第4話

その事に気づいたのは、野垂れ死に寸前のところをお嬢様に、助けられてからだった。



まさか、【最初の祝福】が無かった為に町にも入れず、まともな仕事もさせてもらえないなんて思わなかった……



街道沿いの休憩所で倒れていたところに、王都から伯爵領に帰るお嬢様が、通りかかり俺を保護してくれたのだ。



お嬢様の顔を見た途端、俺は前世の事を思い出した。

そう、お嬢様は出戻りの叔母が連れて帰った従姉妹がやっていた【聖女と6人の騎士】とか言う【乙女ゲーム】に出て来る攻略対象の婚約者で、ルートによっては婚約破棄される伯爵令嬢だった。



従姉妹は、選択画面になるとやたらと俺に『どっちが正しいの?』と質問して来たので、すっかり詳しくなってしまった。



お嬢様の元婚約者(時期的にもう婚約破棄した後だろう。)は、ハッキリ言ってクズだ。



コイツのルートに入ると婚約者がいるにも関わらず、聖女ビッチのアリスと浮気した挙句に、『真実の愛』だとかふざけた事を言って、お嬢様と婚約破棄するのだ。



更に酷いのが【逆ハーレムルート】!



お嬢様は婚約者や聖女ビッチ達と年齢が少し離れていて成人してもいないので、王城に行ったのは数年前に行われた【第三王子の誕生日パーティー】と称した、以来だ。



お嬢様はその選考に落ち、その後元婚約者と婚約する事になったので当然その後王城にも行っていないし、のにも関わらず、あの元婚約者は他の攻略対象者の婚約者と一緒に、お嬢様を断罪の場に呼び出し、彼女達と一緒に断罪して婚約破棄したのだ。



聖女ビッチにも他の令嬢にも会った事がないお嬢様に、どうやって彼女達と一緒に聖女ビッチを虐めたり出来るというのだ!



明らかに冤罪だろう。



相手が王太子とその側近の為、誰もその事を指摘しないままゲームでは【逆ハーレムエンド】を迎える。

俺が出番の少ない彼女の事を覚えていたのは、ちょっとだけ前世の彼女と似ていたからだ。



ところが現実はそうならず、王太子の婚約者の公爵令嬢はアリスと接触する前に、同盟国の【ユイナーダ王国】にある【国立ユイナーダ学園高等部】に留学していた為、王太子とのだ。



公爵令嬢が、この矛盾を指摘した。



そもそも【ユイナーダ王国】なんてこの乙女ゲームに出て来なかったし、【国立ユイナーダ学園高等部】に王太子の婚約者の公爵令嬢が留学していてに不在だった。

とか聞いた事がない。



他の令嬢達も【女学院】や【別の魔法学園】に入学していた。



シナリオと違い過ぎるだろう。



おまけに元婚約者の令嬢達は、常にアリバイをメモしており、冤罪をかけられない様に自衛していた。



その後、聖女ビッチのアリスが過去にをしていた事。



理由は、過去に何度か【最初の祝福】の手続きを拒否していた事についてだ。



後に『他にもいるかもしれない。』と、今回の事件を気に改めて国中で調査する事になった。

その結果、けっこうな人数が似たような状況で【最初の祝福】が受けらていない事が発覚し、教会は権威を落とす事になる。



そして聖女ビッチは、王太子だけではなく攻略対象全員と関係を持っていた事が発覚。

王太子達の【婚約破棄断罪イベント茶番】は、大失敗に終わり攻略対象者は全員、廃嫡されたり家を追放されたそうだ。



まぁコレは事件後にお嬢様から教えて頂いた話しなので、俺は実際に現場に居た訳ではないから聖女ビッチの顔は知らない。



ゲームでは感情移入しやすい様に、ヒロインの顔は描かれていなかったのだ。



ゲームと違って俺は婚約破棄茶番劇の現場にいなかったのだ。

まぁ、どうせ


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