第6話模索

「んー……」


袋を作るには何が必要か。

それは入れるものがどんな形か、どんな大きさか、どんな用途で使うかによって異なるものだ。

しかし、どのような袋であっても、相応のサイズを有していて、他の物体を安全に包み込める、必ず満たしていないといけない要素だ。


「紐類は見つけたけど他の物に使えそうだから、出来れば使いたくないな……」


倒した蜂がいた部屋を探して見つかった袋に使えそうなものは建物の中以外は、この大きな紐しか見つからなかった。

長さは少なくともユノの倍はあった。

この様な紐は5本ほどあった。


「布とか皮類があればいいんだけどな」


ユノは部屋を見渡す。

本殿の様な所の入り口?にはのれんらしきものが掛かっているが、それもあまり使いたくはない。壁紙を使うという手段もあるが、コンクリートが剥き出しで壁紙も少量だ。


あと使えるとすれば動物の皮くらいしかない。


「はぁー、それしかないかー」


ユノは決心し、皮が袋に使えるような生物を探し始めた。


─────2時間後


探し始めて2時間、歪んでいる所に片っ端から鑑定していき、遂に見つけた。


△△△△△

毒隠れネズミ レベル 3

HP 4000/4000

▽▽▽▽▽


このネズミは少し特殊だった。

ここの生物たちは鑑定することしか、見つける方法は無い。

それらを見つける為には、空間の歪みを見つけ、鑑定する必要がある。

で、その歪みがこのネズミは特殊だった。

このネズミの歪みは紫の霧を纏っていた。


毒だと思ったユノは霧に当たらないように鑑定をすると、濃い霧を纏ったネズミが現れた。


と言っても霧が濃いので輪郭しか見えないが。レベルはユノより1上。

PSの方が重要なのでそこは問題ない。

てか多分毒持ちか?



「チュッ!」

「……おっと!」


ネズミが突進してきたので、ユノは大きくジャンプし、ネズミの背後に回る。


「チュ」


ネズミは冷静に立ち止まり、こちらを向く。

そして、ユノが着地する瞬間、また突進してくる。


「ふんっと」

「チュアァァ」


そこに全体重をかけたユノの手剣は突進してきているネズミの首に向かっていき、的中するかと思われたが、それは直ぐにUターンすることによって避けられた。


「スキあり!」


ユノに背中を向けていたネズミはユノによって尻尾が切れた。

それによってネズミが纏っている霧が薄くなる。


「ジュァァァ!」


視界が良くなったユノは更に追撃を仕掛ける。


「取った!」


痛がっているネズミの首にユノが思いっ切り手剣をいれる。

すると、ネズミの首はゴリゴリという音を立てながら切断される。


「いよっし!」


残骸を回収しようとしたユノだがネズミの残骸は直ぐに塵になり、最終的には前歯しか残らなかった。

その歯も鑑定しておく。

△△△△△△

毒隠れネズミの前歯

レベル 3

耐久度 100/100

呪侵食率 100/100

異形度 3


毒隠れネズミの丈夫で大きな前歯。

その歯は傷つけた相手に毒を注ぎ込む。

なお、蜂とは違う毒を持つ。


毒1×周囲の呪詛濃度+ランダムアナフィラキシーショック

▽▽▽▽▽▽

「皮はぁぁぁ!?」


その後、3戦くらいしたが、全て前歯しかドロップしなかった。


「うーん、おかしいなー。俺の運が糞の可能性は捨てるとして……倒し方というのは違う気がするんだよな」


その部位が無事だからドロップした、と言うよりはその部位がドロップする条件を満たしたから前歯をドロップした、というほうが正しい気がする。


何かほかの倒し方を考える。

呪いを使わない倒し方……あ、天然の毒ナイフがあるじゃないか!

この手剣にも呪いが流れていたから、前歯しか落とさなかったのだろうか。


「考察だけど、呪いが流れ込む、そしてその呪いによってあの風化が起きるとしたら?」


毒噛みネズミの前歯は周囲の呪詛を利用して、傷つけたものに毒を注ぎ込める。

と言う事は、元から呪われているのだろう。

そして毒噛みネズミ自身も、モンスターになるような異形化が起きているのだから、これも呪われていると言える。


では、死んだ毒噛みネズミの体に呪いは?


モンスターになる呪いが体ではなく精神や魂に根差すものならば?

死んだ毒噛みネズミの体は前歯以外は呪いが空っぽな状態、そうでなくとも周囲の呪いを吸い込みやすい状態になっているのではないだろうか?


「うーんこれしか考えられないなーまあ、これを信じて頑張るしかないですか!」


またユノはネズミを探し始めた。




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