おチビちゃんの挑戦その1-2

「大丈夫かっ?!」

「いったぁ・・・・」

慌てて駆け寄り、靴と靴下をかかとあたりまで脱がせる。

「ちょっとっ、なにす」

「動くな。」

騒ぐチビすけを黙らせ足首にそっと触れると、既に熱を持ち始めていた。

「捻挫だな。」

「えっ。」

「帰るぞ。」

捻挫は、冷やして患部を動かさないことが一番だ。できればすぐにでも湿布をして、固定した方がいい。可能であれば、整形外科などで治療を受けた方が、なおいい。

中学時代に部活で何度か捻挫をした事があるから、よく分かる。

大したこと無いからと放置しておくと、悪化して後遺症が残る事もある。

俺のように。

俺は、中学時代に部活のサッカー中に捻挫をし、放置して悪化させたせいで、もう以前のようにはサッカーをすることができなくなっていた。

だから、高校では気ままな帰宅部。

別に、挫折して人生を投げた訳ではない。

今の状況は、それはそれで気楽で気に入っている。

ただ、おチビちゃんは、高飛車で強引で減らず口ではあるが、一応女子だ。

後遺症なんて、残らないに越したことはない。

それに。

これ以上歩くのが遅くなると、合わせるのも大変だ。

・・・・なんか、今後もずっと一緒にいる前提で考えてないか?俺。

ともかく。

見たところ軽い捻挫のようではあったが、万が一の事を考えると、このまま放置する訳にはいかなかった。

「なんでよ。これくらい、大したこと」

「いいから、帰るぞ。」

まだ立てない状態のおチビちゃんの前に屈み、背中を見せる。

「乗れ。」

「えっ?」

「歩けないだろ、そんなんじゃ。」

「だから大丈夫だって」

「いいから乗れ。」

彼女なりに意地があって、葛藤をしていたのか。

それでも、しばらくするとモゾモゾと動きだし、俺の肩に手がかかった。

「変なところ、触らないでよ。」

「誰が触るか。」

そのまま、体重が掛けられたのを確認し、俺は立ち上がった。

予想以上に、軽い。

まるで、小さな子供を負ぶっているようだ。

・・・・体形的には、小さな子供とそう変わらないのだから、当たり前ではあるが。

「家まで送るから、着いたらすぐ応急処置しろよ。病院やってるようだったら、診てもらった方がいい。」

「・・・・うん。」

公園から駅まではおチビちゃんを負ぶって歩き、さすがに駅と電車内では下ろしたが、彼女の足に負担を掛けないように体を支え、彼女の家の最寄り駅から家まで再び負ぶって歩いた。

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