第34話 街で買い物をしよう 後編

俺達は市庁舎に戻ってきた。


受付に市長から招待を承けている旨を伝えると応接室に通された。




市長は、直ぐに応接室に来た。

「ケミン様、ようこそ御出下さいました。実は御相談がございます。森林会議の時にお渡しした。税収なのですが、ほんの一部しか渡しておりません。まだかなりお渡しせねばならないのですが」


「まだあるの?」

「計算上では、あと123万金貨程残っております。」


「そんなに使いきれないよ!それに今後も増えていくんだろ?それなら俺が寝ていた時の税収は王国に引き取ってもらってよ」


「分かりました。国王様と相談させて頂きます。其れと税収ですが、年度ごとに変わりますが、大体10万金貨程がケミン様の収入になります。」


「毎年10万金貨・・・あ、そうだ!王国で結婚式を準備してくれるらしいからその費用に使ってもらうように言ってください、それで納得してもらおう」


「分かりました。それで今後の税収のお渡しする時期と場所なのですが、毎年8月に集計し、お渡しする事になります。付きましては8月の一月だけジェンナーに滞在して頂けると有りがたいのですが、如何でしょう?」


俺は、嫁達を見渡す。反対意見はなさそうなので了承する事にした。

「8月のみジェンナーに滞在します。土地と家を購入したいので、場所を見繕って下さい」


「庁舎の隣に空地がありますのでそちらに建てて頂けると宜しいかと思います」

あ!此って最初から準備されてたんだな!


なんか嵌められた気がするな・・・


「分かりました、土地と家の購入費用はいくらになりますか?」


「勿論無料で・・・」

「「「「「無料は駄目!!」」」」」


全員でシンクロ!家族の団結力、スゲー!

市長は吃驚したようだ


「分かりました、計算させて見積書を出します」

「市長、聞きたいのですが、お金を預ける場所は、有りませんか?」


「商業組合なら有りますね、組合に登録するとカードが発行されて入出金出来るようになります」


「この後、登録しに行きたいのですが」

「分かりました連絡しておきます。本日はお越し頂き有難う御座いました」

そう言うと市長は退室していった。




俺達は商業組合に入ると直ぐに受付嬢が対応してカードを作って貰った。俺は15万金貨程預ける。箱ごと渡すと枚数計測器コインカウンターに金貨を入れて枚数を数えていた。


昔のパチンコ屋にコインカウンターが有ったなぁ・・・懐かしい!




市庁舎を出る頃に日は傾いていた。

市庁舎の隣の空地を確認すると・・・唖然とする程の広さの空地だった。開いた口が塞がらないってこの事だ。


「キュリアさん此の空地っていくらするかな?」

「この辺の地価は高いから1万5千から2万の間くらいじゃない?」


「金貨が減って嬉しい!てかさこんな広い土地要らないよね?」

「アパートでも建てて経営すれば?」


「成程、赤字経営して金貨減らしさせるか・・・」

「何で赤字経営なのよ!普通に経営すれば良いじゃない!」


「毎年10万金貨の収入だって使いきれないのにこれ以上増やしてどうするんだよ赤字経営で良いの!」

「ケミン君は欲がないなぁ」


「貰える金額が多過ぎなんだよ。食べて暮らすだけなら年間金貨10枚もあればお釣りが来るのに10万とかどうやって消化するの?赤字経営でもしないと・・・」


「まあまあ落ち着いて、そろそろ戻ろうよ」

ベルが、俺を宥める、そしてホテルに向かう事にした。






ホテルに付くと受付でお客様が、来ていると告げられた。ラウンジに行くとウィズドとリーゼが来ていた。

「ケミン様ー」


トテトテと走ってぱふんと抱きつくリーゼ、俺は頭を撫でてやる。

「ケミン様が、此方にお越しと聞き、会いに参りました」


「ウィズド久しぶりだね、元気そうで何よりだよ、リーゼは相変わらず甘えん坊だね」


リーゼは上目づかいにずっと俺を見ている。此れって抱っこしろって事か?仕方ないからお姫様抱っこした。リーゼは、ケミン様と言いながら顔を摺り寄せる。


 「ケミン様、ヘディは役に立っておりますかな?」

ウィズドは、ほほえましそうに此方を見ながら言った。


「かなり役に立ってるよ。街に来ても取囲まれなくなったし、つやつやの毛並みは気持ちいし」


 「其れは良かったです。ヘディ、良くやってるようだな、これからもしっかりケミン様をお守りするのだぞ」


 「はい旦那様、命に代えても・・・」

死ななくて良いから!物騒だな!


