伝説のヒットマンが西部劇の世界に転生したら!?

@OctoBer1993

第1話

202X年、俺は死んだ。

正確には今から数秒以内に間違いなくに死ぬだろう。


その死の間際に色々な思いが駆け巡った。


人はいつか必ず死ぬ。

それは裏の業界では伝説のヒットマンなどと呼ばれ世界中を練り歩いた俺も例外ではない。


こんな稼業をしていると死というものが、とても身近で特別な事には感じなくなる。

俺の生活にはいつでもすぐそばに死があった。

それはなにも俺が殺る側とは限らない、この仕事は命懸けだ。

返り討ちにあったり、誰かの恨みを買ったりと色々な理由でいつ殺られる側になるかわかったもんじゃない。


しかしそんな苦悩とも今日でオサラバ、か…。


もし生まれ変わりというものがあるのなら今度はこんな血なまぐさい商売はまっぴらごめんだ。


とにかくこの苦しく、わずらわしいことだらけの世界から解放される時が来たのだ。

今はそのことだけで充分だ。死後の世界など誰にもわからない。

…そして俺の視界は真っ暗になった。





「……イ!……か?」


???


「…オイ!……るか!?」


なんだ?


遠くのほうから何かが聞こえるような感覚だ…。

人の声のようだ、何か叫んでいる。

俺にむかって叫んでいるのか?


「…オイ!大丈夫か!?生きてるか!?」


ハッと、そこで目を覚ました俺の前に見えるのはテンガロンハットというのだろうか?いわゆるカーボーイが被るような帽子をかぶり、茶色の顎髭をたくわえた白人の屈強そうな男だった。


どうやら俺に向かって声をかけ続けていたのはこの男のようだ…。

ようやく意識が覚醒しだした俺はその男に返事をした


「ああ、どうやらまだ生きてるかみたいだ」


「やっと目を覚ましたな。よかったよ。立てるか?」

とその男は手を俺に差し出してきた。


そこで気づいたが俺はどうやら地面に寝転んでいたらしい。

「ありがとう」

とその男の手を借り地面から立ち上がる。

不思議なことに体のどこにも痛みを感じなかった。

どういうことだ?さっきまで俺は死の間際にいたはずだが?


また男が話しかける

「無事みたいでよかったよ、こんな所で寝てたら夜には野犬に食われちまっただろう」


野犬だと?

一体ここはどこだ?


俺は当たりを見渡した。

そこには見渡すかぎり荒野が広がっていた。


どいうことだ?


そしてまた男を、今度はよくよく観察して見る。

テンガロンハット(?)を被った白人の男

白のシャツに革のベスト

腰にはガンベルトが巻かれ、拳銃を所持している。


なんだこれじゃあまるで西部劇じゃないか…?


いまいち事態を飲み込めずに困惑する俺に、また男が話しかけてきた。


「オイ、大丈夫か?」


「ああ、すまない。少しぼーっとしていた。」


そしてある疑問を解消するために俺は質問をした。

「ところで今は西暦何年だ?」


「なんだ?それは?」


なんだと?西暦という言葉が通じていない?


しばらく男と話をつづけるとあることがわかった。

ここは俺のもといた世界線とは別の世界線のパラレルワールドのようなものなのだろう。

俺の知っている世界の歴史と、彼の話す歴史には大きな食い違いがあった。

つまりここはアメリカの開拓時代頃に良く似た全く別の世界であるということだ。



なぜこんなことになったのかは全く理解できないが、とにかくこれは夢を見てるわけでも、死後の世界でもなさそうだ。


やっとこの世界から解放されたと思っていた俺にとってはこの生き返り(?)は決して喜ばしいものでは無い。


「オイ、ところでアンタどこから来たんだ?このへんじゃ見ない顔だ」


そう男に質問されたところで、自分達が英語で会話していたことに気がついた。

このパラレルワールドでも英語が使われているようだ。


世界中が仕事場であった俺にとって英語は母国語の日本語よりも使う機会が多く、英語で喋ることには特段問題は無いのだが、はたして俺の今この肉体は生前の俺の肉体なのだろうか?


自分で自分の顔見ることはできないので、とりあえず自分の腕を見てみることにした。

色や形など、今までの俺のものようだ。どうやら俺は俺の肉体のままこのパラレルワールドにやってきてしまったようだ。


自分の腕を確認した時に気づいたが、俺はシャツにパンツにブーツと目の前の男と同じような格好をしていた。

違いは、革のベストと帽子は俺は身に付けていないというところだ。


だいたいの状況整理がついてきた。そして俺は

どうした?という顔で質問の解答まだかまだかと待っている、男に答えた。


「ああ、すまない。どこから来たかは覚えていないんだ。少し記憶喪失を起こしているらしい」


「なんだと?そりゃ大変だな。とりあえず俺の町に来い。とりあえず今夜の宿は用意してやるよ」


なんとも親切な男だ。

道で寝転んでいた俺に声をかけ、記憶喪失だと言えば宿の用意までしてくれるとは。

とにかに右も左もわからない俺はこの男の厚意に甘えることにした。






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