4. ルンフォも酔えば赤くなる

 グロッソにある酒場〈月と鰯亭〉。

 アンチョビを使った料理で有名なこの店で、ジルベルトとタイズとミカリの3人はテーブルを囲んでいた。3人分のエールビールが運ばれとりあえず乾杯をする。ミカリはエールを数口飲むと早くも顔が紅潮し始めていた。


ミカリ(GM):「そ、それで!今回のお仕事はルーニャ様からの依頼なんですよね!」


タイズ:「そうですが……ミカリ様はルーニャ様とご面識があるのでしょうか?」


ミカリ(GM):「いえ。遠くからお見かけしたことはありますが、直接お会いしたことはないです。でも博士の話の中でよく聞かされていて……」

ミカリ(GM):「その、ルーニャ様はどういうお方なのでしょうか!?」


 ジルベルトとタイズは「おや?」と視線を交わす。ミカリはまたひと口エールを飲み、もう一段階赤くなる。お酒のせいか彼女は少し大胆になっているようだ。


ジルベルト:「ルーニャ卿は、そうだな。世間では冷徹だとか辣腕だとか言われているが、実際に会ってみるとなかなかどうして上品で丁寧な方だったぞ」


タイズ:「はい。お仕事に真面目に取り組んでおられる美しい女性でございました」


GM:それを聞いたミカリは「はぁああ!」と感極まった息を吐きます。推しの情報が供給されたときのオタクの反応そのものです


タイズ:(笑)

ジルベルト:そっち!?博士とルーニャの仲に嫉妬してるんじゃないんだ?


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 地元の魚を使った料理が次々と運ばれてきた。海そのものに縁が無かったタイズは初めて食べる料理に(抑揚のない)驚きの声を上げる。キングスフォール歴が長いジルベルトからしてもこの〈月と鰯亭〉の料理には目を見張るものがあった。


 ミカリは食事をしながらもルーニャ卿がどのような人物だったか質問し続けた。

--


タイズ:「ところで、ルーニャ様がミカリ様にお会いしたいとおっしゃっていましたよ」


ミカリ(GM):「へ!?そ、そそそそれ本当ですか?わーどうしよ!恐れ多い!!」

ミカリ(GM):気分を落ち着かせるためにちびちび飲んでいたエールをグイッと呷ります


タイズ:逆効果では


ジルベルト:「ティダン様に誓っていまのタイズの発言は本当だ。用向きはわからないが、ミカリ殿に会いたいと言っていたぞ」


ミカリ(GM):「心の準備が!どうしよう、まずは博士に相談しなきゃ」


タイズ:あ、やばい

タイズ:「いえ、マグナル博士はとてもお忙しい方。そのようなことで気を煩わせることもないかと」


ジルベルト:「そうだな。会うだけであればひとりで行けば良いであろう」


タイズ:「それより、どうしてミカリ様はマグナル博士にお仕えしているのですか?」と話を逸らします


GM:ミカリはさっきエールを呷ったせいでかなり赤くなってきています


ジルベルト:ルンフォも酔えば赤くなるんだな


ミカリ(GM):「なんでって……そりゃマグナル博士は凄い人だから……」

ミカリ(GM):「私が少しでも博士の役に立てるのなら、私はそれで満足なんです」


GM:ミカリは何か言いたげではありますが、酔いながらも主人の悪口はいいません

ジルベルト:ルンフォの鏡だな


タイズ:「マグナル様とルーニャ様はいつからのお付き合いなのですか?」


GM:あー、それを聞いちゃいましたね。ではミカリは「お二人は大鉄道学舎でのご学友で、しかもルームメイトだったと聞いています」と言い、マグナルとルーニャ卿の学生時代について教えてくれます


===

【マグナルとルーニャの学生時代】

 マグナルとルーニャは共に大鉄道学舎に10年間通った学友でありルームメイトだった。しかし二人は優秀であること以外の全てが真逆。あまりにもだらしないルームメイトのせいでルーニャの几帳面はますます加速したと言っていい。


 二人とも研究者としても一流であったが、やはりそのアプローチは真逆であった。

 理論と伝統を重んじるルーニャは図書館に籠り多くの書を読んだ。一方経験と自由を大切にしたマグナルは、何度もフィールドワークと称してルーニャを遺跡に連れ出し、その度に魔物に遭遇しては二人で死にかけている。

===


ミカリ(GM):「マグナル博士が首席、ルーニャ様が次席で卒業したと聞いています」


ジルベルト:「なんというか……ルーニャ卿はよく10年間も耐えたな」


GM:ちなみにルーニャの卒業研究のタイトルは『既存鉄道の輸送効率を1.1%向上させるアルゴリズム』で、マグナルは『古代火炎放射ドリル列車と現代におけるその活用』です


タイズ:これはひどい

ジルベルト:これだけ迷惑をかけられて首席の座を奪われたなら博士を嫌うのもやむなしだな


ジルベルト:「ずいぶんと博士からルーニャ卿の話を聞かされているようだが、ミカリ殿はルーニャ卿をどのように思っているのだ?」


GM:その質問への回答はすぐには返ってきません。ミカリはしばらく俯いていますが、やがて決心したようにエールを全て飲み干してジョッキをバン!と机に置きます


ミカリ(GM):「私は!!ルーニャ様をお慕いしております!!!」

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