第7話 ランク・コモン
VDC、このゲームのルールはいたって簡単だ。
1対1形式のデスマッチ。
互いの悪魔で殺し合うヴァーチャルゲームだ。
ただここに特別なルールが存在する。
それが課金だ。
プレイヤーではなく賭けているギャラリーが応援する方に課金をするのだ。
課金を受け取ったプレイヤーはその課金額から装備やアイテムを選んで戦うことができる。
これのミソなところは賭け元とは別に面白い対戦が見られればいい、と課金するモノが居るから戦場は荒れることが多いということだ。勝ったものはファイトマネーの他にボーナスももらえる、しかし、勝ち逃げは許されず連戦が余儀なくされるが挑戦者が居なくなればチャンピオンとして特別なボーナスをもらえる。
とはいえ、このVDCは地上では学生をメインターゲットにしているコンテンツで動くお金も微々たるもの。
上層でのゲームと比べて下町はやはり格差が存在するのだ。
それでも下町には下町の生活があるので皆稼げるゲームに全力を投じるものだ。
して、カズマがVDCにエントリーしようとしたら。
「私がやってあげようか。」
と、ディアナが言うものだから会場がざわめいた。
「やめてくれ。俺の楽しみを取るな。」
カズマはディアナの申し出を断り、スマートフォン型タブレットを取り出す。
これはこの都市に入れられた悪魔憑き1人1人に渡されているパーソナルデヴァイスだ。
これに皆のゲームデーターが記録されており、ソウルコードと呼ばれる認証装置で起動する。
それをコンソールに入れて対戦登録を申し込む。
今は3人待ちのようなので試合を観戦しながら自分の番が回って来るのを待つ。
試合場では3メートルはあるサイクロプスが今日は連勝を上げていて大いに盛り上がっている。
賭けや課金ももいつもより多く動いているのが見られる。
「くくく、ならば今日はこいつかな。」
そうつぶやいて端末を操作するカズマ。
横ではディアナが、「やれー、そこだぶっ殺せ。」と大いにはしゃいでいらした。
そうこうしてるうちにカズマの出番が回ってきた。
モニターに映し出されたのはカズマのプロフィールだ。
それを見た会場の皆はため息を漏らす。「また荒れるぞ。」と。
そこに映し出されたのは、
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asuka291、ランク・コモン
悪魔・鬼
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asuka291というのはカズマがこの場限りで使った偽名である。
正式なアカウントは別にあるがそれは秘密。
カズマはここらでは有名な荒らしプレイヤーなのである。
公式戦ならともかくこんな場末のゲーセンで顔出しはないので地上にいる賭けている観戦者は本人かどうかなんてわからない。
それをいいことにゲームに混乱をまき散らすことを目的にプレイするのがカズマである。
本来は偽名でのゲームが出来ない中、それができるカズマは――それこそがカズマのイレギュラーだった。
「さぁ、殺し合いを始めよう。」
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