ロボットの大きさや姿、カラーリング、持ってる武器等……そして、音が出る。

 これらは全て、視覚と聴覚からダイレクトに入ってくる情報です。


 対して、小説は間接的にしか情報を視覚化できません。全てを文字と言葉にして書き記し、それを読んだ人間に全ての情報再構築を委ねなければいけないのです。

 なので、アニメやゲームが一瞬で伝えられる情報量を、さばききれません。

 書けば書くほど煩雑で冗長になり、かえって読者が混乱するだけです。

 しかし、文章量が足りないとイメージが掴めず、物語やドラマが入ってこない。

 ロボが小説で難しいと言われている所以は、ここにあります。




 では、どうすればロボットの描写を上手にできるのでしょう。

 今更な話になりますが、小説の文章には「設定や世界観、状況の説明」と「キャラクターの心理状態や感情、場の雰囲気等の描写」があります。そして、どちらも長くてくどい文章はよくないとされていますね。

 しかし、ロボットは読者の知らない情報のカタマリです。

 長々と設定を説明すれば、飽きられてしまう。

 なので、まずは「ロボットの第一印象」を最初から設定しておくことをオススメします。


 これは、TVアニメ「機動戦士ガンダム」で初めて取り入れられた手法です。ガンダムに対して「白いやつ」、ホワイトベースに対して「木馬」という呼称が作中で自然に生まれて、それがずっと使われます。

 ここで大事なのは、色や形状、シルエットを想起させる一言を決めちゃうことです。

 コードギアスのランスロットは「シロカブト」ですね。

 ターンエーガンダムは勿論「ヒゲ」です。

 アルドノア・ゼロは「オレンジ」、他にも色々な作品で「羽つき」とか「マント付き」とか、多種多様ですね。暇な方、ちょっと調べてみると面白いですよ。

 他にも、簡素な呼称を固定している作品は数多くあります。これによって「作中のキャラクターが見ているロボ像を、読者が共有しやすくなる」という利点があります。


 例えばガンダム、RX-78-2…頭に60mmのバルカンはデカすぎだろうとか、実は角って黄色じゃなくて白なんだよねとか、そういうことは文章で説明する必要はありません。V字アンテナにツインアイの「白いやつ」、これで十分です。

 勿論、ガンダムには緻密な設定が存在し、非常にディティールが細かいメカとなっています。しかし、それはアニメでこそ描写できるもので、小説ではなかなかそうはいきません。

 アニメのいいところは取り入れても、アニメを作るように小説は書けないのです。




 まず、自分のロボットを記号化しましょう。

 そして、既存のロボットに似てる、同じになるという時は、もう少しアイディアを練り直してみるのもいいですね。

 自分もこれからは、そうしてみようと思っています。

 あまり過去の作品では、上手く出来てなかったことなので。


 で、特に大事なのは「色」と「シルエット」と「例えるなら○○のようだった」ですね。まず色、カラーリングです。これはもう、一発でロボットを識別できる、どれが主人公ロボかも伝えられる大事な要素です。既存のロボットアニメは勿論、現実の軍隊でもカラーリングやマーキングで機体を識別していますからね。

 ただ、詳しく説明する必要はありません。

 ガンダムだって赤青黄色が混在してますが「白いやつ」でいいのです。


 次にシルエット、例えばロボが人型だとしたらどんな体格なのか。プロレスラーのようなアンコ体型のマッチョなのか、それとも総合格闘家のようなムダのない細マッチョなのか。あるいは、装甲でデブく膨らんでるのか、機動力を確保するため異常に細いのか。

 ここでさり気なく「大きさ」も交えて説明しておくと、なおいいですね!


 最後に、色とシルエットをざっくり説明してから、シメの描写。まるで白銀の騎士だ、とか、例えるなら人の姿をした龍みたいだ、とか。ここが一番凝るところで、妙に小難しくてもいけないし、ピンとこない暗喩や比喩もいけません。

 あまり気取らず、ド直球な方がいい気もしています。

 一方で、普段あまり使わぬ言葉や単語で雰囲気を作るのもいい、のかな?

 ここらへんはでも、トライ&エラーでやってみるしかないかな、と。


 じゃあ、精密なメカ描写や内蔵武器のディティール、あっと驚くスーパー兵器の描写とかはどうするのか? それは次回、詳しくお話したいと思います。

 とにかく、ロボモノは説明すべき情報が多過ぎる。

 けど、それを全部いきなり1から10までやる必要はありません。

 情報を小出しにしてドラマに緩急をつけるのは、どんな小説でも基礎中の基礎です。だから、最初は「白いやつ」でもいいんです。それが、ある時はバルカンを頭部から発射し、またある時は戦艦の主砲並のビーム砲をブッ放します。

 正義のスーパーロボットが、物語の進行で神にも悪魔にもなる。

 ロボの精巧さ、リアルな存在感は徐々に作っていけばいいんですね。

 まずは最初は、ざっくばらんに第一印象を読者に刻みつける、これだと思います!

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