パーティーを追放された俺は、俺だけが使える最強の闇魔法に目覚めて、Sランク冒険者になったのだが。魔物討伐より俺の仲間の方が問題だった〜コイツらを止められるのは俺しかいない〜

@senkounahabi

第1章 Sランク冒険者

001 最弱の冒険者

 俺の名前は、レオン・ノワール。

 転生者だ。

 21歳の時に、交通事故で死んでこちらの世界にやってきた。


 そんな俺は、田舎に生まれた。

 そこはのどかな田舎で、のんびりと出来る場所だ。

 村の人々はお金がないため、贅沢ぜいたくをせず一生懸命いっしょうけんめいに畑をたがやしていた。

 俺の家も同様。

 家にはお金がなく、俺をやしなうために両親が必死に働いてくれていた。

 だがそんな生活でも、苦しくはなかった。

 さいわい、親は優しく、たくさんの愛情をそそいでくれたからだ。

 そうして俺は、15歳まで育った。


 この世界では、15歳になると大人としてみとめられる。

 なので俺は、今まで苦労して育ててくれた両親に恩返しがしたかった。

 だから、冒険者になってお金をかせごうと家を出た。


 冒険者。

 それは、魔物を討伐とうばつし、村や街を守る。

 だからかせぎが良く、人気の高い職業である。

 特に、冒険者の中で最上位のSランク冒険者になると、依頼いらい成功報酬せいこうほうしゅうけたが比ではない。

 そのため、俺はSランク冒険者を目指してギルドに加入したのだった。


……2年後。

 

 現在のランクは、最低ランクのEランク。

 冒険者になってから2年がった。

 だが、今でもランクが変わっていない。

 夢はSランク冒険者だったが、現実はそうあまくなかったのだ。


 しかも、俺は相当弱いらしく、色んなパーティーから追放された。

 付いたあだ名は『神様のいたずら』。

 どうやら、神様が俺という人間を作り間違まちがえたという意味があるらしい。

 ともかく俺は、使えないヤツってことだ。

 

 そんな俺も、運よくふたたびパーティーに入れてもらうことが出来た。

 今回入れてもらったパーティーも、最低ランクのEランク。

 パーティーに入れてくれた理由は、荷物持ちのため。

 それでも俺は、パーティー入れてくれた事がうれしかった。


 だが、うれしかったのは最初だけ。

 そこから地獄じごくのような日々が続いた。

 うまくいかないとなぐられて、依頼いらいに失敗すると俺のせい。

 パーティーの中にいた、1人の男が最悪の人格をしていたのだった。


 名前は、トテーボ。

 自分を強いと信じているガキ大将タイプ。

 機嫌きげんが悪くなると手が付けられないそんな男だ。

 


 そして現在。

 俺は、トテーボに呼び出されてしまった。

 なのでしかたなく、中世のヨーロッパの様な町にあるギルドの中に入っていった。

 そのギルドの中では、俺を囲うように他の冒険者たちが立っている。

 おそらくトテーボが、俺を追放すると言いふらしたのだろう。

 俺を追放される姿を見たい野次馬やじうまどもが、面白がって次々にむらがってくる。

 まるで、えさを投げた時にむらがるこいみたいに。

 もうこれは、集団イジメだ。


 そして。

 ようやくトテーボが、ギルドの中に入ってきた。

 大きい体に、出たおなか。

 けわしそうな顔に、たばこをくわえている。

 地元のヤンキーみたいなやつだ。


 そんなトテーボは、いつになくニヤニヤしていた。 

 これから俺をイジメるのが、よほど楽しみらしい。

 俺の目の前に立ったと思ったら、タバコくさい顔を近づけて言ってきた。


「おうレオン。良くげずに来たな!

 ビビって田舎に帰っちまうかと思ったぜ?? ケハハハハ」


「「「「ギャハハハハハ。ちがいないぜ!! ギャハハハハハ」」」」


 会って早々、俺を馬鹿バカにして笑うトテーボ。

 そんな光景を見て笑うギルドにいる奴ら。

 状況は、最悪だった。

 だが、俺も負ける気はない。

 こわい気持ちを必死におさえ、トテーボをニラんだ。

 すると、トテーボは眉間みけんにシワを寄せて、俺をおどすようにキレてきた。


「ああん? なんだその目は?? いいのか? 

 俺様に対してそんな目をして?? パーティーから追放するぞ??」


『パーティーから追放するぞ』


 俺が入れるパーティーはない。

 もし、運よく入れたとしても追放されてきた。

 それを知っているトテーボは今まで、追放をおどしに俺を散々利用してきたのだ。

 だが、セリフはもう聞ききた。

 そんなおどしなど、今日の俺には通用しない。

 今日は見せ物にされた上で、どのみち追放されるのだろう。

 だから、俺は目つきを変えずににらみ続けた。


 俺が『追放』という言葉にビビると思っていたトテーボは、ニヤニヤしていた。

 だが、ビビらない俺を見たトテーボの顔が、どんどんけわしくなっていく。 

 そして、ついにしびれを切らしたのか、俺に『追放』を命じたのだった。


「よーーし分かった。俺様の言うことを聞けないというんだな??

 それならばな……追放だ!! 俺様のパーティーから出て行きやがれ!!

 もうこれで、お前が入れるパーティーは無い!! ケハハハハ」


「「「ギャハハハハハ」」」


 トテーボが俺に追放と言うと、ギルド中が大笑いした。

 トテーボも、みんなの反応が良く思わずニヤつく。

 そんなみんなの様子を見て、俺はふと自分の夢を思い出した。


『Sランク冒険者になる』

『両親に恩返ししたい』


 そう目標を決め、ギルドに入って行ったあの日から2年。

 それなのに目標に近づくばかりか、どんどん遠ざかる自分へのいかり。

 両親への恩返しができない事に対するくやしい気持ち。

 自分への不甲斐ふがいなさに、心がしつぶされそうだった。


(ごめん。母さん。もう俺‥‥‥無理かもしれない‥‥‥)


 全てをもうあきらめようと思った……その時だった。


ガチャ


「うわぁー。すごさわぎだねぇー。みんなぁ、何してるのー??」


誰かが、すごく楽しそうに笑いながら、さわがしいギルドに入ってきたのだった――

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