 「ヘディ、旦那様はもうケミン様だ。私ではないぞ」

ウィズドはにやにやしながら言う。ヘディは、恥ずかしそうに顔を赤らめて・・・小さな声で「ハイ」と答えていた。


 「ラーニャもしっかりケミン様をお守りするにゃ!」

俺に抱っこされながら言うのか!ラーニャの方がよっぽどしっかりしてるぞ!


 「ん!ケミン様、守るにゃ」

 「さて、リーゼ私達は帰ろう。あまり長居するとケミン様がお休みなれないからな」


リーゼを降ろすと「また来るにゃ!」と言いながら二人は帰っていった。




部屋に入ると大きなリビングが有った。その隣には食堂も完備、豪華な装飾に高そうな絵画も飾ってある。寝室も3部屋有るし、お風呂も有る。スイートルームって聞いてたけど凄いなぁ、それに専属のホテリエを数名って言ってたのに10人も居るし、此れだけ居たらヒュパさんとメリトさんは、ゆっくりして貰えそうだな。


「ヒュパさんメリトさん、今日のお仕事はお仕舞でいいよ。偶には皆でゆっくり過ごそうよ。今日は此れから二人は俺の奥さんだよ」

 「「しかし・・・」」


俯きながら言い淀んでいる。恥ずかしいのか嬉しいのか、顔もほんのり赤い。

「さあさあ!服を着替えて俺の奥さんになってきて!」


「「ハイ着替えてきます」」

二人はクローゼットルームに入って行った。


 「ケミン、良い所あるじゃない。ちょっと妬けるけど!」

キュリアにツンツン突かれながら言われたよ。脇が痛いよ!


実は、今日の目的の一つが二人を休ませる事なんだよね。何時もメイドとして働いて貰ってるから出掛けた時くらい休んで欲しかったのだ。


二人がメイド服から着替えてリビングに出てきた。

何時ものエルフの服だが、ヒュパさんも女性らしいウエストに絞りの入った服を着ていた。ヒュパさんは左肩に大きなリボン、メリトさんは右肩に大きなリボンが付いてる。姉妹でお揃いになったな。


二人が出てきたところでお風呂に行くことにした。

そろそろ夕焼けで日が沈む頃であろう。露天風呂で、夕焼けを見ながらゆっくりする事になった。


俺はラヴォージェと一緒に男風呂にはいる。


「ラヴォージェ見て、陽が沈む」


マリ川の水面に落陽の光がキラキラと輝く、その幻想的な光は遠くに見えるキュリア湖にも赤い光を映している、ゆっくりと水平線に陽が沈みゆく、黄昏空には星が瞬き、夜の帳が降り始めている。


 「キュリア様もお綺麗でしたな」

「夕日が沈む処かい?やっぱりこういう所で見ると一味違う感じだよね」


「そう言えば、ラヴォージェとお風呂に入るの初めてだね!ラヴォージェも今日はゆっくり休んでね」

 「ケミン様、有難う御座います」


「全員で夕食の席に着くのも初めてだよね!今日はラヴォージェも一緒に食べるんだよ」

 「アハハ、解りました。今日だけは、執事ではなく精霊に戻りましょうか」


「うんうん!そうしよう!てか執事の時も精霊だろー!」

 「確かにそうですな、此れは一本取られましたな、ハハハハ」


俺達が、風呂から上がってくると食堂には夕食の準備がされていた。女性陣もお風呂から出てきて皆席に着いている。宮廷のフルコース料理になるのかな?食前酒は赤ワインであろうかオードブルと共に用意されている。


「それでは皆さん、初めての全員揃った夕食に乾杯!」「「「「カンパーイ!」」」」


俺がワインを一口飲むと皆続いて飲み始めた。ヒュパさんもメリトさんもラヴォージェも皆楽しそうに食べてる。


初めての全員揃った食事は、本当に美味しかった。




その後は、皆リビングで少し歓談した後、ゆっくり休んだのであった。




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